プロフィール

野に咲く一輪のタンポポのようにヒッソリ暗躍中!?
じゃ、ランク入りはダメじゃん。
と、今頃気付く大馬鹿者。

徘徊癖がありそこら辺うろつきます、ご注意ください・・・。(気にしないでね~)

投稿画像は『しぃペイントツール』が使用困難のため、市販ソフトを使用中です。

その時気分のイメージ一発屋。
ストレスが限界を超えると、やたらと裸婦に走りますのでご注意ください・・・。

基本、『こらぼ』は全て可にしてます。
ご自由に、いじりまくって下さい。(笑

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(2013年8月)日記一覧

16件中 1件〜16件を表示

2013-08-22 00:01

詰問(きつもん)

廊下に出ると、U子は俺の周りを回りだす。

「あ、本当だ・・・。
 女の匂い、してるわぁ。」

「マジかよ?
 全然、気づかなかった・・・。

 だいたい匂いで、相手を特定出来るものなのか?」

「そうよ!
 特に恋する乙女は、敏感なのよ!

 で・・・、あんた。
 本当に、S美ちゃんに会ってたの?」

「会ってない、会ってない。
 断った相手に、わざわざ会いに行くか?普通・・・。」

「じゃ、なんで女の匂いさせてるのよ?」

「S美のお姉さんに、抱きつかれた・・・。」

「え~っ!?
 なんで、抱きつかれたのよ?
 おかしいじゃないの?」

「だ~か~ら~。」
俺はU子に説明した。

まず、S美からの申し出を断ったところ、
後でS美のお姉さんから、俺に文句が来たこと。

そして、S美に断った理由をお姉さんに説明したところ、
逆に、お姉さんに俺が気に入られてしまったらしいこと。

更に悪いことに、お姉さんがM先輩のクラスメイトであったこと。

これらの事をU子に説明した。

「そうかぁ、そりゃ最悪だわぁ~。
 困ったわねぇ。

 三角関係どころか、四角関係かぁ・・・。

 まるで泥沼じゃない?
 こりゃ、あんたがハッキリするしかないんじゃないの?

 もう、K子に告白しちゃいなさいよ。
 きっとK子も待ってるよ?」

「知ってる・・・。
 焦れてると思う・・・。」

「じゃあ、なんで『好き』って言ってあげないのよ?」

「まだ早すぎると思う・・・。

 正直、怖いんだ・・・。
 今の関係を壊すのが・・・。
 俺が、あいつの自由を奪ってしまうんじゃないのか?って・・・。」

「相変わらず、優しいのね?

 でも男は時に、女に対して強引さも必要なんだよ?
 逆に女は、それを待っているんだから・・・。

 よく覚えておきなさい?」

「そういうものなのか?」

「そうよ・・・、そんなものなのよ。

 んじゃ、仕方がない。
 U子さんが、二人の間を取り持ってやろうじゃない!

 私が呼ぶまで、ココに居なさいよ?
 良いわね?」

「わかった・・・。」

U子は教室の中へ戻っていった。
そして、K子と話をしている。

いずれにせよ、もうU子に全てを託す以外、俺には手立てがない。
2013-08-19 00:43

移り香

M先輩との打ち合わせが済み、
4階の3年の教室から、やっと自分の教室に戻ってきた。

「ただいま~っ。」

「あら、お帰りな・・・。
 ん・・・?
 ・・・ちょっと待って。」

俺は、いきなりK子に裾を引っ張られた。
なぜ引っ張られたのか分からず、K子に問いかける。

「なに?どうしたの・・・?」

一体どうしたんだ?K子のやつ・・・。

「女の匂いがするわ・・・。」

「えっ!?」

まさか、さっき抱きつかれた時の匂いなのか?

「ねぇ、あなた・・・。
 いったい・・・、どこへ行ってらしたの?」

K子の口調が、いきなり変わった。
これは、かなり怒っている・・・。

「どうした?どうした?
 ねぇ、浮気?浮気?」
YとEが、何事かと集まってくる。

「こらっ!
 あんたたち!
 余計な邪魔しないの!!」

そこにU子が割り込んで、YとEを静止させてくれた。

そして、K子の追及は続く・・・。

「ねっ?
 わ・た・し・・・、怒らないから。
 正直に話してくださる?」

「それはウソだろ?
 怒らないって、目がすわってるじゃないか・・・。」

更にK子は、言葉を続ける・・・。

「な~に?
 私に言えないところ?」

「だから、3年の教室だって。
 お前だって、出かけるところ見てたろ?」

「それは分からないわよ。
 私の見てないところを回って行ったのかもしれないし・・・。」

「疑り深いなぁ・・・。
 そんな事、する訳ないだろ。
 決して、怒られるような事は、し・て・ま・せ・ん。」

「本当?」

「はい!
 天地神明に誓います!」

「そう・・・。
 嘘だったら許さないからね・・・?」

「だから、嘘ついてないから・・・。」

まさか、移り香が残っているとは、思いもしなかった。
というか、女ってこんなに敏感なのか?
知らなかった・・・。

たかが匂いだけで、こんな窮地に陥るとは・・・。

「許してあげなよ、K子。」

U子がフォローしてくれる。

そうだそうだ、感謝するぞU子。
さすが、俺の幼馴染だ。

だがK子の不信感は、これで治まらなかった・・・。

「だってU子ちゃん。
 間違いなく、これ女の匂いよ?

 しかも、あの女の匂い・・・。

 この人、保健室の女と会ってたんだわ・・・。
 きっと・・・。

 そうに違いないわ!!」

ちょっと待て!
そこまで、匂いを嗅ぎ分けられるものか!?
確かに姉妹だから、似てても当然かも知れないが・・・。
狩猟犬並みの嗅覚だな・・・。

女の怖さを始めて知った・・・。

すると、S美を知っているU子の顔色が変わった。

「えっ!?
 わかった!

 私が事情をキッチリ聴いてくるから、K子はココに居なさい。

 まず、落ち着きなさい!
 いいわね?」

U子はK子をなだめて座らせた。

「ちょっと、あんたはコッチにいらっしゃい・・・。」

俺はU子に連れられて、廊下に出た。
まるで、罪人のように・・・。

YとEは、陰からこちらを伺っている。

おいコラッ!
お前らも、ちょっとは俺をフォローしろよ!
おまえら、パパラッチか!!
2013-08-16 23:57

相談

谷川たちが資料を持ってきたその後、Tも資料を持ってきた。

Tはもともと谷川たちのグループだったが、現在は離反している。
T本人も、谷川には顔を合わせにくいのかも知れない。
だから、すこし間を置いて持ってきたのだろう。

しかし、これで完成である。

「委員会とクラブの集計データー、持ってきたぞ?」

「おっ、ご苦労さん!
 遂に出来たかぁ。
 ありがとう。
 さっき谷川たちも、資料を持ってきてくれたところだよ。」

「そうか。
 で、集計結果なんだけど、
 運動部で意外と体育館ってのが多いんだ。」

「なるほどな・・・。
 たしか谷川の資料でも、体育館ってのが2番目に多かったな。
 分かった、資料を持って相談してくるよ。
 ありがとうな?」

Tから資料を預かり、俺は階段の方へ向かった。

「あら、もう行っちゃうの?」
K子が声をかけてくる。

「ああ、さっさと終わりたいからね?」

「全く、慌ただしい人ね?気を付けなさいよ?」

「おぅ、ちょっと行ってくる・・・。」

俺は3年の教室のある4階まで、階段を駆け上った。
M先輩の居る教室へ急ぐ。
が、しかし・・・。

「やぁ、妹よりも私に会いに来てくれたのかい?
 妹には内緒にしておくからね?
 うれしいなぁ・・・。」

いきなり抱きつかれた・・・。
嘘、先輩と同じクラス?なのか?

「お・・・お姉さん?」

「嫌だなぁ、私を名前で呼んでくれても良いんだぞ?」

「こらこら、そこで何遊んでるの?
 まったく・・・。

 おぅ、悪いな?」

「M先輩・・・。」
地獄に仏である・・・。

「私は遊んでなんかいないぞ?
 年下でも、彼は立派な一人前の男だからな。」

「分かったから、邪魔しない・・・。
 で、出来たのか?例の・・・。」
M先輩が助け舟を出してくれた。

「ええ、資料持ってきました。」

助かった・・・。
これで、やっと本題に入れる。
持参した資料を広げ、最終結論を模索する。

「最終候補、上位3っつに残ったのが、講堂、体育館、プールなんです。
 これでは工期がかかります、いつ完成できるかどうか・・・。」

「じゃ、講堂と体育館を一緒に考えろよ。

 大概、体育館で講演するのなんか当たり前だ。
 それで一つ分の建築費、工期が浮く。
 その分、プールに工期と予算を振り分けられるんじゃないか?」

「なるほど・・・。
 さすがMちゃん。
 あ、ゴメン・・・。」

「良いよ、前みたいな呼び方で。
 俺も先輩なんて呼ばれるの、こそばゆくてな・・・。

 しかし、よくここまでやってくれたよ。
 助かった・・・。
 すべて、任せて正解だったな?

 それじゃ、明日、教頭先生のところへ持っていこう。」

そこへ、お姉さんが口を挟んでくる。
「ねぇ、その前に図書室の書庫は・・・?」

M先輩と俺は声を合わせた。

『却下します!』
2013-08-16 01:08

寝て待った

谷川に依頼してから、4日ほど経った。
そろそろ、出来上がってくる頃だろう。

もし予想通りなら、
講堂、体育館、プールなどの施設関係が挙がってくる筈だ。

おそらく問題は、その建築順序だけになるだろう。
ただ、それは俺の考えであって、実情ではない。

実際のデーターが欲しいのだ。

「谷川たちが、来たわよ?」
K子が知らせに来る。

「おっ?出来上がって来たかな?」

見ると、谷川が教室出入り口で、
仲間を3人ほど連れ、資料を手に立っていた。

「よっ!持ってきたぞ?」

「随分と早かったなぁ。
 さすが谷川だよ・・・、ありがとう。
 おかげで、大助かりだ・・・。

 とりあえず、中に入れよ。」

俺の前の、空いている席に案内する。
そして、渡された資料に目を通す。

大当たりだ、これにTのデーターを合わせれば全て終わる。

おそらくTから挙がってくる要望は、備品程度のモノが主体だろう。
そんなものは、現行の生徒会にでも任せておけばいい。
肝心なのは、谷川が持って来てくれた、この資料なのだ。

「大体、予想してたろ・・・?
 この結果・・・。」

「ん?そんな事無いぞ?」

「いいや、予想してた顔だね、その顔は。
 だから怖いんだよ、おまえ・・・。

 しかも教師からの信頼も厚いし、顔も広いしなぁ・・・。」

「そりゃ、買い被り過ぎだって。
 俺は、そんな凄い人間じゃないって。」

「自分が気付いて無いだけだって!

 大体、全権委任されてんだろ?
 上から信頼されてなけりゃ、出来ね~よ。
 んな事。

 俺には絶対に出来ないね。
 てか、やらせてもらえね~よ。」

「そうか?
 責任、押し付けられたようなもんだぞ?」

「それを飄々とした顔で、こなしちまうんだからなぁ。
 俺らじゃ、到底かなわね~よ。

 みんな、これが俺らのアタマだ、よく覚えとけよ?」
連れてきた仲間に谷川は言った。
 
「やめろって。
 恥ずかしいじゃん・・・。」

俺は、谷川の連れてきた仲間、一人一人に挨拶された。

「じゃ、何かあったら、また呼んでくれ。
 こいつらも、手伝うからさ・・・。」

「ああ、また頼むよ。
 よろしくな。」

谷川たちは、教室を出て行った。

すると、やり取りを隣で見ていたK子は、驚きを隠せずにいた。

「凄い・・・。
 あなたって、学年一位の谷川をも従えちゃうんだね?
 谷川が、あんなになるところ、わたし初めて見たわ・・・。」

「そうなのか?
 俺は、以前の奴は知らないから、何とも言えないけど・・・。」

「そうよ!
 あいつ、絶対に『手伝う』なんて言葉、言わない奴だもの!
 それをあなたに言ったのよ!?

 ・・・・・・・・・・・・やっぱり、あなたって・・・・・・何者なのよ?」

K子は、怪訝そうに俺の顔を覗きこんでくる。

「ば~か、俺は俺だよ。
 心配するな。」

おでこが近いので、軽くデコピンしてやった。
額を抑えながらK子は言う。

「いいもん・・・。
 どうせ私、馬鹿だもん・・・。」

そしてK子はふくれた。
おまえ、可愛すぎるよ・・・。
2013-08-15 01:01

果報は・・・

「ただいま~。」

教室に戻って来るとY達に出迎えられた。

「おかえり~。」

「随分かかったわね?
 みんなもう、食べちゃったわよ?」
K子は、不服そうである。

「あれ?
 そんなに時間かかったのか?

 全然、気づかなかった。

 ごめん、ごめん。
 今、メシかっ込むから・・・。」

「遅かったなぁ~。
 おれら、食い終わっちゃったぞ?」
YとEも、ブチブチと言ってくる。

「で、谷川の件は上手くいったの?」
K子は心配そうに聞いてくる。

「まあね・・・。
 一週間以内に、すべては終わるから・・・。
 おそらく・・・。
 とりあえずのところ、『果報は寝て待て』だよ。」

「あなた・・・。
 よく、あの谷川を説得出来たわね?
 信じられないわ・・・。」

「そうなのか?
 あいつ俺に、一目置いてるみたいだからね・・・。
 意外と楽に交渉出来たよ。」

「えっ、なんで?」

「俺の実力テストの成績、変わらないんだよ?
 奴とたいして・・・。
 だから怖いんじゃないか?
 たぶん・・・。」

「うそっ!
 あなた、学年順位いくつよ!?」

「えっと・・・。
 1~2点差で2位?
 ・・・・・・だったのかな?」

「だって、2位は違う人だって聞いたわよ?」

「そんな事言われてもなぁ・・・。
 俺だって知らないよ。
 去年担任だった、学年主任の先生が言ってたんだから・・・。
 間違いないだろ?」

「ええっ!?
 そうなの~?

 なのにアナタ、なんで谷川たちと、こんなに性格が違うのよぉ~!?」

K子は、俺に迫り寄ってくる。

「んなの、俺に聞くなよ~っ!」

「だって、お兄ちゃん達も成績良くって性格悪いのよ?
 なのにどうしてあなたは、優しくって、成績が良く、性格も良いのよ?

 わたし、絶対にあなたの事、信じられないわっ!」

「だから、俺に聞くな~っ!
 て言うか、おまえは俺を一体どういう基準で見てたのよ!?

 大体、お前の理屈だと、ゴミ以下だな・・・俺。」

なるほど、身内にも居たのか。
だからK子の思考が、≪頭が良い=人が悪い≫なんだ・・・。
妙に納得した。
2013-08-14 19:16

交渉

4時限目終了のチャイムが鳴った。
昼休みである。
みんな昼食の準備をしているが、俺は席を立ち教室を出ようとする。

するとK子が、驚いたようにこちらを向く。

「なに?
 昼食も取らずに行っちゃうの?」

「谷川の奴、居なくなるとも限らないからな。
 メシ食ってるところを抑えてくる。」

「ねっ?
 ならもう一度、生徒会に復帰したら?」

「なんで?」

「だって、今のあなた、生き生きしてるもの・・・。
 それに今の方が、凛々しくてカッコいいわよ?」

「そうか?
 ありがと・・・。
 おまえだけが、見ていてくれればいいよ。
 じゃ、行ってくる。」

「うん、いってらしゃい。」
そうK子は、言葉を告げた。

谷川のいる教室を覗く。
いたいた、昼食の準備をしている。
近くの生徒を捕まえた。

「谷川、呼んでくれる?」

そして、その生徒が谷川を連れてくる。

「よっ、しばらくじゃん!
 教頭先生直属なんだって?」

「耳早いな?
 やっぱり谷川だよ。
 さすがだ・・・。」

「で、何よ・・・?
 直接出向いてくるなんて、俺に何かさせたいんだろ?」

「そうだ。
 これは、お前にしかできない、重要な仕事なんだ。」

「またまた、おだてちゃってぇ~。
 お前だって、頭良いじゃん?
 自分で、チャッチャッとやっちゃえよ~。」

「俺一人ではダメなんだ、是非ともお前の助けがいる。」

「分かったよ。
 で、何すればいいんだ?」

概略を谷川に話す。
現在の学校で、早急に設置しなければならない施設及び設備は何か?
それを2~3点上げてもらい、集計してもらう。

ただし、口外無用であること。
更に対象者は、成績中位~上位の者であること。

ある意味、成績対象で差別がある。
だが、訳の分からない要望を出されても困るのだ。
時間がないのだから・・・。

「おれらにピッタリじゃん。
 んじゃ、仲間集めて集計しちゃうわ。
 出来たら、そっち持ってく。
 それでいいか?」

「おう、期待してるぞ。」
2013-08-14 16:13

始動

さて、どうしたら楽に、早く終わらせることが出来るのか?
まず、正確なデーターを集めたい。
しかも内密に・・・。

オープンにすると厄介だ。
おそらく、あらゆる役委員クラブ員たちが、我も我もと殺到してくるだろう。
パニックは避けたい。

まずはTと、打ち合わせよう・・・。
登校すると、Tのクラスに向かった。
Tに概略を説明する。

「昨日、M先輩から全権委任を貰った。
 簡単に、手っ取り早く終わらせる・・・。

 まず、各役員長とクラブ部長に、要望を紙に書いてもらって集める。
 その中から、優先順位を付けて行く。」

「一般生徒からのはどうする?」

「谷川を引っ張り込む。」

「あいつを?
 俺は苦手なんだよ・・・、あいつ。」

「谷川を好評価する奴が居ると思うか?
 だが、人は悪いが頭は使える。」

「なるほど・・・。」

「そっちは俺がやるから、役員長とクラブ部長を頼むよ。」

「おぅ、任せろ!」

さすが体育会系のTだ、頼もしいぞ。
昼休みには、谷川の所に行かなければならないな。

さて、自分のクラスへ向かうか・・・。

「おはよう。
 今日は、随分遅いじゃない?」
K子が声をかけてくる。

「おっす。
 ちょっと用事があってね・・・。」

「昨日は、なんだったの?」

「箱(校舎)は出来たから、中身を作れってさ・・・。」

「えっ?
 なんか大変そうね?」
K子はキョトンとした顔である。

「そう、だから簡単に出来て、サボるために考えてる・・・。」

「何よ、それって・・・。
 まったく、おかしな人ね・・・?」
K子は苦笑した。

「なぁ?
 この学校、設備で何が足りない?
 いや、何が欲しい?」

「いやねぇ~。
 無さ過ぎて、欲しいもの有り過ぎるわよ。」

「そうかぁ~。」
そう、これが一般的な回答だろう。
これでは、的が絞り込めないのだ。

「やっぱり、谷川を使うか・・・。」

「えっ?
 谷川のところに行くの?」

「ああ、奴の力が必要だ・・・。
 昼休みにでも、行ってくるよ。」
2013-08-14 11:12

先輩

お姉さんの言葉が気になった。

「M先輩が大変って?」

「彼の家は、サラリーマン家庭だからね・・・。
 親に負担のかからない、県立校を受けるらしいよ?」

その話を聞き、俺はM先輩を追いかけた。

「先輩!」

M先輩はO小学校からの付き合いで、家も近所の幼馴染である。
なおかつ昨年は、
共にこの新設T中学校の生徒会副会長を務めた間柄でもある。
互いに気心は知れている。

人柄も良く、温厚で頭も良い先輩であった。

「よぅ、元気か?」

「この時期に、大変ですね?」

「ああっ。
 俺は県立U高校、受からなきゃならんからなぁ・・・。
 まったく、時間が無いよ・・・。」

県立U高校は、県下トップクラスの高校で、
国立T大学には、最短の高校でもある。

確かに時間的な余裕は、ギリギリなのかも知れない。

「大体の所は任せるから、さっさと片づけてくれるか?」

「じゃ、T達と簡単に済ませちゃいますね?」

「ああ、頼むわ・・・。
 最終的には、俺が責任取るからさ・・・。」
2013-08-13 00:47

命令

教頭先生が、話を始めた。

「君たちも知っている通り、この中学校は新設校です。
 器(校舎)は出来ましたが、中身(設備)が無い状態です。

 毎年、市から予算は出ますが、その予算は限られています。
 したがって、順番に設備を整えなければならないのですが、
 何から揃えればよいのかを君たちに検討してもらいたい。」

なるほど、もう一度『縁の下の力持ち』になれと・・・。
しかも決定権は、生徒に委ねる・・・と。

つまり表面上、生徒の自主性を引っ張り出したい訳だ・・・。

「しかし、それくらいの事であれば、
 現行の生徒会にでも出来るのでは?」

M先輩が発言する。
そう、もう高校受験に専念したいだろう。

「残念だが、君たち程優秀ではないのだ。
 おそらく、生徒会運営に手が一杯だろう。」

ああ、だからS美のお姉さんは、
俺たちが復帰しない事を残念がっていたのか・・・。
いまやっと、納得できた。

だが、そんなにややこしく組織を作ってはいなかった筈だが・・・?
現行生徒会は、いったい何をしているんだ。

更にM先輩は食い下がる。

「では、アンケート調査では?」

「アンケートでは、最優先すべき物事を見失う恐れがある。
 だから優秀な君たちに、お願いしたいのだ。」

これはもう、諦めるしかない。
事実上の命令だ・・・。

M先輩は、困り顔で図書室を出て行った。
我々も、それに続いた。

出ようとする間際、S美のお姉さんに出くわした。

「やぁ、なかなか大変そうだね?」

S美のお姉さんは、図書委員だった。

「お姉さん?」

「ん~、いいねぇ。
 もう一度、呼んでおくれよ。」

「お姉さん、妹さんに何を話したんですか?」

「別に?
 『あれは、なかなかの男だぞ。』って言っただけだが?」

「それじゃ、火に油じゃないですか?」

「君が言うように、あの子の人生だ。
 思うようにさせようと思ってね?
 私も、いつまでもかばってやれないよ。」

「それじゃ、意味ないでしょ?
 説得はどうしたんですか?説得は・・・。」

「妹がダメなら、私が嫁に行こうか?
 あっ、それじゃ君に『お姉さん』って呼ばれなくなるな・・・。
 そうか、私が君を『旦那様』と呼ばなくてはならないんだ・・・。
 それも良いなぁ。」

「いい加減にしてくださいよ。
 ああ、M先輩じゃないけど、頭抱えたくなってきた・・・。」

「ああ、Mね。
 あいつも大変だぁ・・・。」
2013-08-12 01:35

直轄部隊

放課後、図書室へ向かう準備をする。
カバンに荷物を詰め込み、無造作に上着を羽織った。

「ちょっと待って・・・。」

K子に呼び止められた。

「ん?なに?」

「ほら、ちゃんとしなさい。
 他の人たちも来るんでしょ?」

「あ?ああっ・・・。」

「キチンと、しとかないと・・・。
 みんなから、笑われるわよ?」

と言いながら、Yシャツの襟を正し、シワを伸ばしてくれる。

あれ?なんだろう。
いきなり、どうしちゃったんだ?

K子に、お礼を言っておく。

「ありがとう。」

「これで良いわ。
 気を付けて行ってらっしゃい!」

更に、笑顔でK子が送り出してくれる。

「じゃ、行ってくるよ・・・。」

K子に見送られながら、図書室へ向かう。

おい、新婚夫婦かよ?
このシチュエーションは・・・。

思わず周りを見回して、警戒してしまった・・・。
第三者から見てみれば、冷やかしのターゲットだ。
運よく、冷やかしそうな輩はいなかった。

図書室に入ると、顔見知りのメンバーが揃っている。
昨年、書記を務めたTが俺の隣に座る。

「よっ、しばらく!」

「おぅ!
 ところで、なんなんだ?
 この集まりは・・・。」

「よく分からんが・・・、
 現行生徒会と切り離して活動するらしいぞ?」

切り離して?
別働隊ってことなのか?

すると、教頭先生が入室してきた。

入って来るなり、一声を発する。

「教頭の私が、君たちの直接顧問となります。」

普通、学年主任等が生徒会顧問に就くものだが、
それを飛び越えて、教頭先生が直接顧問?

案件としては、現行生徒会の問題レベルよりも重要視してると・・・。

という事は、校長先生が直接指揮してるって事なのか?
いったい、何を始めようとしてるのだろう・・・。
いや我々に、何をやらせるつもりなのだろうか・・・?
2013-08-08 23:26

再招集

K子は『松葉づえ』が必要無くなり、
普段通りの、いつもの明るいK子に戻っていた。

「おはよ~!」

「おはよう。
 すっかり元通りだな?」

「も~凄~い、不便だった。
 身体が不自由なのって、大変なのね?

 やっぱり、健康が一番だわ!」

「健康の、ありがたみが判った?」

「ええ、身に染みて・・・。」

とりあえずK子の機嫌は、今のところ良いようだ・・・。
先日、かなりの不満を俺にぶちまけたのだから、
元に戻ってもらわねば困る・・・。

結局のところ、確証が無い事が彼女を不安にさせているのか?
やはり俺は、告白するべきなのか?
だが告白したら、今の関係を保つことができるのか?
と、余計な考えが頭の中を駆け巡る。

そんな中、K子が突然、前触れもなく聞いてくる。

「あのさ・・・。
 うちのクラスって、凄く男女の仲が良いよね?

 なんでだろう?」

「なんだよ、いきなり・・・。
 全く、藪から棒だなぁ・・・。」

「だって、気になるじゃない?

 他のどのクラスよりも仲が良いんだよ?
 このクラス・・・。

 なんか、不思議だよねぇ・・・。」

「そんなに仲が良いのか?
 このクラス・・・。」

「そうよ?
 ダントツに・・・。

 ねぇねぇ、どうしてだろう?」

「・・・・・・・・・分からないよ、そんな事。」

それは『二人が居るからだよ。』と言いたいところであるが、
イコール『俺がK子を愛しているから。』とも取れる発言だ。
『分からない。』と、誤魔化しておく事にした。

「へ~、あなたでも分からない事があるんだぁ。」

K子は、鬼の首を取ったかの様にニコニコしている。
初めて俺を負かしたような、満足そうな笑顔であった。

以後、俺を困らせる為、たびたび同じ質問をしてくるようになるとは、
まるで思いもしたかったが・・・。

そんな折、校内放送が響き渡る。

”前生徒会役員は、本日放課後、図書室へ集合してください。
 繰り返します。
 前生徒会役員は、本日放課後、図書室へ集合してください。”

「あれ?
 これって、あなたの事でしょ?」

「そうだよなぁ・・・、たぶん。」

「なんだろうね?」

「ああ・・・。
 一体、なんだろう?」
2013-08-04 23:51

犬も食わず

「どぉ?夫婦喧嘩、終わった?」
これはU子の声だ。

「終わったみたいだよ?」
Eの声もする。

教室のドア陰から、ドヤドヤとY、E、U子、C子たちが入ってくる。

「なに皆して、そこで見てるのよ!
 恥ずかしいじゃない!
 もぅ、酷いなぁ。」

「だって、入るに入れないんだもの。」
と、U子が話す。

「ねぇ?」
C子が相槌を打つ。

「そうそう、仕方ないよね?」
Yが手を広げて、あきれた顔をしている。

「で、解決したの?」
と、Eが聞いてくる。

「なんか、馬鹿らしくなっちゃった。
 この人ったら、ちっとも本気じゃないんだもん。
 必死に喧嘩してる私の方が、まるで子供みたいだわ。」

「そうだな、十分可愛かったぞ?
 そのフクレ顔・・・。」

「ばかっ!」
2013-08-03 20:25

痴話喧嘩

教室に入るのが、なんとなく恐い。
血の雨が降りそうな、嫌な感覚に満ち溢れている。

廊下でU子が待っていてくれた。

「いまK子、ご機嫌ナナメだから。
 気を付けて入った方がいいわよ?」

「当然だよな・・・。
 分かった、ありがとう。」

目の前であんな場面を見せられたら、
謝っても、そう簡単に許してくれないだろう。

それならば下手に刺激せず、普段通りに席へ着くしかないな・・・。

「おっす。」

「あら?
 隣のかたは、ド・ナ・タ・だったかしら?」

「お~い、K子さ~ん。」

「あらやだ、私の知らない人だわ。」

「あのね?
 それは、無いんじゃない?」

「気軽に・ワ・タ・ク・シ・に、話しかけないで・く・だ・さ・る・?」

「おいおい・・・。
 なんか、言葉が刺々しいぞ?」

「わたくし、知らない人には返事をするなって、親から教わってますの。」

「俺に一体、どうしろって言うの?」

「知らないわよっ!!
 さっさと、あの女のところへでも行っちゃえばっ!?」

「そりゃ無いだろ~。」

「もう、うるさい!」

「K子さん?」

「・・・・・・。」

「K子ちゃん?」

「・・・・・・。」

「やっほ~。」

「・・・・・・。」

「お~い。」

「・・・・・・。」

「K子~。」

「・・・・・・。」

「もう、どうすりゃ良いんだよ・・・。」

「じゃ、告白してよ!」

「・・・・・・・・・嫌だ。」

「なんでよ!?」

「おまえ・・・俺の気持ちぐらい、判ってるだろ?」

「そんなの、言ってくれなきゃ判らないわよ!」

「わかった、そのうちに言う。」

「いま、言いなさいよ!」

「だから、待ってろって・・・。」

「言わなきゃ、私も認めないからね?」

「いま言ったら最後、この先ず~っと、お前の尻に敷かれるだろうが。」

「・・・・・・ぷっ。」

そして、いきなりK子は笑い始めた。

「もしかして、それを今まで気にしてたの?」

「悪いか?」

「馬鹿ね・・・。
 でも、絶対に言わせて見せるからね?
 その時は、私の勝ちよ?」

本音を言ってしまえば、
『愛してる』などと言ったら、
K子を縛ってしまいそうで怖いのだ。

いまから、K子の恋愛の自由を俺が束縛して良い訳がない。
まだ、互いに中学生なのだから・・・。
2013-08-03 19:27

晴れ渡った朝空の下、いつものごとく集団登校最中である。
K子がウキウキしている。
何やら、良いことがあったらしい。

「じゃ~ん!
 発表で~す!!

 みんなが荷物持ってくれたりして、足の負担が少なかったから、
 明日あたりから『松葉づえ』いらなくなるみたいよ?」

「そりゃよかったな~。」
これで集団登下校も必要なくなりそうだ。
何やら、寂しいような気がしないでもない。

「やっと自分の足で歩けるね?」

「うん、U子ちゃんのおかげだよ~。」

「これもオレラのおかげだぞ~?
 感謝しろよ~?」

Yが話しをしている背後から、S美が割り込んできた。

「ちょっと、ゴメンなさい。
 しばらくの間、この人・・・借りるわね?」

と言いながら、S美は俺の腕を引っ張る。

「うわっ!ちょっと待って・・・!
 Y、荷物を頼む!」

俺は持たされている荷物をYにすべて預けて先に行かせた。
S美は普段と違い、かなり慌てている。

「どうしたの?いったい・・・。」

「昨日あなたに、姉が余計なことして・・・、ごめんなさい。」

「ああっ、そんな事か・・・。
 気にしてないから、もう心配するなよ。
 かえって、いまでも仲がいい姉妹で安心した。」

「そう言ってくれて、うれしいわ。」

「しかし・・・お姉さん、相変わらずだな?」

「でしょ?」

「受験だろうが何だろうが、やっぱり妹が一番可愛いんだね?
 あんなお姉さんが居て、君は幸せだよ・・・。」

「そう・・・。
 だから、もう一つの幸せも掴みとるの。」

「えっ!?」

「お願い!
 私を見ていてね?」
 
「まった!
 俺は、そんな真剣になるような男じゃないぞ?
 それにまだ、中学生なんだぞ?俺たち・・・。」

「でもあなたは、十分に大人よ?考え方が。」

ちょっと、お姉さん。
妹さんに、何を言ったの?
これじゃ、火に油を注いでますよ・・・。
2013-08-03 01:51

帰りのホームルーム少し前、U子が俺に駆け寄ってきた。
K子が居ないのを見計らって、耳元に話しかけてくる。

「あのね?
 いま、S美ちゃんのお姉さんが呼んでるんだけど・・・どうする?」

U子は同じO小学校出身のS美をよく知っている。
当然、S美の姉のことも知っていた。

大体、察しはついている。
S美姉妹はとても仲が良いので、予感はしていた。
おそらく、保健室での件だろう・・・。

「分かった、いま行くよ・・・。」

廊下に出てみると、S美の姉が待っていた。

「やぁ、しばらくぶりだね?
 もう生徒会に復帰はしないのかい?」

「お久しぶりです。
 もう基本が出来たので、私は必要ないでしょう。」

「そうか、残念だな・・・。
 後で少し、付き合ってもらえないか?」

「わかりました。」

「じゃ、私は先に校門前で待っているから。」

「何かあったの?」
U子がこそこそと聞きに来る。

「さぁ?分からないよ。
 先にK子を連れて帰ってくれるか?」

「うん、いいよ。」

あまりK子たちに心配をかけたくない。
これは、俺の問題だ・・・。

ホームルームが終わり、クラスメイト達が散っていく。

「じゃあ、U子ちゃん達と先に帰るね?」
女の勘なのか、K子は怪訝そうに俺を見た。

「ああ・・・。
 十分、気を付けるんだぞ?」

俺はK子たちを見送ってから、校門前に向かった。
そこにはS美のお姉さんが、既に待っていた。

S美の姉は男勝りで、絶えず優しい妹をかばっていた。
つまりS美をいじめた奴は、お姉さんにいじめ返されるのである。

ある意味、俺はS美を泣かせた。
当然の成り行きだろう。

「お待たせしました。」

「まぁ、歩きながら話そうか・・・。

 実は、いつぞやの晩に妹が部屋で泣いていてね。
 以来、元気もないんだ。

 事情を聴けば、君が妹を振ったらしいじゃないか。」

「ええ、そうなりますね・・・。」

「否定はしないんだな?
 なぜ妹を悲しませたんだい?」

「悲しませようとは思っていませんでした。
 しかし、結果的に悲しませてしまった。
 だからと言って、お姉さんに謝罪はしません。」

「なぜ?」

「これは私と妹さんの問題で、
 お姉さんが関わる問題ではないからです。」

「・・・・・・・。」

「正直、妹さんは気丈に振舞ってはいますが、根が優しすぎるんですよ。」

「なら、それで良いじゃないか?
 付き合いなさいよ、妹と。」

「それでは駄目なんです・・・、私の場合・・・。
 私の家は十数代続く旧家で、しかも総本家です。

 そして私は、総本家の当主になる人間です。
 当然、親類縁者が多いですから、
 それらを束ねていかねばなりません。」

「君の家は、そんな家柄なのかい?」

「そうです。
 ですから私は、周囲からの重圧に耐え、
 私と共に、一族を統括できる女性を選ばなければならないのです。」

「そこまで考えているのかい?
 しかしそれは、時代錯誤じゃ・・・。」

「でも、実際にあるんですよ。
 そういう世界が・・・。
 そして私は、そういう家に生まれ、育ってきたんです。

 真の強さがなければ・・・、優しさだけでは潰されてしまう。
 場合によっては、非情さも必要な世界なんです。」

「凄いな・・・、君は・・・。
 強い男だ・・・。」

「だから、仮に妹さんを迎え入れたとしても、彼女では自滅してしまう。
 そんな残酷なことは、私には到底出来ないのです。

 過去に、少しでも好意を抱いた相手でもあれば、なおさら・・・。」

「そうか、君は女性の事を真剣に考える、本物の大人の男なんだね?
 惚れた腫れたのぬかす、他のチャライ男達と全く違うよ。

 さすが私の妹だ。
 男を見る目は間違いなかったな・・・。

 私も君に、惚れてしまいそうだよ。
 君みたいな男と一緒になれる女は幸せだな?」

「褒めていただいて、ありがとうございます。」

「分かった。
 私からも妹を説得してみるよ。

 でも残念だな・・・。
 私は君みたいな男には、ぜひ義弟になって欲しかったよ・・・。」
2013-08-01 02:47

早朝

昨日は、U子の言葉に甘えてはみたものの、やはり気がかりである。
途中、二人に出会うのではないかと、早めに家を出る事にした。

案の定、目の前を松葉づえをつくK子と付き添いのU子が
ゆっくり二人そろって歩いていた。

「おっす!お二人さん!」

「あら、おはよう。
 随分と早いわね?」
と、K子が振り返る。

「ああ、二人が心配でな・・・。
 家を早めに出てきた。

 U子ばかりに苦労させられないだろ?
 荷物持つよ・・・。」

「あら、丁度いいわ・・・。
 U子ちゃんも持ってもらえば?」

「そんな、悪いわよ・・・。」

「良いから、良いから。」
K子は、U子の荷物も渡してくる。

「おいおい、二人分かよ~。」

「そっ、文句言わないの!
 ほら、あ・な・た・頑張って!」

「ほいほい。」

これはいかん・・・。
K子の奴、俺を尻に敷き始めた・・・。
まぁ怪我人だ、今回は大目に見てやろう。

「悪いわね?私の分まで持たせちゃって。」

「いいや、これぐらい構わんよ。」

そうこうしている間に、後ろからYがやってきた。

「おっす!
 なに?二人分持たされてんの?」

「丁度いい・・・。
 ついでだ、お前も持て・・・!」

先ほど渡された、U子の荷物をYに渡す。

「え~?しょうがないなぁ・・・。」

「そう言えば、Eはどうした?」

「あいつ、結構登校時間早いよ?
 もう教室に居るんじゃね?」

「くそっ、逃げられたか・・・。」

「なに言ってるのよ、二人とも・・・。
 ちゃんと女性二人ぐらい、エスコートしなさい。」

俺とYは、U子に怒られた。

そして俺は、K子に足の状態を聞くことにした。

「で、やっぱり血を抜いたのか?」

「よく分かったわね!?」
K子は、ビックリした顔で俺を見ている。

「まぁ足首がブス色になり始めたから、内出血してると思ってさ。」

「あなた、お医者さんに向いてるんじゃない?」

「この程度じゃ、医者にはなれないよ・・・。」

「そうかなぁ~?」

「そうそう。」

家業の件もある。
おそらく、医者になることを許してもらえないだろう。
ここは、言葉を濁しておくのが無難だ・・・。

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