Books and Cartoon

洋書とカートゥーン、あといろいろ。

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01月29日
00:19

Goblin Secrets
author Wiliam Alexander 読了

人々が、他者を演じることが禁じられた街、ゾンベイ。孤児ロゥニーは、魔女グラバの元で兄ローワンや他の同じ境遇の子供たちとともに使い走りとして最低の暮らしをしていたが、ある時から兄ローワンは行方知れずになってしまっていた。ロゥニーはグラバの使いとして街へ出たある日、ふとしたはずみで、ゴブリンたちの仮面劇に加わってしまう。ゾンベイの街では他所から来る旅のゴブリンたちの一座のみが演劇を許されていたのだった。これをきっかけにロゥニーはグラバに背き、グラバの子供たちと使い魔である鳩たちに追われる身になるが、彼が参加したゴブリンの一座が彼をかくまってくれるのだった。ロゥニーはゴブリンたちと共に兄ローワンを探す決意をするのだったが・・・。

巨大な川で南北に分かれたゾンベイの街。雑多な人々が住む騒然とした南は魔女グラバの領分。市長はじめ権力者や上流階級が住む北。南の住人は北へは入れず、機械の体の市警が常に南を警邏している。機械技術と魔法の入り混じった奇怪な街のイメージがいい。しかしまあ、あちらの人は次から次へと異様な世界(ほめてます)をつくりだすものだと、ほとほと感心します。魔女グラバの元から離れ、その追跡をかわしながらこれまで知らなかった街の秘密に迫っていくロゥニー。しかし、しかしだ、これまたブック1なんだな。世界観はめちゃいいんだけど、やっぱり第1巻だけじゃ消化不良だ。続巻を待つ。

12月11日
06:19

すっかりサボりまくっていた洋書読書メモ

とりあえず今読んでいる本で今年は終わりそうなので、その前にこの1年あまりで読んだ本の一覧でもメモっておかないと。

The Golden Acorn
author Cathline Cooper

Ramona Quinby, Age 8
Ramona for ever
Ramona's world
author Beverly Cleary

Wings & Co. Operation Bunny
author Sally Gardner

Harriet the Spy
author Louise Fitzhugh

The Peculiar
author Stefan Bachmann

Jane Blond #5 Golden Spy
author Jill Marshall

Agatha, Girl of mystery #1 The Curse of the pharaoh
author Steve Stevenson

Dear Dumb Diary #9 That's what freiends ain't for
Dear Dumb Diary #10 The worst things in life are also free
author Jim Benton

The Clitter Club #1 Amy and the missing puppy
author Callie Barkley

Amelia Bedellia Means Business
author Herman Parish

Harriet spies again
author Louis Fitzhugh, Helen Ericson

Sew Zoey #1 Ready to wear
author Chloe Taylor

Ameria Bedellia Unleashed
author Herman Parish


とまあ、そんな感じです。
今年は部屋の整理など延々と続けてしまったりいろいろあったので(去年の11月からかぞえて)月1くらいかなと思ってたけどもうすこし読んでいたな。
以下感想は順不同。

「The Peculiar」は文句なし面白かった。イギリスらしいダークファンタジー。妖精と人間の混血児、バーソロミューと、その妹。緑の美しい羽に包まれて現れ消える不思議な美女。陰謀を企む英国議会の議員など、キャラクターもいい。特に最初いい家柄と見かけばっかりいいだけの議員ジェリビィが、事件が進むにつれ持ち前の正義感に我知らず目覚めていき、陰謀を阻止しようとロンドンを駆けずり回る羽目になる。舞台は19世紀末だが、かつて近世の頃、突然妖精界との通路が開き、あふれ出した異世界の住人たちとの対妖精戦争を経験したのち、生き残りの妖精たちがいまでもイギリスの住人として暮らしているという魔法と機械技術の入り混じった異歴史のイギリスという異様な世界観もいい。いわゆるスチーム・パンク・ファンタジーですね。上のリストの中では一番ですね。でも終わってないんだよ~、またか、またbook#1だったのか~、みたいな。続きが出たらもちろん読むけどね。
ちなみに今読んでいる「Goblin Secret」も、スチーム・パンク・ファンタジーだよ。まじ流行ってるなあ。
「Jane Blonde Goleden Spy」は、洋書を読み始めのころに表紙買いしたもの。シリーズの第5巻だったので、やっと順番が回ってきて読めました。宿敵「太陽王」とのとうとう地球を飛び出しての決戦。ここまでくると、次どうなっちゃうのか、楽しみというより心配だ。
「Ameria Bedellia」 も面白かった。なんでも言葉通りの受け取る女の子Ameria Bedellia が主人公。日本で言えば、「へそが茶を沸かす」といわれればやかんを用意するような感じですよ。英語の一般的な言い回しを教えてくれるシリーズでかなり昔からあるみたいだけど読んだのは最新シリーズ。だから言い回しも現代アメリカのもの。
「Dear Dumb Diary」シリーズ はいつもの通りだけど、なんと今年映画になってたよ。びっくり。やっぱり人気あるんだなあ。日本には絶対に来ないだろうけどね。
「Harriet the spy」は1964年の小説だけど、かなり面白かった。読んだのは200年代にでた2話分の合本版。とにかく世界中のことが知りたいという欲求を満たすために、手当たり次第に他人をスパイ(学校の同級生のことはもちろん事実上無断で他人の家を覗き見して、その行動をノートに記録)して回るおかしな女の子のお話。ちょっと小太りでメガネという、およそ主人公らしくないところがまたいい。でもコメディじゃないんですよ。かなりシビアで真面目なおはなしです。これも映画になってるんですね。2度。観ました。2010年版の方。ディズニーチャンネルでやってたので。映画は設定を現代に置き換えているので雰囲気は全然違ってましたけどね。コメディになってました。さすがに舞台を現代にするとあの原作のままってわけにはいかない。
「Harriet spies again」は半世紀近く経った2002年になって別の作家(Helen Ericson)によって書かれた続編というめずらしい例。これがエドガー賞の児童書部門を受賞しているそうで、それも珍しい例なんではなかろうか。やっぱり時代が違うので雰囲気もちょっと違うんですが、キャラクターはいっしょ。これもなかなかおもしろかったですよ。
「Agatha girl of mystery」は、登場人物の名前がみんなミステリーファンにはおなじみのものばかりという、挿絵入りの少年少女向け紀行冒険謎解き物。途中でドイツ軍の使っていたルガー(拳銃)のリボルバーがでてくる記述があって、リボルバーなんてマニア過ぎる(モデル26だろ)とか思ったんだけど、挿絵にはみんな知ってるP-08が描いてあって、これはどっちが間違えたのかと悩んでしまった。
「Sow Zoey」は、ファッション物。デザインと裁縫が得意な女の子のおはなし。そっち関係のいろんな単語が出てくるに違いないと思って読んでみた。とはいえさすがに子供向けなので、特に問題なく読めました。おはなしの展開はもうオトナには読めてしまうものだったけど、それはそれでちゃんと出来ていたので、よかったですよ。ゾーイの周りの人がちょっといい人ばっかり過ぎかな?みたいなところはあったけど、子供向けだからまあいいでしょう。第2巻の予告を読むと2巻目の方が面白そうだったよ。
「The Golden Acorn」もけっこう面白かった。ブリテン島ローマ征服時代の、ブーディカ女王の反乱事件もからんでくるイギリスらしいケルト系ファンタジー。でもこれもbook#1みたいなので、続きがでたらどうしようかなあ。やっぱり読むか。
「Ramona」シリーズはこれでおしまい。これまで通りおもしろかった。そういえばラモーナの舞台も、「怪奇ゾーン グラビティフォールズ」や「グリム」とおなじくオレゴン州なんだな。
「Wings & co. Operation Bunny」も挿絵で買ってしまった。キャラクターや設定など結構面白いんだけど、プロットにやや難あり、なんじゃないかな。もうすこし、できたんじゃないかと思うな。
「Clitter club」は動物好きな女の子とその友達のお話。特別おもしろいということもないけど、つまらないわけでもないという、まあ、ふつうのおはなしでした。
そんなわけで、来年はもうちょっとたくさん読もう。そして来年中には目標の500万語まで到達したいものであります。

10月18日
10:32

Schooling Around Treasure Fever!
author Andy Griffith

Northwest Southeast Central 小学校にやってきた5年生の代理代理教師、Mr,Brainfright 。教科通りの勉強はそっちのけのおかしな授業にクラスのみんなは大騒ぎ。同じ日、あらぬ疑いをかけられ校長室に呼び出された Henry は、 Greenbeard 校長から、Northeast Southwest Central 小学校に宝物が埋まっていることを知らされる。校長先生がこの学校の生徒だったとき仲間と埋めた海賊(ごっこ)の宝物。しかしある日宝は何者かによって盗まれ忽然と消えたのであった。そして遺されたのは盗んだ者の残した謎のメッセージ。そのメッセージをもとに、Henry は仲間たちと埋もれた宝を探すことにしたのだが、仲間だけの秘密の誓いもどこへやら、あっという間に宝のことが知れ渡り、学校中で宝探しの大騒ぎになってしまう。相変わらず変な授業を続ける Mr.Brainfright や、隣のクラスの Mrs.Cross も巻き込んで、はたして Henry は失われた宝物を見つけることができるのか?

何十年も前に消えた当時の子供たちの宝物、ということで、いい大人であるわたしなどにはすぐにストーリの流れやオチがばれてしまうようなお話ではあるんですが、いやしかし、十分面白かった。物語とは単にストーリーやプロットだけでなく、語り方であり、キャラクターであり、どんな視点から見ることができるのか、というものであることを知ることが出来る作品のひとつ。
Mr.Brainfright の出した問題のどうでもいいことにいちいち疑問をあびせる子供たちと Mr,Brainfright の台詞の応酬も楽しい。キャラクターの行動や、そのキャラクターのいいところがそのまま悪いところにひっくり返ったりと、ある意味ステレオタイプなキャラクターをそろえてあるんですが、それでもそれぞれのキャラクター描写が的を射ていて面白い。ストーリーのオチだけでなく、どんな風に終わりを締めくくるのか、という部分も良く出来ている。そのままカートゥーンにして放送されてもいいくらい。読んでいる間、ずっと「ランディ・カニングハム」のキャラのイメージ(ランディは高校生という設定で、キャラクターの性格設定なども違います)が浮かんでしょうがなかった。
日本では漫画が果たしている役割を、欧米ではこういう児童文学が果たしているというのが良くわかる、よくできたコメディ作品でした。

ついでに、洋書は表紙買いもすることにしているというのを前に書きましたが、この作品も Amazon をうろうろしていて見つけたまったく知らない作家の本なのに、表紙のサムネイルで主人公 Henry の横にいる Jenny (という作品に登場するキャラクターとおもわれる) の絵で買うことに決めたという、わりといい加減な買いかたをしたんですが、中身には十分満足しましたよ。

10月15日
01:15

Enchanted Glass
author Diana Wynne Jones 読了

祖父である魔法使い Jocelyne Brandon が亡くなって、その館と彼の field-of-care を受け継いだ Andrew Brandon Hope は、勤めていた大学を辞め、これを機会に暖めていた本の執筆をはじめようと、まだ幼いころの一時期祖父と暮らしていた Melstone House にやってくる。しかし、彼が受け継いだのはただの土地と館だけではなかった。
一方、両親はすでになく、祖母と暮らしていた少年 Aidan は、祖母が亡くなった後、何者かに追われていることに気がつき、祖母のつてを頼って Melstone House へやってくる。Andrew は、Aidan を保護することに。
Andrew と Aidan は、firld-of-care の境界線を見極めようと探索して回るが、森のなかで Mr. Brown なる人物が勝手に鉄条網を張り field-of-care の一部を占有していた。怒った Andrew は Mr.Brown の館に乗り込むと、逆に Mr.Brown は Melstone の土地の所有と、メルストーン村の村人の立ち退きを要求してくる。
そして Aidan を命を狙う追っ手が、Melstone にやってくる。なぜ彼は狙われるのか。Mr.Brown の目的と正体は。魔法と謎が絡み合って事態はとんでもない方向へと進んでいく。

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの小説は、洋書多読をはじめるまえから翻訳で結構読んでいたので、本屋とアマゾンで売っている未読のものになかなか行き当たらなかったんですが、前のEarwig and the Witch 以来やっと発見。今度は幼年むけではなく、クレストマンシー・シリーズのような児童向け。
家具の配置にうるさく、Andrew が勝手に動かした家具をすぐまたもとの位置にもどしてしまう、食事というと同じものしか作らない通いのまかない兼家政婦のMrs.Stock に、館の菜園で、大量多種の野菜を作りまくる通いの農夫 Mr.Stock。メルストーンの村は大半の人が Stock 姓。Mr.Stock が館に運び込む大量の野菜を一晩のうちに平らげてしまう、謎の存在。Mr.Stock の兄弟で元ジョッキーの Tarquin の、有能で美しい娘 Stashe は Andrew の秘書として館にやってくる。Mr.Stock の姉妹 Trixie の息子、Shaun は、働き口をもとめて Melstone House にやってくるが、大きな体で一見知恵遅れのように見えてなんでも修理する天才。いつものダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品同様、一筋縄でいかないキャラクターがぞろぞろ。魔法の働き方も面白い。イギリスの妖精譚の世界観を下敷きに、ちりばれられた笑いに一見不可解なシリアスな状況、あちこちに張られた伏線と謎がクライマックスへと一気になだれ込む、DW・ジョーンズ節はいつもの様に絶好調。現代イギリスにも十分魔法が生きていると感じます。面白かった。

10月11日
05:01

Judy Moody Girl Detective
author Megan McDonald

「少女探偵ナンシー・ドリュー」の面白さにはまってしまった Judy。すっかりその気で、自ら探偵となって事件を解決したくてしょうがない。とはいえ、普通の町の普通の女の子のもとに、物語のように事件がやってこようはずもない。事件を求めるあまり学校でさっそく失敗をやらかしてしまう Judy。
そんなおり、学校に警察犬がやってきた。Frank 巡査とその相棒、K9のMr.Chips 。学校のみんなの前で自慢の鼻を披露。すっかり人気者になるのだが、なんとある日、Frank 巡査の家から、その Mr.Chips が、行方不明に。
これは一大事、おそらくは何らかの秘密組織(犬を誘拐して悪いことを企む組織)が関与しているに違いないと Mr.Chips 探索に一役買って出る Judy とその仲間たちだが、彼らの前でつぎつぎと不可思議な盗難事件(チップ入りクッキーやサンドイッチの)が発生するのであった。はたして、Mr.Chips はどこに?謎の(チップ入りクッキーやサンドイッチ)泥棒の正体は?犯人を突き止めようと決死の覚悟で罠をはる Judy たち。その結末やいかに。

いつの間にか新刊がでていた Judy Moody 。その第9巻。
ひさしぶりに読みましたが、相変わらずのおさわがせっぷりで一安心。でも今回はミステリーですよ。でも大騒ぎしているのはジュディたちだけ?ミスター・チップスの担当のフランク巡査は相棒の失踪にもわりと冷静。
それにしても、「ナンシー・ドリュー」は人気があるんだなあ。ジュディがはまっているのはオリジナルシリーズ。現代版は1冊だけ読んだことがあるけど、オリジナル版にも興味でてきた。そのうち読んでみたいですね。

10月10日
09:19

This Book Is Not Good For You
author Pseudonymous bosch 読了

錬金術の秘法によって世界支配を企む謎の秘密結社ミッドナイト・サンから、人造人間ホムンクルス製造の秘術を守ったカサンドラ(仮名)とマックス・アーネスト(仮名)。しかし、ミッドナイト・サンの次なる企みが進行中だった。招待されたレストランで母メルを誘拐されたキャス(カサンドラ)は、母と引き換えに、古代アステカ文明の遺した奇跡の道具チューニング・フォークを要求される。あらゆる「味」を創造できるチューニング・フォークはどこにあるのか。ミッドナイト・サンはそれを使って何をしようとしているのか。キャスの母は無事なのか。テレス・ソサエティの仲間、ヨー・ヨージを加えて、キャスはミッドナイト・サンの秘密工場から母の奪還を試みるのだが・・・。

シークレット・シリーズの第3巻。今度のテーマはチョコレート。チョコレートは美味しいよね。でもそれが世界征服を狙うミッドナイト・サン産のチョコだったらどうする?自分の出生が謎に包まれていることを知ったキャスと母メルの間がこじれたり、あやしさ満点の盲目のシェフが登場したり、世界を股にかけた大規模な活動をしているミッドナイト・サンの活動の一端があきらかになったり、キャスの学校の校長先生が変な人だったり、ヨー・ヨージが変な日本語をしゃべったりと盛りだくさんのエピソードでした。でも第4巻に続くので、キャスの冒険はまだまだ終わらないのだった。

08月26日
09:54

The Girl Who Could Fly
author Victoria Forester 読了

Piper は空が飛べる。田舎町で農場を営む McCloud 夫婦、信心深く働き者の母に無口な父。二人の間に生まれた女の子 Piper は生まれたときから本能的に空を飛ぶ力を持っていた。普通の人にはない異質なその力を恐れた両親は町の学校にも通わせず、人前で決して飛んではいけないと Piper に言い聞かせていた。しかし、町の祭りの日、同年代の子供たちと初めて親しく接し、彼らに混じって野球の試合で外野を守った Piper は、フライボールをとるために空を飛んでしまう。騒然となる町の人々。ことの成り行きに不安を隠せない両親と Piper の前に、政府が派遣したチームと Dr.Hellion が現れる。Piper のような特殊な能力を持った子供たちを教育する施設I.N.S.A.N.E.に Piper を収容するというのだ。今のままでは町で暮らせないと悟った両親と別れ、Piper はI.N.S.A.N.E.へ。
遠く氷の大地の地下深くに作られたこの施設には Piper と同様に、普通の人が持たない特殊な能力、念力、超天才、超人的怪力、放電、などの特殊な力を持つ子供たちが収容されていた。そこで、Piper は、能力を制御し、普通の人間と同じような暮らしを送れるように厳しく教育されるのだった。だが、I.N.S.A.N.E.には Piper の知らない秘密の目的があったのだ。そして、特殊能力を持つ子供たちに、空を飛ぶ力を見せてしまった時から、Piper の運命は大きく動きはじめるのだった。

SFのテーマのひとつ、超人(新人類、あるいはエスパー)テーマの作品。古くは「人間以上」「オッド・ジョン」などで描かれた超人類モノの流れを汲む作品です。つまりいまどきのスーパーパワーをもった超人ヒーローものではない、ということ。生まれながらに持った力は、決して特別なものではなく、それこそがその人そのものではないのか、という主張は超人類テーマでは意外とありそうでなかったのではないか。冒頭から丁寧に書き込まれた日常描写が、空を飛ぶ人とはこの世界にとって何者なのか、を描くための下準備なんですね。特殊な能力ゆえにもっとも近しい社会、家族からもドロップアウトせざるを得なかったI.N.S.A.N.E.の子供たち。しかし常に前向きで、自分を信じる Piper の出現で彼らも変わっていく。
ちょっと前に読んだ日常の中にある超能力という「 Savvy 」よりも超能力者対社会という昔ながらのテーマ色が強いSFらしいSF。子供たちが動き出す中盤、I.N.S.A.N.E.の本当の目的、最後の戦いへとスピードアップしていく後半は面白いですよ。そしてPiperたちの自分であり続けるという戦いはこの物語だけでは終わらない(決して第2巻に続くとかそういう意味ではなく)というエンディングもよかった。それでちゃんとお話はまとまって終わっていますからね。でも、第2巻が出ても全然おかしくないなあ。どうなんだろうか。


以下ちょいネタバレ。
なので今後この本を読む気になった人は読まないように。








人間だけでなく、地球上のあらゆる生物が進化の過程として超能力を身につける可能性を持ち、実際そのようになっている、というのは結構いいアイディアだなと思いますね。ほとんどの新人類テーマでは超能力を持つのは人間の次の進化だという前提に立っているので、この発想はありそうでなかったのではないか。たまに、類人猿や海洋哺乳類がテレパシーなどの超能力をもつというものはありますが、超能力を持つのは地球生物全体がもつ突然変異の可能性だ、というのはあまりお目にかかったことがないと思うなあ。そういう意味でもこの小説は子供向けとはいえ立派なSFなのだった。

07月31日
02:01

Jane Blonde Spylet on Ice
author Jill Marshall

オーストラリアでの事件の後、日常生活がもどった Janey。しかし、Abe Rowanigan との共同事業で、清掃会社の実質経営を任された母の行動が次の心配事に。クイック・デートで、新しい出会いを探そうとしているらしい。 そんな Janey の元に、またまたAbe からメッセージが届く。それはスパイレットたちを集めてのトレーニング・キャンプへの参加要請だった。G-mama、Halo 母子と一緒に SPI の秘密施設へ。そこで世界各地から召集されたスパイレットたちと共に用意されたトレーニングを受ける Janey だったが、思わぬ失敗から、彼女は自分の持つ弱点を知ってしまう。さらに、キャンプ後の南極での任務には選ばれず、これまで何度も世界の危機を救ってきた自負もどこへやら、すっかり自身喪失してしまう。
しかし、最悪の敵、SPI の拘禁から再び逃れた「太陽王」はそんな Janey にはお構いなしに、悪の秘密計画を着々と進行中。スコットランドのSPI基地が占領された事実と、敵がJaney たちSPIのスパイを暗殺のターゲットにしていることを知った Janey は、敵の計画阻止のため任務についている Abe や Al のいる南極へ向かうのだったが・・・。

前半は、周囲を非透過バリアに隠されたSPI秘密基地でのトレーニング。Janey と同様に、SPI のスパイとして任務に就く少年、少女たちと共に、初めて本格的な訓練をうける Janey。考えてみれば、Janey は そもそも Spylet になったのもアクシデンタルな出来事で、その後も、G-mama の指導があったとはいえ行き当たりばったりで敵と戦ってきたんだな。中盤、スパイとしてやっていく自身をうしなって悩む Janey 。しかし、スコットランドで敵の新たな計画の情報を得た彼女は、仲間のために南極へ、と場面転換にメリハリが利いていてわかりやすい展開。これまではわりとあっちいったりこっちいったりまたもどったりとちょこまか動き回る傾向が強かったんですけどね。ともあれ、Janey とSPIのエージェントたちの宿敵「太陽王」のとんでもない悪の計画を阻止するために、またたまスパイ・ガジェットを駆使した戦いが展開するわけです。敵もだんだんやることも見た目もむちゃくちゃになってきていて、このあとどんな戦いが展開することになるのやら。そして今回初登場だったほかのスパイレットたちの再登場はあるのかなど、続きも気になるところではありますね。

06月29日
01:35

The Incorrigible Children of Ashton Place The Mysterious Howling
author Maryrose Wood 読了。

Penelope Lumley は、Swanburne女学院を卒業したばかり。就職先とし紹介された Ashton Place で、館の貴婦人、Lady Constance の面接を受け、govaness(住み込みの女家庭教師)として雇われることに。でも、肝心の子供たちはどこに?お屋敷の庭にある納屋から聞こえる奇妙な吠え声は、広大な敷地を持つ Ashton Place の森で当主の Lord Fredrick が狩りのおりに見つけた子供たちだった。ぼろ布をまとい、乱れ放題の髪に汚れた体。狼のように吠え、人の言葉を知らない3人の兄妹。「見つけた者こそ保護者であれ」の考えで Frederick は、この幼い子供たちの面倒をみることに決めたのだった。そして、Penelope の仕事はこの3人に人としての教育を施すこと。お屋敷の子供部屋に移され、Alexander、Beowulf、 そして Cassiopeia と名づけられた3人を、Penelope は根気良く教えていく。最初こそ人の言葉も知らない野生児だった3人は、高い知性と豊かな感性の持ち主でもあり、Penelope の指導で、英語、読み書き計算、歴史、詩や文学、館での生活習慣を覚えてゆく。ところが、Fredrick と結婚したばかりの若妻、Lady Constance は3人をあまりよく思っていない。もし、自分と Fredrick の間に子供が生まれれば、この3人はどうするのか。3人の後見は当然のこととして平然としている Fredrick の考えが彼女にはわからないのだった。
その年のクリスマス。Lady Constance は、盛大なクリスマス・パーティーを企画。Penelope に、3人の子供たちをパーティーに参加させるようにと言い渡すのだった。まだ時折、森で暮らしていたころのように Penelope には予想も出来ない行動をする3人を、大勢の見知らぬ客が集まるパーティーに出せるものだろうか。とはいえ女主人の言葉に従わないわけには行かない。Penelope は子供たちに準備をさせるのだった。そして、クリスマス。パーティーは多くの客を迎えて開かれたのだったが・・・。

舞台は19世紀の中ほどのイギリス。自身も孤児で、Swanburne女学園で育った Penelope は15歳。一通り立派な教育を受けた女性ですが、愛読書は人気の児童文学、馬 Rainbow の物語。なんていうか、欧米ではレインボーってそんなに馬の名前にぴったりだというイメージなのかなあ。それでも教育者として子供たちに出来る限りの力を尽くす姿が美しい。折につけて思い出す Swanburne女学院の創始者 Agatha Swanburne の金言が面白い。その中のひとつ、「All books are judged by their covers untile they are read すべての本は読まれるまで表紙で判断される」。ええ、おっしゃる通り。この本も表紙で買いました。アレキサンダー、ベーオウルフ、カシオペアという仰々しい子供たちの名前は「ABC順だから」とは Lord Fredrick の言葉。いちおう敵役の Lady Constance 。いちおう、というのは、彼女には彼女の育ってきた環境と常識というものがあって、子供たちがあまりにそれとかけ離れているために理解不能だというのが大きな理由。意地悪なわけではありません。3人の子供たちを理解できないことが不安であり、恐怖につながっているんですね。このあたりがいい感じです。この物語が良識や常識(とある社会で信じられていること)と、 Lady Constance から The Incorrigibles と呼ばれることになった子供たちとPenelope の対比であることから、Lady Constance はその対比の象徴の役目を負っていることになりますね。だから彼女自身もいずれはこの異質なものたちと折り合いをつけていくことになるのかもしれません。それとも、頑固に自分を押し通すかな。

物語は3人と Penelope の成長を軸に、クライマックスのクリスマス・パーティーで急展開。Fredrick の謎めいた行動に Ashton Place の秘密、そして3人の子供たちは誰でなぜ森で暮らしていたのか、という疑問を残して、次巻へ続く。あれ、まただ。またBook2読まなければならない本が増えたよ~。

06月12日
21:10

the Higher Power of Lucky
author Susan Patron 読了


カリフォルニア、モハベ砂漠の古い鉱山跡にある、人口43人のハード・パンの町。10歳になる少女 Lucky は、町外れのトレーラーハウスに、フランスからやってきた彼女の父の最初の妻であり現在の彼女の保護者、Brigitte と住んでいる。町の風鈴博物館で行われる「依存症克服のための12段階」の会 (twelve-step group )の集会を覗き見てから、Lucky は彼女自身の Higher Power を見つけようと決めていた。でもそれがいったいなんなのか、まだ彼女自身にもはっきりとはわからない。
Lucky の父は、フランスで結婚した Brigitte と別れた後、アメリカに戻り、Lucky の母と再婚。二人の間に Lucky が生まれるが、しかし子供が欲しくない父は、Lucky の母とも別れ、その母もある嵐の翌日、事故でなくなってしまったのだった。父の顔も知らない Lucky は砂漠の町でたった一人取り残されてしまうが、父はフランスから Burigitte を呼び寄せ、鞄ひとつでやってきた Brigitte は、言葉もろくにわからないままその町で Lucky と砂漠の町で暮らすことを選んだのだった。
それから数年。Lucky は Brigitte がフランスへ戻ろうとしていることを知る。自分を捨て、Brigitte はフランスでの彼女自身の暮らしを選ぶつもりなのだ。その日から Lucky は、家出を計画する。いつかその兆しが見えたとき、誰にも知られずに行方をくらまそう。そうして、自分が Brigitte や、母の葬式にさえ顔を見せない父や、ハード・パンの人々にとっていったい何者なのかを確かめようと考えるのだった。しかし、その兆しが見えたその日、砂嵐が町を覆い、近所に住む少年 Miles が行方不明になってしまう。Lucky は、砂嵐の中、Miles を探すのだった。

冒頭から、アメリカ中西部の寂れた町と、普通でない境遇の登場人物で、なんだかヴィム・ベンダースが映画にでもしそうな雰囲気のいい感じ。子供拒否の父に、死に別れる母とかなり悲惨な境遇の Lucky 。しかし、もともと寂れたハード・パンの生活しか知らない Lucky は、それをそのまま受け入れているのだが、依存症克服の会で耳にした Higher Power を自分も得たいと考えるようになる。Lucky をとりまく人物像もおもしろいっていうかすこし変なヒトばかり。普段はまともな Brigitte も、哺乳類以外の小動物が大嫌い。縄の結び目に天賦の才を持つ友達。依存症克服の会で自身の体験談を披露する男、などなど。
印象的なシーンはいろいろあるが、Lucky たちがある家で聞くラジオがいい。カリフォルニアの交通情報。人口43人。ほとんど何もない町のラジオから流れるのは、道路を流れる大量の自動車と、事故による渋滞のニュース。それもアメリカ。ここもアメリカ。
前半はヴィム・ベンダースだが、後半は児童向けらしい展開になって一安心。
しかし、一応子供向けなんだよね、この小説。2007年度のニューベリー賞受賞作。すごいな、ニューベリー賞。もっとも大人が選ぶ本なので、子供がどう思うかは子供が読んでみないとわからない。でも児童向けでも十分な読解力を要求する作品が書かれているというのはたいしたものだと思うんだな。

ところで Higher Power というのはアルコール依存症克服のために提唱された、「自分自身を越えたより強い力」という意味の言葉だそうで、今では他の「依存症克服のための12のステップ」の会でも使われるようになっているそうです。今の自分自身ではどうにもならない現状から抜け出すためのより確かな力。the higher power of lucky では、ハード・バンの町でアルコール、過食症、ニコチン(タバコ)などの依存症克服のための集会がひらかれていることになっています。ハード・パンには普段の生活で依存したくなるようなものは何もないからちょうどいいんでしょうね。
はたして、Lucky は彼女の求める Higher Power を手にすることが出来るでしょうか。

05月25日
22:30

A to Z Mysteries The Bald Bandit
author Ron Roy 読了

ハロウィン前日。グリーン・ローン銀行で強盗が発生。ハロウィンの仮装の準備をしていた Dink の家に、探偵を名乗る口ひげの男がやってくる。銀行に雇われて、現場でたまたまビデオを撮影していた赤毛の少年を探しているのだという。ビデオには犯人が写っているのだ。もしその少年を見つけてくれれば探偵は報酬として一人100ドルを約束した。Dink と Josh は、早速 Ruth Rose と一緒に赤毛の少年を探し始めるのだったが、グリーン・ローンの街でそれらしい少年は一向に見つからない。いったい赤毛の少年はどこに?そして強盗犯はどこへ?

大型連休中、紀伊国屋が洋書20%OFFだったので、つい買ってしまいました。AtoZミステリーズの第2巻。みるからに怪しい男の口車にほいほい乗ってしまう Dink と Josh もどうかと思うが、人間お金には弱いものなんだな。それでも、目的達成のための Dink の発想力と、姿を消してしまった赤毛の少年の謎、結局事態を収拾する Ruth Rose の機転は今回も快調。
さすがにこのレベルの本では知らない単語は1個くらいしか出てこないので、安心。それでもやっぱり1個くらいはあるんだな。今回はtrample(ばたばたと足音をたてる、足音を立てて歩く、などの「踏むことで音を立てる足の動作」という動詞)。こういう日常動作動詞が山のようにあるのが英語のいいところというか面倒なところ。

05月25日
05:28

Heck Where the bad kids go
author Dale E. Basye 読了

Milton は、品行方正、勉強熱心な目立たない少年。盗癖のある姉の Marlo の起こした騒動に巻き込まれ、ショッピングモールのマシュマロ像の爆発で二人とも死んでしまう。二人が意識を取り戻した場所は Heck 。素行不良の子供たちが18歳になるまですごすあの世の矯正施設(もっとも Heck には普通の時間の流れは存在しないのだが)。本来良い子の Milton は、最後の時、Marlo に盗んだものを押し付けられて、姉ともども、Heck に送り込まれたのだった。得体の知れない悪魔たちが管理する Heck。到着早々、脱走を試みる Marlo だが、あっさりつかまってしまう。納得のいかない Milton は、姉の巻き添えであることを主張するが、Heck の管理責任者、悪魔のBea "Elsa" Bubb は聞く耳を持たない。Heck に送り込まれたほかの子供たちと共に男女別に更生プログラムを受けることになる2人だったが、生まれ着いての不良少女 Marlo は、いきがかり上いい子ちゃん扱いに。根っからのまじめ人間の Milton は、問題児扱いされてしまう。Marlo から再び脱走計画の連絡を受けた Milton は2人から少し遅れてHeck にやってきた少年 Virgle と共に、3人で脱走を試みるのだが・・・。

不良娘の姉とまじめ人間の弟が送り込まれた Heck 。悪魔や神々が管理し、歴史上の「ワル」い人間(の霊?)が更生プログラムの教師を務める。人の言うことをおとなしく聞く気などさらさらない身勝手な Marlo と、まじめ一筋の人生を短いながら送ってきて、こんなところに入れられる覚えはさらさらない Milton の Fauster 姉弟は、食べることに自制心のない少年 Virgle といっしょに悪魔たちを出し抜いて Heck からの脱走を図るのだった。設定はかなりおかしいが、割とまともな学園コメディでもある。なぜか、Milton と一緒に Heck にきてしまったペットのフェレット、Lucky も脱出の鍵を握るのだった。
わりとすらすら読める部分と意外と読みづらい部分があったのだけれど、文章に修飾が多くて、舞台の状況が掴みづらかったHeckのせいかもしれない。お話は面白く読めました。脱出劇の最後には感動的(?)な場面が待っているのだけれど、そのあとがまたよかったりして。しかし、問題はこの小説も第1巻だということ。続巻を読まなきゃならない本がまたひとつ増えてしまった。困るなあ。

04月10日
04:39

Monster High
author Lisi Harrison 読了

Frankie は、閃く電光のなかで目を覚ました。彼女は科学者である父 Victor と母 Viveka が生み出した娘、といっても15歳の少女として人工的に作り出された人造人間なのだった。
Melody は、天性のその美しい歌声とは裏腹に醜く突き出した鍵鼻を持つ少女。しかし彼女を襲った呼吸困難によって歌えなくなってしまう。鼻の整形手術を受け、家族と共にオレゴンのセーレムに引っ越してきたのだった。

人造人間 Frankie は、やがて年相応の少女として、そして、やがては「普通人」に混じって暮らしていかなくてはならないその方法を覚えるため、学校へ通うことになる。彼女は、緑色の肌、体をつなぎ合わせる縫い目、活動エネルギーを充電するための首に突き出した金属ボルトを隠して、セーレムの街のマーストン高校へ。
Melody は、かつてはその異様な容姿から、まともな友達などいないありさまだったが、過去の彼女を知らない新しい街で、人並みの学園生活を送ることを望みながら姉の Candace と共にマーストン高校へ通うことになる。

Melody は、登校初日の騒動から、Cleo に目をつけられるが、ボーイフレンドを争ってその Cleo と対立する Bekka と親しくなる。一方の Frankie は、Lala と Blue 、その二人の親友 Cleo と Claudine らと友達になる。
しかし、Melody も Frankie もまだセーレムの街に隠された秘密を知らない。やがて2人は、それぞれの立場でその秘密に立ち向かうことになるのだが・・・。

日本でも着せ替え人形の「バービー」で有名なマテルが展開するキャラクター・ファッション・ドール・シリーズ「モンスター・ハイ(high は high school の略ね)」。人形だけではなく、ウェブアニメも製作され、マテルのオフィシャル・サイト(アメリカの、ですが)で公開されている。
お分かりのように、Frankie は、フランケンシュタインの怪物がモデル。他にも、吸血鬼、狼人間、ミイラの怪物、半漁人など、モンスターをモチーフにしたキャラクターがドールとなっていてアニメにも登場する。
小説「monster high」はこの世界観をモチーフに、独自のストーリーを展開している。キッズも含めてヤング・アダルトまで(だいたいティーン、中・高校生向けと考えてください)の女の子向け小説で、日本で言えばちょうどコバルト文庫あたりがターゲットにしている層に近いといえるんじゃないかな。

何しろ女の子向けだものだから、たとえモンスターが主人公でも、基本男の子を巡っての女同士の争いや、人気者派閥の争いなど、学園ドラマの要素がそろっている。読みながら、そういうガールズ向けの映画やドラマの映像がそのまま浮かんできましたよ。そういう意味では実によくできてる。また、ファッション・ブランドや、アイドルの実名も連発で、今(2010年発行)女の子に人気(と思われる。わたしはアメリカの女子中・高生ではありませんからね)のアイテムがてんこ盛り。もうきらきらしちゃってしょうがないという内容ですが、ストーリーも意外と面白い(失礼)のであった。
玩具・アニメのキャラクター・ノベライズという性質上、登場キャラクターが最初っから多い、というハンデがありながら、それぞれうまく処理してある。主人公を Frankie と Melody の2人にしているところがうまいやり方。特に Melody は原作とまったく違うキャラクター(設定そのものがまったく違う)になっているという大胆な改変がなされているのだけれど、それがうまく働いていますよ(注・下記追記あり)。
しかし、問題が。さあ、Frankie と Melody の運命は、次回に続く、で終わってるんですよ~。ええ~そんな~。第2巻も読まなきゃならないではないか。つーかもう4巻目まででてるよ。知らなかった~。

追記
調べてみると、小説が出版された2010年にはアニメおよびドール・キャラとしてはまだ Melody にあたるキャラが出ていません。小説の Melody にあたるキャラクター・ドール Meowlody のリリースは2012年なので、小説版の方が先になるんですね。ということは小説に登場する Melody と Candace 、Jackson Bekka などは小説オリジナル(あるいは商品企画がまだ完全に出来上がっていなかったか)のキャラクターで、それに相当するドール・キャラクターが後から出来た、と考えることが出来そうです。実際、キャラクター・ドールでは Meolody の姉妹は双子の Purrsephone で、Candace という名前のキャラは現在のところ見当たらないですからね。ドールが小説のキャラクターを改変して取り込んだということになるのかもしれません。


あ、そうだ、先日のエントリで ambiguously なんて単語見たことないと書きましたが、ほら、何の偶然か、この本に出てきましたよ。形容詞の ambiguous が。おかげで意味不明でなく、ちゃんと理解できました。ありがとう、ジ・アンビギュオスリ~・ゲイ・デュオ。

04月04日
23:53

Skellig
author David Almond 読了

Michel の一家は冬の終わりに持ち主のいなくなった古い農場へ引っ越してきた。荒れた敷地に建つぼろぼろの納屋で Michel は、埃と蜘蛛の巣、虫の死骸にまみれやせ細った人、あるいは人に似た何か、を見つける。暗く古い納屋で見た幻かと思われたそれの元を再び訪れた Michel は、それの世話を始める。やがて同じ通りに住む Mina と親しくなった Michel は「彼」を納屋から Mina のおじいさんの遺した屋敷に移し世話しようとするのだった。一方、生まれたばかりの Michel の妹、まだ名前も決まっていない赤ん坊の妹は、重い病気を抱え、母とふたたび病院に戻っていく。死んだも同然の状態から再び生を取り戻していく「彼」と、生を受けながら死と戦わざるをえない妹。学校へ行かず、母に教育を受けながら、独自の価値観で行動する Mina 。これまで当たり前だと思っていた学校や友達とのわずかな心のずれ。こうした彼らとの関わりが、Michel の生への視点を変えていくのだった。

とても面白かったのだが、そのお話はなんとも説明が難しい不思議な小説。これまで暮らしていた家から新しい家族のために新しい家に引っ越してきた Michel の家族。古く荒れ放題のその家で、現実とは思えないものと出会い、また、確かにそこにいながら、Michel が知っている生活とは違う生き方をしている Mina とも出会う。生死をさまよう幼い妹と、これまで知っていた世界と知らなかった世界の間をさまよう Michel はある意味リンクしているともいえる。この小説の雰囲気は何かに似てるなあと思い出したのは「北風のうしろの国」。ちょっと前に呼んだ「great blue yonder」もある意味似た雰囲気。このへんイギリスファンタジーの伝統なのかもしれないと思ったりしました。単にあらすじや設定だけでは図れないという小説、物語というものの面白さが味わえます。
作品中、何度も出てくる「肩甲骨は翼の名残」というのが翻訳版(創元推理文庫版)の題名になっていたんですね。翻訳本は本屋で何度か目にしていたのだけれど、タイトルがぜんぜん違うので気がつかなかった。翻訳で読んでなくてよかった。今はまだ翻訳本で読んじゃったものは読まないようにしてるんです(そのうち読みたい、と)。原書で初めて触れるほうが他人の訳にとらわれないからいいんじゃないかなと思ってるもので。これからも気をつけないとね。

04月03日
23:44

Olivia Sharp series
The Princess of the Fillmore Street School
The Sly Spy
The Green Toenail Gang
author Marjorie Weinman Sharmat and Mitchell Sharmat 読了

サンフランシスコのペントハウスに住む Olivia Sharp は、どこにでもいるお金持ちのお嬢様だが、実は人に言えない秘密の悩みを解決するエージェントなのだった。

The Princess of the Fillmore Street School
ある日、Olivia のペントハウスに同じ学校に通う Desiree がやってくる。彼女が Olivia に打ち明けた秘密の計画は、学校のプリンセスになること。プリンセスになって学校を完璧なものにするのが彼女の望みなのだ。それほど真剣に考えなかった Olivia は Desiree の申し込みを受けその資金にと10ドル渡してしまう。これで解決と思いきや、翌日これも同じ学校の Duncan から電話がかかる。 Desiree はプリンセス計画を実践、同級生たちの身の回りを勝手に完璧にしまくり始めたのだった。その資金提供をしてしまった責任から Olivia は、Desiree の計画をやんわりと阻止しようとするのだが・・・。

The Sly Spy
秘密のお悩み解決エージェントである Olivia だが、いつでも事件がむこうから舞い込んでくるとは限らない。暇をもてあました Olivia はこちらから街に出向いて依頼をさがそうと思い立つ。途中、ペントハウスから降りるエレベーターのなかでコートの襟をたて深々と中折れ帽子をかぶった少年とでくわす。どうやら下の階にひっこしてきたらしい。街に出た Olivia に事件が待っていた。同じ学校に通う Sheena が彼女に助けを求めてきたのだ。 Desiree の誕生日プレゼントにと、友達同士でお金を出し合って、カナリアを買ったのだが、これを何とか Desiree には秘密にしておきたい。しかし、Desiree は誕生日が待ちきれない様子であれこれ探りをいれてきているのだった。依頼を引き受けた Olivia だったが、しかし彼女の前にライバルが現れた。Desiree に雇われたスパイがプレゼントの秘密をかぎまわっている様子。はたして、秘密は守れるのか。そしてスパイの正体は・・・。

The Green Toenail Gang
Oliviaに親友の Taffy から手紙が届く。Taffy は Olivia の住むパシフィック・ハイツの4階に住んでいたのだがカリフォルニアに引っ越していったのだった。手紙の文面から Taffy が助けを求めていると読み取った Olivia はさっそく Taffy のもとに。彼女の悩みとは、学校の5人の女の子の秘密クラブ。そのクラブは、クラブの秘密ゆえ(秘密のクラブだから、じゃないよ)に Taffy をクラブに受け入れてくれないのだった。Olivia は Taffy の悩みを解決できるのか、そして秘密クラブの秘密とは・・・。

少年探偵 Nate The Great のいとこ、お嬢様探偵 Olivia シリーズ一気読み。といってもどれも2000語程度の短いものなのであっというまに読めてしまうのだけれどね。第1巻同様、いずれもお金で解決できない悩みを解決する少女探偵 Olivia のマイペースな活躍が楽しめる。こういうのんきな探偵ミステリー(か?)ってのもなかなかいいもんですね。

04月03日
02:03

Ramona and Her Mother
author Beverly Cleary 読了

お父さんの再就職が決まって一安心の Quimby 家。新年のパーティーにご近所を呼んでお祝い。でも面倒をおこすのはまだ幼い Willa Jean 。Ramona は、みんなが Willa jean はまるで小さいころの Ramona を見るようだというのが気に入らない。両親が共働きになったため、Ramona は、学校が終わると友達の Howie の家で面倒をみてもらうことになるだ、そこでまたひと騒動。いままで母に髪を切ってもらっていた姉の Beazus は、学校の他の女の子のようにおしゃれがしたい。でも、彼女の思惑通りには事が運ばない。Beazus のおさがりではなく、真新しいパジャマをもらった Ramona は、うれしさと着心地のよさから、服の下に着込んだまま学校へ行くのだが・・・。

前巻では失業して家にいる父と Ramona のかかわりが軸になっていたが今度はお母さんと Ramona が中心。お騒がせな子供といわれ、姉の Beazus にくらべて自分は母に好かれていないのではと思い悩む Ramona。さらにこの巻では、これまでの Ramona 中心のエピソードから、共働きになって、暮らしがまたすこし変わっていく Quimby 家の日々を Ramona の視点から描くという傾向がまた少しだけ増している。Ramona もすこしずつ成長して、自己と他の関わりを、より客観的にみられるようになってきているということですね。Beazus の失敗や、ちょっとしたことから喧嘩になる両親など、自信のことだけでなく、家族に対しての心配事が増えてくる。だけど、やっぱい Ramona は Ramona。お騒がせなその発想と性格は相変わらずなのだった。

03月13日
23:46

Tales of Terror from The Black Ship
author Chris Priestley 読了

長い年月波に洗われた断崖の上に建つ古い旅館に、父と暮らす Ethan と Cathy。あるひどい嵐の夜、病にかかった2人が目を覚ますと、宿には父の姿が見えない。2人のために村へと医者を呼びにいってくれたのだろうと父の帰りを待つ2人だが、そんな時若い男が宿を訪れ、2人は嵐の中に放っておくこともできず中へ招き入れる。そして Thackeray と名乗ったその男は、嵐が吹きすさぶ夜の間に船乗りたちの怪異談を2人に語って聞かせるのだった。

幽霊あり、呪いあり、モンスターありとバラエティにとんだ海洋怪談集。一応子供向けとはいえ、いずれも奇妙な味わいの残酷な怪異談となっていてたいへん好ましい。
ただ、怖い話りのムードを出すためか形容詞がやたら多いので、知らない単語が結構出てくるのがちょっと困りましたが、お話そのものは面白く読めました。古い帆船時代の船の様子も、「ホーンブロワー」や「ボライソー」シリーズを読んで知っていたことが役に立った感じ。

以前に読んだ同じ作家の「Uncle Montague's Tales of Terror」と同じく、ひとつのストーリーが終わるたびに全体を通してのもうひとつのストーリー が明らかになっていくというスタイル。この「Black Ship」の方が第1巻だったらしい。さらに続巻も出ていて、そこまでの3冊は翻訳書も出ている様子。そのうち第3巻の「Tales of Terror from The Tunnle's Mouth」も読むつもり。さらに新しい本も出版されるようなので楽しみ。

03月04日
06:35

Flush
author Carl Hiassen 読了

Noah の父、Paine は、Dusty Muleman のカジノ客船 Coral Queen の船底の栓を開け、船を沈めた罪で拘置所にいた。Dusty Muleman は船の汚物を違法に投棄し、周辺の海を汚染していると考えたからだった。
Paine が警察につかまったのは初めてではない。マイアミの海を汚す行為を見ると相手が誰であれ、あっという間に頭に血が上る少々困った性格なのだった。しかし今度は分が悪い。Paine の主張は通らず、Dusty Muleman は土地の名士で、しかも不法投棄の明確な証拠がない。船体に損傷がない Coral Queen は、すぐに引き上げられ再び営業を始めた。
Noah は父の無罪と Dusty Muleman の不法行為を証明し平和な普通の家庭と、美しい海を取り戻そうと行動を開始するのだが・・・。

アメリカはフロリダ半島の南端が舞台。海の自然を守ろうとするちょっと過激な父を持つ少年 Noar が自然と家族を守ろうと奮闘する、カール・ハイアッセンのヤングアダルト向け第2作。前作の「Hoot」と同様の自然を顧みない資本主義優先 の大人と少年の戦いが描かれるが、キャラクターががらりと変わっていてまったく別物。何しろ主人公よりその父親のほうが過激なんだから子供としては困ってしまう。が、その血を受け継いだ主人公とその妹 Abby は、父親同様、家族の危機と自然破壊にだまってはいられないのだ。ストーリーも Hoot より社会派な内容になっていて、ただ自然を愛するというだけでは、物事は思うようには行かないし法律も社会もそう簡単には味方してくれないという世の中の厳しい面も描かれてもいる。
キャラクターは多彩。自然を愛する過激な父をはじめ、いかにも頼りにならなさそうな胡散臭い人間や、強面の用心棒などちょっとハードボイルド系のキャラクターも登場。女性陣が頼もしい。Noah の母はもちろん、Noah に協力する Shelly と,特に Noah の妹の Abby がいい。それから、 Noah を助けてくれる謎の「海賊」も。
二転三転するストーリーにユーモアもふんだんに交えてあって最後まで楽しく読めました。

あ、そうだ。この本は表紙もいいんですよ。前作「Hoot」もそうだけど、この「Flush」も装丁がシンプルで色も綺麗。妙に愉快なエンボス加工のイラストが、これがまたいいんだな。

02月22日
00:33

Ivy + Bean book3 Break The Fossil Record
author Annie Barrows 読了

読書の時間。本に集中できない Bean が担任のMs.Arba-Tate に渡されたのが、「驚異の世界記録」。あっと驚くような、あるいはあきれるようなさまざまな世界記録が載っているその本に2年生全員が興味津々。自分たちも記録に挑戦しようと考える。Bean は家に帰ると早速、Ivy の協力でストローを口にくわえた数世界一に挑戦するがあえなく失敗。記録を作るのは考ていたよりも大変だと思い知る。一方 Ivy は、周囲の無理解を乗り越えて恐竜の化石を掘り出した Mary Anning のように、化石を発見しようと手始めに、Bean と一緒に Bean の家の庭に穴を掘り出す。もし化石を発見できれば Mary Anning よりも若い古生物学者として世界記録になるにちがいない。そして、とうとう二人は庭に埋まっていた骨を発見するのだが・・・。

世界記録の本というとアレですね。たとえどんなにしょうもない記録でも世界記録となるとおいそれとは到達できない。今回もなんでもすぐにやってみる Bean (その分あきらめるのも早い)と、目標を決めたらそうやすやすとはあきらめない Iny のコンビっぷりが楽しい。Bean の天敵、姉のNancy が再登場、Bean に振り回されぎみのやさしいお父さんも登場してこれで Bean の家族が明らかに。

02月16日
00:34

Madame Pumplemousse and Her Incredible Edibles
author Rupert Kingfisher 読了。

Madeline は、パリでレストランを経営する叔父のもとに預けられるが、その叔父は意地悪で、料理の腕もいまいち。でも出世欲だけは人一倍で有名になりたくてしょうがない。Madeline の天性の料理の腕前を見抜いた叔父は、しかし嫉妬に駆られてレストランの下働きとして扱うしまつ。ある日食材の買出しに出かけた Madeline は、ひょんなことから、路地の奥にひっそりとたたずむ食材店を訪れる。得体の知れない食材を狭い店内になお所狭しと取り揃えたその店は Madame Pumplemousse の経営する店だった。そしてお使いの代わりにその店で手に入れた食材を使った料理が、なんと大評判。有名な料理評論家のお墨付きも得て、叔父のレストランはたちまちパリでもっとも有名なレストランになるのだが、食材が底をつくと料理が出せなくなってしまう。叔父は一計を案じ、Madeline は叔父の命令で食材のレシピを盗み出すためのスパイとして、Madame Pumplemousse の元で働くことになるのだが・・・。

黒ずくめの衣装に身を包んだ正体不明の Madame Pumplemousse の提供するありえない食材をそろえた謎の店。相棒はアイパッチをつけた片目の白い猫。叔父の強烈な個性のおかげで、やや主人公の Madeline の印象が薄いのだけれど、ある意味実際の主人公は強欲な叔父だといえる。シンプルな筋立てでクラッシクな印象をうけるが、2008年に出版された最近のおはなし。それだけに伏線の張り方や、一見ステレオタイプな登場人物の扱い方、必要なさそうは部分はごそっとそぎ落とす手法がなるほど今風ではありますね。だいたいどんな風になるのかはわかってしまうおはなしなんですが、その扱い方がいいんでしょうね。エンディングもいい。70分ぐらいのアニメーションにしたら面白そう。というより、そういう最近のアニメーション作品(ディズニー・ピクサーなどの)をイメージして書かれている可能性もあると思うな。
古風なイラストも魅力的。特に登場人物の見かけに関しては本文にはあまり詳しく書かれていないのでこのイラストの効果は大きい。
これも続編が刊行されているので、そのうち読んでみたいと思います。

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