プロフィール

野に咲く一輪のタンポポのようにヒッソリ暗躍中!?
じゃ、ランク入りはダメじゃん。
と、今頃気付く大馬鹿者。

徘徊癖がありそこら辺うろつきます、ご注意ください・・・。(気にしないでね~)

投稿画像は『しぃペイントツール』が使用困難のため、市販ソフトを使用中です。

その時気分のイメージ一発屋。
ストレスが限界を超えると、やたらと裸婦に走りますのでご注意ください・・・。

基本、『こらぼ』は全て可にしてます。
ご自由に、いじりまくって下さい。(笑

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2013-11-23 03:50

プール

7月に入り、日差しがだんだん強くなってくる。

期末テストを目前に控えた、ある休み時間。
C子とU子、それにK子の3人が談笑していた。
すると、K子がいきなり口火を切った。

「このところ、暑くなってきたよねぇ。」

俺はギクッとした。
K子・・・おまえ、なに余計な事を話してるんだよ・・・。
どうも雲行きが怪しくなってきそうだ・・・。
俺は内心、焦り始めた。

「ほんとだよねぇ。」
C子がそれに賛同する。

「こう暑くなると、プールに入りたいよねぇ。」
U子が下敷きをうちわ代わりに仰ぎながら話す。

げっ!
やっぱりその話になったか・・・。
トボケられるなら、それに越したことは無い。

そうだ、聞かなかったし見なかったことにしよう!

「俺が聞いたところだと、プール作るの後回しらしいぜ?」
Yが口を挟んでくる。

この野郎、またも余計な話をしてくれる・・・。
知らんぷり、知らんぷり。

「うそっ!?なんで?」
Eが話しに加わってくる。

なに集まってんだよ、こいつら・・・。
そうだ、俺は話に入らなかった。
傍で聞いてるだけだ。

うん、そうだ!
このまま何気ない顔を押し通すことにしよう。

そうそう、知らないフリ、知らないフリ・・・。
が、しかし・・・。

「ねぇ、そうなの?」
突然K子が、俺に代表して聞いてくる。

「へっ!?」
おまえ、それは無いだろ~。
これじゃ、逃げられないじゃないか・・・。
一体全体、何と答弁すればいいんだ?

一度決定してしまったことを変更する訳にいかない。
この際仕方がない、逃げるのを諦めよう。

この時俺は、謝ってしまうのが一番の得策だと判断した。
結果的に責任は、俺にあるのだから・・・。

「はい、その通りでございます。
 わたくしのせいです、ごめんなさい。」
俺はみんなの前で頭を下げた。

「やっぱり、そうなんだぁ~。
 でも、なんで後回しなの?」
更にK子は追及してくる。

「まぁそのぉ~、つまりですな。
 何と申しましょうか・・・、今期の予算が無くてですな・・・。」

「まるで、政治家の答弁みたい。」
U子が突っ込んでくる。

はいはい、どうぞ非難してください。
この事は当然、クラス中に伝わるだろう。
こりゃ、全校生徒に伝わるのも時間の問題だな・・・。

「そっかぁ~。
 予算が無いんじゃ、仕方が無いわよね。」
K子は、意外にあっさりと納得した。

これまでの経緯ややり取りは傍で見ていたし、
K子自身、うすうすは感じ取っていただろうから・・・。

「来期の予算で、プール建設を確約してきたから。
 来年の春以降に、プール建設工事が始まる予定なんだけどね・・・。」

「それじゃ私たち、プールに入れないで卒業じゃない?」
K子は俺の顔を覗きこんでくる。

「う~ん・・・。
 まぁ、そうなるかなぁ・・・。」
俺は頭を掻きながら苦笑いをした。
2013-09-30 00:28

問題合わせ

アチーブ=テストが終わった。
すると一斉に、教室内がザワメキ立つ。

ダメだっただの、ケアレス・ミスをしただの
千差万別の言葉が飛び交う。

そんな中、K子は問題合わせに余念がない。

すると、俺を見て聞いてきた。

「ねぇ。
 この問題、この答えで合ってる?」

「どれどれ?
 うん、オッケーじゃん。」

「よかった~!
 それで、この応用問題なんだけど・・・。」

「それは、ここが関係代名詞で置き換えられるだろ?」

「ああっ。
 それでこの文節が、一緒になるのね?
 ふ~ん、そうかぁ~。」

なんのかんの、K子は俺に色々聞いてくる。
問題合わせを全体的に見て、7~8割がた大丈夫なようだ。

「げっ!
 それじゃオレ、ダメじゃん!」
Yが、いつの間にやら傍に居た。

周りを見渡すと、クラスの1/3が集まっていた。
みんなそれぞれ、出来具合が気になっているようだ。

集まってきた連中からも、質問が飛び交ってくる。

結局、みんなの質問を受ける羽目になってしまった・・・。

「あなたって、本当に人が良いわね?」
K子が苦笑する。

「そうか?」

「うん。
 ふつう、あなたみたいに教えないわよ?」

「そうかぁ~、ダメだな・・・。」

「なにが?」

「どうも、そんな風に人が悪くなれないよ・・・、俺は。」

「良いじゃない。
 あなたらしくて・・・。」

K子は、微笑んでいた。
全国学力試験、通称アチーブ=テスト。
基本問題から応用問題までを網羅した、業者による第三者テストだ。
結果が出るまで、一週間ほどかかる。

成績結果は偏差値として表記され、
全国で自分の順位が、どれくらいかを知るには丁度良いテストだ。

偏差値を参考として、高校を選択することが出来る。
いよいよ、その試験が始まった。

中間試験と期末試験の合間に行われるので、
いささか厄介なのだが・・・。
教室内は慌ただしいが、気にしない。

基本問題を確実に取れれば、ある程度まで点数は稼げるものだ。
応用問題は慣れである。

「大丈夫かなぁ~。」
K子が不安がっている。
女の勝負がかかっているのだから、なおさらだ・・・。

「心配するなよ・・・。
 基本は、しっかりマスターしたろ?」

「でも、心配なのよ。」

「基本問題だけでも、かなり点数稼げるぞ?」

「そうかなぁ~?」

「ほれっ、落ち着け。
 んじゃ、良い事教えてやるよ・・・。」

「えっ?一体なに?」

「それは、解ける問題から始める事。
 1~2分考えて、解けない問題は飛ばしちゃえ。」

「え~っ!?
 そんなんで良いのぉ~?」

「良いの・・・。
 時間が無いから・・・。
 で、余った時間で考える。」

「そっか。」
K子は、落ち着きを取り戻した。

試験は、波に乗れれば非常に楽に出来る。
一番怖いのは、焦って解ける問題も解けなくなることだ。
そして試験が始まった。

問題に一通り目を通す。
楽そうだ、これなら大丈夫だろう。
2013-09-13 01:28

勉強会

俺は結局、経緯が分からぬまま、K子に各教科を教える羽目になった。

どうやら二人は、成績を競っているらしい事までは理解した。
そしてどうやら、S美からK子への挑戦でもあるようだ。

俺がK子に教える以上、K子がS美に負けるはずがない。

・・・と、思うのだが。

こればかりは、本人の理解力に依存される。
見たところ、頭の回転はK子が上だろう。

まず基本を重点に、それを応用する事にした。

まぁ元々、俺は暗記が大嫌いだ。
暗記量など、少ないに越したことはない。
楽が出来るなら、それが一番良い。

そのやり方を今、K子に教えようとしている。
そして問題への応用は、頭の回転速度と経験に依存される。
果たして、どこまで出来るのか?
俺の経験と知識をK子に全て託すつもりで、臨むしかないだろう。

「それじゃあ、良い?
 恥ずかしがらずに、分かるまで聞いて良いから。
 決して中途半端に、分からないままにしない事。
 良いね?」

「ええ、わかったわ。」
K子は、うなずいた。

そして、二人の勉強会が始まった。

すると、それを見ていたEやY、C子やU子達までもが、
我も我もと参加してくるようになっていた。

客観的に見ていると、大概つまづく処は同じような箇所で、
勘違いや理解不足が、おおかたの原因なのだ。

「これはね?
 こうすれば、解けるのよ。」

いつの間にかK子は、
自分が理解し、教えられるところを教えるようになっていた。

「おおっ!
 すげ~っ!!」

「ああっ、そうなのねぇ!」
YやE、C子にU子が驚嘆の声を上げている。

俺は、それを黙って見ていた。

人に教えられるようになれば、
自分の復習にもなり、自信に繋がるものだ。

良い傾向だ・・・。
これなら、S美に勝てるかも知れない・・・。
2013-09-11 02:08

宣戦布告?

俺は放課後、校庭で空を眺めていた。
初夏を感じさせる、青臭い空気と風。
そして、青く高い空が頭上に広がっている。

非常に気持ちが良い。

これから始めなければならない、文化祭の段取り。
地域商店街への配慮。
様々なことが、頭の中を駆け巡る。

そんな気分転換には、もってこいの天気である。

何気なく、ふと昇降口近くに目を向けると、
K子とS美がこちらを見ながら、二人だけで話しをしていた。

どうして、あの二人が会っているのだろうか?
俺は、いささか疑問を感じた。

この二人が会うのは、
保健室に担ぎ込んだ時と、登校途中の二度だけである。
そして俺の知る限りでは、今回が三度目の筈だ・・・。

K子とS美が、二人だけで会っている・・・。
はて・・・?

いつの間に、二人は仲良くなったのだろうか?

などと、自分に都合よく解釈したいが、嫌な予感がする。
今までの経緯からも、決してコチラの都合よくなど、いく筈が無いのだ。

何事も無ければ良いのだが・・・。
だが、悪い予感ほど的中するものである。

翌日、登校するや否や、K子が俺に迫って来た。

「ねぇ!
 わたし、あの子に負けたくないのっ!
 だから、勉強教えてっ!」

「へっ?
 いったい何?
 いきなり・・・。
 俺に分かる様に、説明してくれる?」

「だから絶対、あの女に負けたくないのよっ!!
 いいからあなたは、わたしに勉強教えなさいっ!!
 いいわねっ!?」

「あ?ああっ・・・。」
K子の迫力に押されて、理由も分からず返答してしまった・・・。

あの女とは、S美の事なのか?
だとすればS美はK子に、何らかの宣戦布告でもしたのだろうか?
2013-09-02 00:08

頭痛の種

俺は頭を抱えながら、職員室からクラスに戻ってきた。

「ただいま~っ。
 あ~、あたま痛て~っ。」

自分の席に着くと、疲れがド~ッと出てきた。
精神的プレッシャーが要因である。

「おかえりなさい。
 どうしたのよ?一体。」
K子が気遣いながら話しかけてくる。

「校長直々に、『文化祭の指揮を取れ。』って言い渡されてさぁ~。」

「凄いじゃない!!
 普段、何もしてないんだから、やれば良いじゃない?」

「俺だって、部活動があるんですけど・・・。」

「あら、そうだった?」

「おまえは、鬼ですか?」

「ともかく、ぼ・や・か・な・い!
 しっかりしなさい!!」

「酷いなぁ~。」

「当たり前でしょ?
 それだけ、期待されてるのよ?
 名誉なことじゃない。

 それに、初めての私たちの文化祭よ?
 楽しみだわ!」

「だって本来、生徒会の仕事だぞ?
 これって・・・。」

「新生生徒会は、今年から発足したばかりでしょ?
 いろいろと、教えてあげなさいよ。
 私も、手伝ってあげるから。

 ほ~らっ!」

「はいはい、わかりました。
 しかし本当に、お前は強い女だな?」

「あら、そう?」

そう、だから背中を任せられるのだ。
2013-09-01 02:14

拝命

翌日、職員室の前でM先輩と待ち合わせることにした。
また、お姉さんの邪魔が入らないとも限らない。

それよりも、K子を心配させたくない。
抱きつかれるのは、もうゴメンだ・・・。

「それじゃ、行ってくる。」

「ねぇ?
 保健室に、寄り道しないでね?」

そう、保健室にはS美本人が居る。
K子はやはり、S美を警戒しているようだ。

「寄り道しないから、心配するな。
 俺を信じろ。」

そうして俺は、職員室へ向かった。
すると、すでにM先輩が待っていた。

「おぅ、来たな?
 それじゃあ、行くか・・・。」

「失礼します。」
二人で職員室に入る。

「設備建設の件、結果報告に来ました。」

教頭先生が出迎えてくれた。

「おおっ、君たちか。
 あれからまだ一週間も経っていないのに、
 もう終わったのかね?」

「はい。
 彼の取り仕切りで、全て終了しました。」
先輩が教頭先生に報告する。

「こちらが、その結果と素案です。」
俺は、持参した資料を教頭先生に差し出す。

「やはり、君たちは早いなぁ~。
 校長も、ご覧ください。」

奥に居た校長先生が、笑顔でやってきた。
やはり、校長先生の采配であったようだ。
教頭から受け取った資料を念入りに目を通している。

「なるほど。
 講堂兼体育館の建設を第一に、続いてプール建設の順ですか・・・。
 分かりました。
 早速、この順序で、市の審議にかけましょう。」

「校長。
 年内中に、体育館施設が完成すると良いですな?」

「そうですねぇ。
 年内中には、間に合わせたいですねぇ。
 校庭での卒業式は、やはり厳しいものがありますからね。

 君たちの卒業式には、是非とも間に合わせたいものです。」

そうだ、昨年の卒業式は、整地されていない校庭で行われた。
確か、風の強い日で、苦労させられたのを覚えている。

とりあえず完成すれば、あらゆる催しが滞りなく行われるであろう。

これで、ひと仕事が終わった。
やっと平穏な学生生活を満喫出来る・・・。
と、思っていたのだが・・・。

校長先生が口を開いた。

「こんなに早くプランが出来上がるとは、予想外だったよ。
 さすが君たちだ。
 どうだろうか?
 地域の方々を含めて、文化祭のプランもお願いできないかな?」

えっ?
これで終わりじゃないんですか?

M先輩が、口を開く。
「私は3年ですので、受験に専念させて頂きたいのですが・・・。」

「そうか、そうだったね。
 それでは、まだ2年の君にやってもらえないかな?」

うっ、校長先生自ら指名されてしまった・・・。
断ろうとした矢先、

「彼なら大丈夫ですよ。
 今回の件も、彼がやったものですから。」

え~~~~っ!?
訳も分からないまま、先輩からも後押しされた。

結果、実行委員長を拝命した・・・。

なんて事だ!
俺の平穏は、どこへ消えた!!

「酷いよ、Mちゃん・・・。
 俺も断ろうと思ってたのに・・・。」

「まぁ、そう言うな。
 俺も、手伝えるところは手伝うからさ・・・。
 いい経験になるぞ?」
2013-08-22 00:01

詰問(きつもん)

廊下に出ると、U子は俺の周りを回りだす。

「あ、本当だ・・・。
 女の匂い、してるわぁ。」

「マジかよ?
 全然、気づかなかった・・・。

 だいたい匂いで、相手を特定出来るものなのか?」

「そうよ!
 特に恋する乙女は、敏感なのよ!

 で・・・、あんた。
 本当に、S美ちゃんに会ってたの?」

「会ってない、会ってない。
 断った相手に、わざわざ会いに行くか?普通・・・。」

「じゃ、なんで女の匂いさせてるのよ?」

「S美のお姉さんに、抱きつかれた・・・。」

「え~っ!?
 なんで、抱きつかれたのよ?
 おかしいじゃないの?」

「だ~か~ら~。」
俺はU子に説明した。

まず、S美からの申し出を断ったところ、
後でS美のお姉さんから、俺に文句が来たこと。

そして、S美に断った理由をお姉さんに説明したところ、
逆に、お姉さんに俺が気に入られてしまったらしいこと。

更に悪いことに、お姉さんがM先輩のクラスメイトであったこと。

これらの事をU子に説明した。

「そうかぁ、そりゃ最悪だわぁ~。
 困ったわねぇ。

 三角関係どころか、四角関係かぁ・・・。

 まるで泥沼じゃない?
 こりゃ、あんたがハッキリするしかないんじゃないの?

 もう、K子に告白しちゃいなさいよ。
 きっとK子も待ってるよ?」

「知ってる・・・。
 焦れてると思う・・・。」

「じゃあ、なんで『好き』って言ってあげないのよ?」

「まだ早すぎると思う・・・。

 正直、怖いんだ・・・。
 今の関係を壊すのが・・・。
 俺が、あいつの自由を奪ってしまうんじゃないのか?って・・・。」

「相変わらず、優しいのね?

 でも男は時に、女に対して強引さも必要なんだよ?
 逆に女は、それを待っているんだから・・・。

 よく覚えておきなさい?」

「そういうものなのか?」

「そうよ・・・、そんなものなのよ。

 んじゃ、仕方がない。
 U子さんが、二人の間を取り持ってやろうじゃない!

 私が呼ぶまで、ココに居なさいよ?
 良いわね?」

「わかった・・・。」

U子は教室の中へ戻っていった。
そして、K子と話をしている。

いずれにせよ、もうU子に全てを託す以外、俺には手立てがない。
2013-08-19 00:43

移り香

M先輩との打ち合わせが済み、
4階の3年の教室から、やっと自分の教室に戻ってきた。

「ただいま~っ。」

「あら、お帰りな・・・。
 ん・・・?
 ・・・ちょっと待って。」

俺は、いきなりK子に裾を引っ張られた。
なぜ引っ張られたのか分からず、K子に問いかける。

「なに?どうしたの・・・?」

一体どうしたんだ?K子のやつ・・・。

「女の匂いがするわ・・・。」

「えっ!?」

まさか、さっき抱きつかれた時の匂いなのか?

「ねぇ、あなた・・・。
 いったい・・・、どこへ行ってらしたの?」

K子の口調が、いきなり変わった。
これは、かなり怒っている・・・。

「どうした?どうした?
 ねぇ、浮気?浮気?」
YとEが、何事かと集まってくる。

「こらっ!
 あんたたち!
 余計な邪魔しないの!!」

そこにU子が割り込んで、YとEを静止させてくれた。

そして、K子の追及は続く・・・。

「ねっ?
 わ・た・し・・・、怒らないから。
 正直に話してくださる?」

「それはウソだろ?
 怒らないって、目がすわってるじゃないか・・・。」

更にK子は、言葉を続ける・・・。

「な~に?
 私に言えないところ?」

「だから、3年の教室だって。
 お前だって、出かけるところ見てたろ?」

「それは分からないわよ。
 私の見てないところを回って行ったのかもしれないし・・・。」

「疑り深いなぁ・・・。
 そんな事、する訳ないだろ。
 決して、怒られるような事は、し・て・ま・せ・ん。」

「本当?」

「はい!
 天地神明に誓います!」

「そう・・・。
 嘘だったら許さないからね・・・?」

「だから、嘘ついてないから・・・。」

まさか、移り香が残っているとは、思いもしなかった。
というか、女ってこんなに敏感なのか?
知らなかった・・・。

たかが匂いだけで、こんな窮地に陥るとは・・・。

「許してあげなよ、K子。」

U子がフォローしてくれる。

そうだそうだ、感謝するぞU子。
さすが、俺の幼馴染だ。

だがK子の不信感は、これで治まらなかった・・・。

「だってU子ちゃん。
 間違いなく、これ女の匂いよ?

 しかも、あの女の匂い・・・。

 この人、保健室の女と会ってたんだわ・・・。
 きっと・・・。

 そうに違いないわ!!」

ちょっと待て!
そこまで、匂いを嗅ぎ分けられるものか!?
確かに姉妹だから、似てても当然かも知れないが・・・。
狩猟犬並みの嗅覚だな・・・。

女の怖さを始めて知った・・・。

すると、S美を知っているU子の顔色が変わった。

「えっ!?
 わかった!

 私が事情をキッチリ聴いてくるから、K子はココに居なさい。

 まず、落ち着きなさい!
 いいわね?」

U子はK子をなだめて座らせた。

「ちょっと、あんたはコッチにいらっしゃい・・・。」

俺はU子に連れられて、廊下に出た。
まるで、罪人のように・・・。

YとEは、陰からこちらを伺っている。

おいコラッ!
お前らも、ちょっとは俺をフォローしろよ!
おまえら、パパラッチか!!
2013-08-16 23:57

相談

谷川たちが資料を持ってきたその後、Tも資料を持ってきた。

Tはもともと谷川たちのグループだったが、現在は離反している。
T本人も、谷川には顔を合わせにくいのかも知れない。
だから、すこし間を置いて持ってきたのだろう。

しかし、これで完成である。

「委員会とクラブの集計データー、持ってきたぞ?」

「おっ、ご苦労さん!
 遂に出来たかぁ。
 ありがとう。
 さっき谷川たちも、資料を持ってきてくれたところだよ。」

「そうか。
 で、集計結果なんだけど、
 運動部で意外と体育館ってのが多いんだ。」

「なるほどな・・・。
 たしか谷川の資料でも、体育館ってのが2番目に多かったな。
 分かった、資料を持って相談してくるよ。
 ありがとうな?」

Tから資料を預かり、俺は階段の方へ向かった。

「あら、もう行っちゃうの?」
K子が声をかけてくる。

「ああ、さっさと終わりたいからね?」

「全く、慌ただしい人ね?気を付けなさいよ?」

「おぅ、ちょっと行ってくる・・・。」

俺は3年の教室のある4階まで、階段を駆け上った。
M先輩の居る教室へ急ぐ。
が、しかし・・・。

「やぁ、妹よりも私に会いに来てくれたのかい?
 妹には内緒にしておくからね?
 うれしいなぁ・・・。」

いきなり抱きつかれた・・・。
嘘、先輩と同じクラス?なのか?

「お・・・お姉さん?」

「嫌だなぁ、私を名前で呼んでくれても良いんだぞ?」

「こらこら、そこで何遊んでるの?
 まったく・・・。

 おぅ、悪いな?」

「M先輩・・・。」
地獄に仏である・・・。

「私は遊んでなんかいないぞ?
 年下でも、彼は立派な一人前の男だからな。」

「分かったから、邪魔しない・・・。
 で、出来たのか?例の・・・。」
M先輩が助け舟を出してくれた。

「ええ、資料持ってきました。」

助かった・・・。
これで、やっと本題に入れる。
持参した資料を広げ、最終結論を模索する。

「最終候補、上位3っつに残ったのが、講堂、体育館、プールなんです。
 これでは工期がかかります、いつ完成できるかどうか・・・。」

「じゃ、講堂と体育館を一緒に考えろよ。

 大概、体育館で講演するのなんか当たり前だ。
 それで一つ分の建築費、工期が浮く。
 その分、プールに工期と予算を振り分けられるんじゃないか?」

「なるほど・・・。
 さすがMちゃん。
 あ、ゴメン・・・。」

「良いよ、前みたいな呼び方で。
 俺も先輩なんて呼ばれるの、こそばゆくてな・・・。

 しかし、よくここまでやってくれたよ。
 助かった・・・。
 すべて、任せて正解だったな?

 それじゃ、明日、教頭先生のところへ持っていこう。」

そこへ、お姉さんが口を挟んでくる。
「ねぇ、その前に図書室の書庫は・・・?」

M先輩と俺は声を合わせた。

『却下します!』
2013-08-16 01:08

寝て待った

谷川に依頼してから、4日ほど経った。
そろそろ、出来上がってくる頃だろう。

もし予想通りなら、
講堂、体育館、プールなどの施設関係が挙がってくる筈だ。

おそらく問題は、その建築順序だけになるだろう。
ただ、それは俺の考えであって、実情ではない。

実際のデーターが欲しいのだ。

「谷川たちが、来たわよ?」
K子が知らせに来る。

「おっ?出来上がって来たかな?」

見ると、谷川が教室出入り口で、
仲間を3人ほど連れ、資料を手に立っていた。

「よっ!持ってきたぞ?」

「随分と早かったなぁ。
 さすが谷川だよ・・・、ありがとう。
 おかげで、大助かりだ・・・。

 とりあえず、中に入れよ。」

俺の前の、空いている席に案内する。
そして、渡された資料に目を通す。

大当たりだ、これにTのデーターを合わせれば全て終わる。

おそらくTから挙がってくる要望は、備品程度のモノが主体だろう。
そんなものは、現行の生徒会にでも任せておけばいい。
肝心なのは、谷川が持って来てくれた、この資料なのだ。

「大体、予想してたろ・・・?
 この結果・・・。」

「ん?そんな事無いぞ?」

「いいや、予想してた顔だね、その顔は。
 だから怖いんだよ、おまえ・・・。

 しかも教師からの信頼も厚いし、顔も広いしなぁ・・・。」

「そりゃ、買い被り過ぎだって。
 俺は、そんな凄い人間じゃないって。」

「自分が気付いて無いだけだって!

 大体、全権委任されてんだろ?
 上から信頼されてなけりゃ、出来ね~よ。
 んな事。

 俺には絶対に出来ないね。
 てか、やらせてもらえね~よ。」

「そうか?
 責任、押し付けられたようなもんだぞ?」

「それを飄々とした顔で、こなしちまうんだからなぁ。
 俺らじゃ、到底かなわね~よ。

 みんな、これが俺らのアタマだ、よく覚えとけよ?」
連れてきた仲間に谷川は言った。
 
「やめろって。
 恥ずかしいじゃん・・・。」

俺は、谷川の連れてきた仲間、一人一人に挨拶された。

「じゃ、何かあったら、また呼んでくれ。
 こいつらも、手伝うからさ・・・。」

「ああ、また頼むよ。
 よろしくな。」

谷川たちは、教室を出て行った。

すると、やり取りを隣で見ていたK子は、驚きを隠せずにいた。

「凄い・・・。
 あなたって、学年一位の谷川をも従えちゃうんだね?
 谷川が、あんなになるところ、わたし初めて見たわ・・・。」

「そうなのか?
 俺は、以前の奴は知らないから、何とも言えないけど・・・。」

「そうよ!
 あいつ、絶対に『手伝う』なんて言葉、言わない奴だもの!
 それをあなたに言ったのよ!?

 ・・・・・・・・・・・・やっぱり、あなたって・・・・・・何者なのよ?」

K子は、怪訝そうに俺の顔を覗きこんでくる。

「ば~か、俺は俺だよ。
 心配するな。」

おでこが近いので、軽くデコピンしてやった。
額を抑えながらK子は言う。

「いいもん・・・。
 どうせ私、馬鹿だもん・・・。」

そしてK子はふくれた。
おまえ、可愛すぎるよ・・・。
2013-08-15 01:01

果報は・・・

「ただいま~。」

教室に戻って来るとY達に出迎えられた。

「おかえり~。」

「随分かかったわね?
 みんなもう、食べちゃったわよ?」
K子は、不服そうである。

「あれ?
 そんなに時間かかったのか?

 全然、気づかなかった。

 ごめん、ごめん。
 今、メシかっ込むから・・・。」

「遅かったなぁ~。
 おれら、食い終わっちゃったぞ?」
YとEも、ブチブチと言ってくる。

「で、谷川の件は上手くいったの?」
K子は心配そうに聞いてくる。

「まあね・・・。
 一週間以内に、すべては終わるから・・・。
 おそらく・・・。
 とりあえずのところ、『果報は寝て待て』だよ。」

「あなた・・・。
 よく、あの谷川を説得出来たわね?
 信じられないわ・・・。」

「そうなのか?
 あいつ俺に、一目置いてるみたいだからね・・・。
 意外と楽に交渉出来たよ。」

「えっ、なんで?」

「俺の実力テストの成績、変わらないんだよ?
 奴とたいして・・・。
 だから怖いんじゃないか?
 たぶん・・・。」

「うそっ!
 あなた、学年順位いくつよ!?」

「えっと・・・。
 1~2点差で2位?
 ・・・・・・だったのかな?」

「だって、2位は違う人だって聞いたわよ?」

「そんな事言われてもなぁ・・・。
 俺だって知らないよ。
 去年担任だった、学年主任の先生が言ってたんだから・・・。
 間違いないだろ?」

「ええっ!?
 そうなの~?

 なのにアナタ、なんで谷川たちと、こんなに性格が違うのよぉ~!?」

K子は、俺に迫り寄ってくる。

「んなの、俺に聞くなよ~っ!」

「だって、お兄ちゃん達も成績良くって性格悪いのよ?
 なのにどうしてあなたは、優しくって、成績が良く、性格も良いのよ?

 わたし、絶対にあなたの事、信じられないわっ!」

「だから、俺に聞くな~っ!
 て言うか、おまえは俺を一体どういう基準で見てたのよ!?

 大体、お前の理屈だと、ゴミ以下だな・・・俺。」

なるほど、身内にも居たのか。
だからK子の思考が、≪頭が良い=人が悪い≫なんだ・・・。
妙に納得した。
2013-08-14 19:16

交渉

4時限目終了のチャイムが鳴った。
昼休みである。
みんな昼食の準備をしているが、俺は席を立ち教室を出ようとする。

するとK子が、驚いたようにこちらを向く。

「なに?
 昼食も取らずに行っちゃうの?」

「谷川の奴、居なくなるとも限らないからな。
 メシ食ってるところを抑えてくる。」

「ねっ?
 ならもう一度、生徒会に復帰したら?」

「なんで?」

「だって、今のあなた、生き生きしてるもの・・・。
 それに今の方が、凛々しくてカッコいいわよ?」

「そうか?
 ありがと・・・。
 おまえだけが、見ていてくれればいいよ。
 じゃ、行ってくる。」

「うん、いってらしゃい。」
そうK子は、言葉を告げた。

谷川のいる教室を覗く。
いたいた、昼食の準備をしている。
近くの生徒を捕まえた。

「谷川、呼んでくれる?」

そして、その生徒が谷川を連れてくる。

「よっ、しばらくじゃん!
 教頭先生直属なんだって?」

「耳早いな?
 やっぱり谷川だよ。
 さすがだ・・・。」

「で、何よ・・・?
 直接出向いてくるなんて、俺に何かさせたいんだろ?」

「そうだ。
 これは、お前にしかできない、重要な仕事なんだ。」

「またまた、おだてちゃってぇ~。
 お前だって、頭良いじゃん?
 自分で、チャッチャッとやっちゃえよ~。」

「俺一人ではダメなんだ、是非ともお前の助けがいる。」

「分かったよ。
 で、何すればいいんだ?」

概略を谷川に話す。
現在の学校で、早急に設置しなければならない施設及び設備は何か?
それを2~3点上げてもらい、集計してもらう。

ただし、口外無用であること。
更に対象者は、成績中位~上位の者であること。

ある意味、成績対象で差別がある。
だが、訳の分からない要望を出されても困るのだ。
時間がないのだから・・・。

「おれらにピッタリじゃん。
 んじゃ、仲間集めて集計しちゃうわ。
 出来たら、そっち持ってく。
 それでいいか?」

「おう、期待してるぞ。」
2013-08-14 16:13

始動

さて、どうしたら楽に、早く終わらせることが出来るのか?
まず、正確なデーターを集めたい。
しかも内密に・・・。

オープンにすると厄介だ。
おそらく、あらゆる役委員クラブ員たちが、我も我もと殺到してくるだろう。
パニックは避けたい。

まずはTと、打ち合わせよう・・・。
登校すると、Tのクラスに向かった。
Tに概略を説明する。

「昨日、M先輩から全権委任を貰った。
 簡単に、手っ取り早く終わらせる・・・。

 まず、各役員長とクラブ部長に、要望を紙に書いてもらって集める。
 その中から、優先順位を付けて行く。」

「一般生徒からのはどうする?」

「谷川を引っ張り込む。」

「あいつを?
 俺は苦手なんだよ・・・、あいつ。」

「谷川を好評価する奴が居ると思うか?
 だが、人は悪いが頭は使える。」

「なるほど・・・。」

「そっちは俺がやるから、役員長とクラブ部長を頼むよ。」

「おぅ、任せろ!」

さすが体育会系のTだ、頼もしいぞ。
昼休みには、谷川の所に行かなければならないな。

さて、自分のクラスへ向かうか・・・。

「おはよう。
 今日は、随分遅いじゃない?」
K子が声をかけてくる。

「おっす。
 ちょっと用事があってね・・・。」

「昨日は、なんだったの?」

「箱(校舎)は出来たから、中身を作れってさ・・・。」

「えっ?
 なんか大変そうね?」
K子はキョトンとした顔である。

「そう、だから簡単に出来て、サボるために考えてる・・・。」

「何よ、それって・・・。
 まったく、おかしな人ね・・・?」
K子は苦笑した。

「なぁ?
 この学校、設備で何が足りない?
 いや、何が欲しい?」

「いやねぇ~。
 無さ過ぎて、欲しいもの有り過ぎるわよ。」

「そうかぁ~。」
そう、これが一般的な回答だろう。
これでは、的が絞り込めないのだ。

「やっぱり、谷川を使うか・・・。」

「えっ?
 谷川のところに行くの?」

「ああ、奴の力が必要だ・・・。
 昼休みにでも、行ってくるよ。」
2013-08-14 11:12

先輩

お姉さんの言葉が気になった。

「M先輩が大変って?」

「彼の家は、サラリーマン家庭だからね・・・。
 親に負担のかからない、県立校を受けるらしいよ?」

その話を聞き、俺はM先輩を追いかけた。

「先輩!」

M先輩はO小学校からの付き合いで、家も近所の幼馴染である。
なおかつ昨年は、
共にこの新設T中学校の生徒会副会長を務めた間柄でもある。
互いに気心は知れている。

人柄も良く、温厚で頭も良い先輩であった。

「よぅ、元気か?」

「この時期に、大変ですね?」

「ああっ。
 俺は県立U高校、受からなきゃならんからなぁ・・・。
 まったく、時間が無いよ・・・。」

県立U高校は、県下トップクラスの高校で、
国立T大学には、最短の高校でもある。

確かに時間的な余裕は、ギリギリなのかも知れない。

「大体の所は任せるから、さっさと片づけてくれるか?」

「じゃ、T達と簡単に済ませちゃいますね?」

「ああ、頼むわ・・・。
 最終的には、俺が責任取るからさ・・・。」
2013-08-13 00:47

命令

教頭先生が、話を始めた。

「君たちも知っている通り、この中学校は新設校です。
 器(校舎)は出来ましたが、中身(設備)が無い状態です。

 毎年、市から予算は出ますが、その予算は限られています。
 したがって、順番に設備を整えなければならないのですが、
 何から揃えればよいのかを君たちに検討してもらいたい。」

なるほど、もう一度『縁の下の力持ち』になれと・・・。
しかも決定権は、生徒に委ねる・・・と。

つまり表面上、生徒の自主性を引っ張り出したい訳だ・・・。

「しかし、それくらいの事であれば、
 現行の生徒会にでも出来るのでは?」

M先輩が発言する。
そう、もう高校受験に専念したいだろう。

「残念だが、君たち程優秀ではないのだ。
 おそらく、生徒会運営に手が一杯だろう。」

ああ、だからS美のお姉さんは、
俺たちが復帰しない事を残念がっていたのか・・・。
いまやっと、納得できた。

だが、そんなにややこしく組織を作ってはいなかった筈だが・・・?
現行生徒会は、いったい何をしているんだ。

更にM先輩は食い下がる。

「では、アンケート調査では?」

「アンケートでは、最優先すべき物事を見失う恐れがある。
 だから優秀な君たちに、お願いしたいのだ。」

これはもう、諦めるしかない。
事実上の命令だ・・・。

M先輩は、困り顔で図書室を出て行った。
我々も、それに続いた。

出ようとする間際、S美のお姉さんに出くわした。

「やぁ、なかなか大変そうだね?」

S美のお姉さんは、図書委員だった。

「お姉さん?」

「ん~、いいねぇ。
 もう一度、呼んでおくれよ。」

「お姉さん、妹さんに何を話したんですか?」

「別に?
 『あれは、なかなかの男だぞ。』って言っただけだが?」

「それじゃ、火に油じゃないですか?」

「君が言うように、あの子の人生だ。
 思うようにさせようと思ってね?
 私も、いつまでもかばってやれないよ。」

「それじゃ、意味ないでしょ?
 説得はどうしたんですか?説得は・・・。」

「妹がダメなら、私が嫁に行こうか?
 あっ、それじゃ君に『お姉さん』って呼ばれなくなるな・・・。
 そうか、私が君を『旦那様』と呼ばなくてはならないんだ・・・。
 それも良いなぁ。」

「いい加減にしてくださいよ。
 ああ、M先輩じゃないけど、頭抱えたくなってきた・・・。」

「ああ、Mね。
 あいつも大変だぁ・・・。」
2013-08-12 01:35

直轄部隊

放課後、図書室へ向かう準備をする。
カバンに荷物を詰め込み、無造作に上着を羽織った。

「ちょっと待って・・・。」

K子に呼び止められた。

「ん?なに?」

「ほら、ちゃんとしなさい。
 他の人たちも来るんでしょ?」

「あ?ああっ・・・。」

「キチンと、しとかないと・・・。
 みんなから、笑われるわよ?」

と言いながら、Yシャツの襟を正し、シワを伸ばしてくれる。

あれ?なんだろう。
いきなり、どうしちゃったんだ?

K子に、お礼を言っておく。

「ありがとう。」

「これで良いわ。
 気を付けて行ってらっしゃい!」

更に、笑顔でK子が送り出してくれる。

「じゃ、行ってくるよ・・・。」

K子に見送られながら、図書室へ向かう。

おい、新婚夫婦かよ?
このシチュエーションは・・・。

思わず周りを見回して、警戒してしまった・・・。
第三者から見てみれば、冷やかしのターゲットだ。
運よく、冷やかしそうな輩はいなかった。

図書室に入ると、顔見知りのメンバーが揃っている。
昨年、書記を務めたTが俺の隣に座る。

「よっ、しばらく!」

「おぅ!
 ところで、なんなんだ?
 この集まりは・・・。」

「よく分からんが・・・、
 現行生徒会と切り離して活動するらしいぞ?」

切り離して?
別働隊ってことなのか?

すると、教頭先生が入室してきた。

入って来るなり、一声を発する。

「教頭の私が、君たちの直接顧問となります。」

普通、学年主任等が生徒会顧問に就くものだが、
それを飛び越えて、教頭先生が直接顧問?

案件としては、現行生徒会の問題レベルよりも重要視してると・・・。

という事は、校長先生が直接指揮してるって事なのか?
いったい、何を始めようとしてるのだろう・・・。
いや我々に、何をやらせるつもりなのだろうか・・・?
2013-08-08 23:26

再招集

K子は『松葉づえ』が必要無くなり、
普段通りの、いつもの明るいK子に戻っていた。

「おはよ~!」

「おはよう。
 すっかり元通りだな?」

「も~凄~い、不便だった。
 身体が不自由なのって、大変なのね?

 やっぱり、健康が一番だわ!」

「健康の、ありがたみが判った?」

「ええ、身に染みて・・・。」

とりあえずK子の機嫌は、今のところ良いようだ・・・。
先日、かなりの不満を俺にぶちまけたのだから、
元に戻ってもらわねば困る・・・。

結局のところ、確証が無い事が彼女を不安にさせているのか?
やはり俺は、告白するべきなのか?
だが告白したら、今の関係を保つことができるのか?
と、余計な考えが頭の中を駆け巡る。

そんな中、K子が突然、前触れもなく聞いてくる。

「あのさ・・・。
 うちのクラスって、凄く男女の仲が良いよね?

 なんでだろう?」

「なんだよ、いきなり・・・。
 全く、藪から棒だなぁ・・・。」

「だって、気になるじゃない?

 他のどのクラスよりも仲が良いんだよ?
 このクラス・・・。

 なんか、不思議だよねぇ・・・。」

「そんなに仲が良いのか?
 このクラス・・・。」

「そうよ?
 ダントツに・・・。

 ねぇねぇ、どうしてだろう?」

「・・・・・・・・・分からないよ、そんな事。」

それは『二人が居るからだよ。』と言いたいところであるが、
イコール『俺がK子を愛しているから。』とも取れる発言だ。
『分からない。』と、誤魔化しておく事にした。

「へ~、あなたでも分からない事があるんだぁ。」

K子は、鬼の首を取ったかの様にニコニコしている。
初めて俺を負かしたような、満足そうな笑顔であった。

以後、俺を困らせる為、たびたび同じ質問をしてくるようになるとは、
まるで思いもしたかったが・・・。

そんな折、校内放送が響き渡る。

”前生徒会役員は、本日放課後、図書室へ集合してください。
 繰り返します。
 前生徒会役員は、本日放課後、図書室へ集合してください。”

「あれ?
 これって、あなたの事でしょ?」

「そうだよなぁ・・・、たぶん。」

「なんだろうね?」

「ああ・・・。
 一体、なんだろう?」
2013-08-04 23:51

犬も食わず

「どぉ?夫婦喧嘩、終わった?」
これはU子の声だ。

「終わったみたいだよ?」
Eの声もする。

教室のドア陰から、ドヤドヤとY、E、U子、C子たちが入ってくる。

「なに皆して、そこで見てるのよ!
 恥ずかしいじゃない!
 もぅ、酷いなぁ。」

「だって、入るに入れないんだもの。」
と、U子が話す。

「ねぇ?」
C子が相槌を打つ。

「そうそう、仕方ないよね?」
Yが手を広げて、あきれた顔をしている。

「で、解決したの?」
と、Eが聞いてくる。

「なんか、馬鹿らしくなっちゃった。
 この人ったら、ちっとも本気じゃないんだもん。
 必死に喧嘩してる私の方が、まるで子供みたいだわ。」

「そうだな、十分可愛かったぞ?
 そのフクレ顔・・・。」

「ばかっ!」
2013-08-03 20:25

痴話喧嘩

教室に入るのが、なんとなく恐い。
血の雨が降りそうな、嫌な感覚に満ち溢れている。

廊下でU子が待っていてくれた。

「いまK子、ご機嫌ナナメだから。
 気を付けて入った方がいいわよ?」

「当然だよな・・・。
 分かった、ありがとう。」

目の前であんな場面を見せられたら、
謝っても、そう簡単に許してくれないだろう。

それならば下手に刺激せず、普段通りに席へ着くしかないな・・・。

「おっす。」

「あら?
 隣のかたは、ド・ナ・タ・だったかしら?」

「お~い、K子さ~ん。」

「あらやだ、私の知らない人だわ。」

「あのね?
 それは、無いんじゃない?」

「気軽に・ワ・タ・ク・シ・に、話しかけないで・く・だ・さ・る・?」

「おいおい・・・。
 なんか、言葉が刺々しいぞ?」

「わたくし、知らない人には返事をするなって、親から教わってますの。」

「俺に一体、どうしろって言うの?」

「知らないわよっ!!
 さっさと、あの女のところへでも行っちゃえばっ!?」

「そりゃ無いだろ~。」

「もう、うるさい!」

「K子さん?」

「・・・・・・。」

「K子ちゃん?」

「・・・・・・。」

「やっほ~。」

「・・・・・・。」

「お~い。」

「・・・・・・。」

「K子~。」

「・・・・・・。」

「もう、どうすりゃ良いんだよ・・・。」

「じゃ、告白してよ!」

「・・・・・・・・・嫌だ。」

「なんでよ!?」

「おまえ・・・俺の気持ちぐらい、判ってるだろ?」

「そんなの、言ってくれなきゃ判らないわよ!」

「わかった、そのうちに言う。」

「いま、言いなさいよ!」

「だから、待ってろって・・・。」

「言わなきゃ、私も認めないからね?」

「いま言ったら最後、この先ず~っと、お前の尻に敷かれるだろうが。」

「・・・・・・ぷっ。」

そして、いきなりK子は笑い始めた。

「もしかして、それを今まで気にしてたの?」

「悪いか?」

「馬鹿ね・・・。
 でも、絶対に言わせて見せるからね?
 その時は、私の勝ちよ?」

本音を言ってしまえば、
『愛してる』などと言ったら、
K子を縛ってしまいそうで怖いのだ。

いまから、K子の恋愛の自由を俺が束縛して良い訳がない。
まだ、互いに中学生なのだから・・・。

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