プロフィール

野に咲く一輪のタンポポのようにヒッソリ暗躍中!?
じゃ、ランク入りはダメじゃん。
と、今頃気付く大馬鹿者。

徘徊癖がありそこら辺うろつきます、ご注意ください・・・。(気にしないでね~)

投稿画像は『しぃペイントツール』が使用困難のため、市販ソフトを使用中です。

その時気分のイメージ一発屋。
ストレスが限界を超えると、やたらと裸婦に走りますのでご注意ください・・・。

基本、『こらぼ』は全て可にしてます。
ご自由に、いじりまくって下さい。(笑

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2013-08-03 19:27

晴れ渡った朝空の下、いつものごとく集団登校最中である。
K子がウキウキしている。
何やら、良いことがあったらしい。

「じゃ~ん!
 発表で~す!!

 みんなが荷物持ってくれたりして、足の負担が少なかったから、
 明日あたりから『松葉づえ』いらなくなるみたいよ?」

「そりゃよかったな~。」
これで集団登下校も必要なくなりそうだ。
何やら、寂しいような気がしないでもない。

「やっと自分の足で歩けるね?」

「うん、U子ちゃんのおかげだよ~。」

「これもオレラのおかげだぞ~?
 感謝しろよ~?」

Yが話しをしている背後から、S美が割り込んできた。

「ちょっと、ゴメンなさい。
 しばらくの間、この人・・・借りるわね?」

と言いながら、S美は俺の腕を引っ張る。

「うわっ!ちょっと待って・・・!
 Y、荷物を頼む!」

俺は持たされている荷物をYにすべて預けて先に行かせた。
S美は普段と違い、かなり慌てている。

「どうしたの?いったい・・・。」

「昨日あなたに、姉が余計なことして・・・、ごめんなさい。」

「ああっ、そんな事か・・・。
 気にしてないから、もう心配するなよ。
 かえって、いまでも仲がいい姉妹で安心した。」

「そう言ってくれて、うれしいわ。」

「しかし・・・お姉さん、相変わらずだな?」

「でしょ?」

「受験だろうが何だろうが、やっぱり妹が一番可愛いんだね?
 あんなお姉さんが居て、君は幸せだよ・・・。」

「そう・・・。
 だから、もう一つの幸せも掴みとるの。」

「えっ!?」

「お願い!
 私を見ていてね?」
 
「まった!
 俺は、そんな真剣になるような男じゃないぞ?
 それにまだ、中学生なんだぞ?俺たち・・・。」

「でもあなたは、十分に大人よ?考え方が。」

ちょっと、お姉さん。
妹さんに、何を言ったの?
これじゃ、火に油を注いでますよ・・・。
2013-08-03 01:51

帰りのホームルーム少し前、U子が俺に駆け寄ってきた。
K子が居ないのを見計らって、耳元に話しかけてくる。

「あのね?
 いま、S美ちゃんのお姉さんが呼んでるんだけど・・・どうする?」

U子は同じO小学校出身のS美をよく知っている。
当然、S美の姉のことも知っていた。

大体、察しはついている。
S美姉妹はとても仲が良いので、予感はしていた。
おそらく、保健室での件だろう・・・。

「分かった、いま行くよ・・・。」

廊下に出てみると、S美の姉が待っていた。

「やぁ、しばらくぶりだね?
 もう生徒会に復帰はしないのかい?」

「お久しぶりです。
 もう基本が出来たので、私は必要ないでしょう。」

「そうか、残念だな・・・。
 後で少し、付き合ってもらえないか?」

「わかりました。」

「じゃ、私は先に校門前で待っているから。」

「何かあったの?」
U子がこそこそと聞きに来る。

「さぁ?分からないよ。
 先にK子を連れて帰ってくれるか?」

「うん、いいよ。」

あまりK子たちに心配をかけたくない。
これは、俺の問題だ・・・。

ホームルームが終わり、クラスメイト達が散っていく。

「じゃあ、U子ちゃん達と先に帰るね?」
女の勘なのか、K子は怪訝そうに俺を見た。

「ああ・・・。
 十分、気を付けるんだぞ?」

俺はK子たちを見送ってから、校門前に向かった。
そこにはS美のお姉さんが、既に待っていた。

S美の姉は男勝りで、絶えず優しい妹をかばっていた。
つまりS美をいじめた奴は、お姉さんにいじめ返されるのである。

ある意味、俺はS美を泣かせた。
当然の成り行きだろう。

「お待たせしました。」

「まぁ、歩きながら話そうか・・・。

 実は、いつぞやの晩に妹が部屋で泣いていてね。
 以来、元気もないんだ。

 事情を聴けば、君が妹を振ったらしいじゃないか。」

「ええ、そうなりますね・・・。」

「否定はしないんだな?
 なぜ妹を悲しませたんだい?」

「悲しませようとは思っていませんでした。
 しかし、結果的に悲しませてしまった。
 だからと言って、お姉さんに謝罪はしません。」

「なぜ?」

「これは私と妹さんの問題で、
 お姉さんが関わる問題ではないからです。」

「・・・・・・・。」

「正直、妹さんは気丈に振舞ってはいますが、根が優しすぎるんですよ。」

「なら、それで良いじゃないか?
 付き合いなさいよ、妹と。」

「それでは駄目なんです・・・、私の場合・・・。
 私の家は十数代続く旧家で、しかも総本家です。

 そして私は、総本家の当主になる人間です。
 当然、親類縁者が多いですから、
 それらを束ねていかねばなりません。」

「君の家は、そんな家柄なのかい?」

「そうです。
 ですから私は、周囲からの重圧に耐え、
 私と共に、一族を統括できる女性を選ばなければならないのです。」

「そこまで考えているのかい?
 しかしそれは、時代錯誤じゃ・・・。」

「でも、実際にあるんですよ。
 そういう世界が・・・。
 そして私は、そういう家に生まれ、育ってきたんです。

 真の強さがなければ・・・、優しさだけでは潰されてしまう。
 場合によっては、非情さも必要な世界なんです。」

「凄いな・・・、君は・・・。
 強い男だ・・・。」

「だから、仮に妹さんを迎え入れたとしても、彼女では自滅してしまう。
 そんな残酷なことは、私には到底出来ないのです。

 過去に、少しでも好意を抱いた相手でもあれば、なおさら・・・。」

「そうか、君は女性の事を真剣に考える、本物の大人の男なんだね?
 惚れた腫れたのぬかす、他のチャライ男達と全く違うよ。

 さすが私の妹だ。
 男を見る目は間違いなかったな・・・。

 私も君に、惚れてしまいそうだよ。
 君みたいな男と一緒になれる女は幸せだな?」

「褒めていただいて、ありがとうございます。」

「分かった。
 私からも妹を説得してみるよ。

 でも残念だな・・・。
 私は君みたいな男には、ぜひ義弟になって欲しかったよ・・・。」
2013-08-01 02:47

早朝

昨日は、U子の言葉に甘えてはみたものの、やはり気がかりである。
途中、二人に出会うのではないかと、早めに家を出る事にした。

案の定、目の前を松葉づえをつくK子と付き添いのU子が
ゆっくり二人そろって歩いていた。

「おっす!お二人さん!」

「あら、おはよう。
 随分と早いわね?」
と、K子が振り返る。

「ああ、二人が心配でな・・・。
 家を早めに出てきた。

 U子ばかりに苦労させられないだろ?
 荷物持つよ・・・。」

「あら、丁度いいわ・・・。
 U子ちゃんも持ってもらえば?」

「そんな、悪いわよ・・・。」

「良いから、良いから。」
K子は、U子の荷物も渡してくる。

「おいおい、二人分かよ~。」

「そっ、文句言わないの!
 ほら、あ・な・た・頑張って!」

「ほいほい。」

これはいかん・・・。
K子の奴、俺を尻に敷き始めた・・・。
まぁ怪我人だ、今回は大目に見てやろう。

「悪いわね?私の分まで持たせちゃって。」

「いいや、これぐらい構わんよ。」

そうこうしている間に、後ろからYがやってきた。

「おっす!
 なに?二人分持たされてんの?」

「丁度いい・・・。
 ついでだ、お前も持て・・・!」

先ほど渡された、U子の荷物をYに渡す。

「え~?しょうがないなぁ・・・。」

「そう言えば、Eはどうした?」

「あいつ、結構登校時間早いよ?
 もう教室に居るんじゃね?」

「くそっ、逃げられたか・・・。」

「なに言ってるのよ、二人とも・・・。
 ちゃんと女性二人ぐらい、エスコートしなさい。」

俺とYは、U子に怒られた。

そして俺は、K子に足の状態を聞くことにした。

「で、やっぱり血を抜いたのか?」

「よく分かったわね!?」
K子は、ビックリした顔で俺を見ている。

「まぁ足首がブス色になり始めたから、内出血してると思ってさ。」

「あなた、お医者さんに向いてるんじゃない?」

「この程度じゃ、医者にはなれないよ・・・。」

「そうかなぁ~?」

「そうそう。」

家業の件もある。
おそらく、医者になることを許してもらえないだろう。
ここは、言葉を濁しておくのが無難だ・・・。
2013-07-27 20:35

拒絶

放課後、下校時刻である。
K子は松葉づえを使いながら、カバンを持とうとする。
大変そうで、見ていられない。
思わず手を貸してしまう。

「それじゃ、荷物持つぞ?」
俺はK子のカバンを持ってやる。

「あっ!
 ・・・ありがとう。」

そしてU子が、K 子の前をサポートしながら歩いていく。

「ほらK子、階段だよ?
 大丈夫?気を付けてね?」

階段の昇降も問題だな・・・。

「また、抱っこしようか?」
俺は半分その気で、K子に声をかけた。

「もうっ、ばかっ!」

K子は、保健室に担ぎ込まれた事を思い出したのか、
顔が真っ赤になった・・・。

「大丈夫だよ・・・これくらい・・・。」

まったく、この意地っ張りめ・・・。
でもその性格が、意外と可愛いく思ってしまう。

下駄箱でU子が靴を用意する。

「はい、靴。」

「U子ちゃん、ありがとう。」

「んじゃこのまま、家まで送ってくぞ?」

「だめっ!
 それだけは絶対にダメッ!!
 あなただけは絶対に・・・。」

いきなりK子は松葉づえを振り払い、
俺にしがみついて来た・・・。

「えっ?なんで?」

「ウチの親、厳しいのよ。
 特に男女関係には・・・カンが鋭くて。
 私も親の前で、あなたにウカツなこと出来ないのよ・・・。」

「なるほどな、俺は可愛い娘をたぶらかす『悪い虫』ってところか・・・。
 こりゃ、害虫駆除されそうだ。」

「あなたってば、なに呑気なこと言ってるのよ。
 私たちにとって重要なことよ?
 お願いだから、私の言う事聞いて!」

K子は必至で懇願してくる。
これは聞いてやらねばなるまい・・・。

「えっ!?
 俺は大丈夫なの?」
Yが抗議するかのように口を挟んでくる。

「あんたは、どうでもいいからね。」
K子は即答する。

「ひで~っ!」
Yはその場でいじけだした・・・。
EがYの肩を叩きながら慰めている。

「俺だと・・・、マズイわけだ・・・?」
改めて、K子に確認を取る。

「そう・・・。
 あなただと、たぶん両親が警戒するわ・・・。
 いいえ、絶対に・・・。」

「はぁ?
 なんで俺が警戒される?」

非常に理解に苦しむ・・・。

「だって、あなたって優しくて、大人なんだもの・・・。
 それに落ち着き過ぎてるのよ、同年代の男子より。
 だから絶対、あなたを勘ぐってくるわ。
 私の両親に反対されたら、後で私たちが困るのよ?」

「どうせオイラはガキですよ~。」
Eに慰められながら、Yは完全にいじけてフクレだした・・・。

「そういうところが、あんたはガキなのよ。」
K子は構わず追い打ちをかけた・・・。
なにもそこまで・・・。
やっぱりキツイ性格してるよ、お前は・・・。

「しかし困ったなぁ・・・。」
K子の足が完治するまで、負担を軽くする方法はいったい・・・。

「それじゃ、私がしばらくK子を送り迎えしようか?
 私だったら、問題ないでしょ?」
U子が申し出てくれた。

「そんなのいいわよ。
 だって、U子ちゃんが大変じゃない。」

「そんなことないよ?
 ちょっと早く、家を出るだけだから。」

「ごめんね?ウチだけ逆方向で・・・。」
C子が申し訳なさそうにしている。

「C子ちゃん、大丈夫だから心配しないで?」
U子はC子を気遣った。

「じゃ、U子には迷惑かけるけど、K子のことをよろしく頼むよ。」
俺は、U子に頭を下げた。

「このU子さんに、任せなさい!」

おおっ、なんと頼もしい。
素晴らしい幼馴染でよかったと、感激してしまった。

U子は俺からK子のカバンを取ると、K子に声をかけた。

「それじゃK子、行こうか?」
2013-07-27 15:58

復活

結果的に、K子は二日休んだ。
そして三日目の朝・・・。

「おっはよ~!」

教室内を聞きなれた声が響き渡った。
見ると、松葉づえをついたK子が入ってきた。

U子とC子は、K子に跳びつかんばかりに駆け寄った。

U子が、痛々しそうなK子の恰好を見ながら言う。

「K子ってば・・・!
 大丈夫!?
 もう一日ぐらい、休んでれば良かったのに・・・。」

「なんかね、いたたまれなくて出て来ちゃった・・・。」
と言いながら、K子は自分の席へ座った。

「おまえ・・・、大丈夫か!?」
俺は、K子に問いかける。

「うん、全治一週間ぐらい・・・だって。」

それを聞いたU子がホッとした顔をする。
「でも、元気そうで安心したわ。」

C子も安心したようだ。
「本当によかったねぇ・・・。」

「U子ちゃん、C子ちゃん、心配してくれてありがとうね。」

「まったく・・・。
 あまり心配させるなよ・・・。」

「ごめんね?」

「お前は女なんだから、身体の怪我だけは気を付けてろよ・・・。」

「えへへへ・・・。
 分かった。」

YやE、U子にC子が俺たちの周りを取り巻いている。

「ほら・・・。」

俺はK子に挨拶を促す。

「そだね・・・。
 皆様、大変お世話になりました。」

座ったままではあるが、K子は皆に頭を下げた。
2013-07-20 01:27

意地

S美はハンカチで涙をふき取ると、うるんだ瞳で聞いてきた。

「ねぇ?
 教えて貰ってもいいかしら?

 あの女・・・。
 いいえ・・・、彼女のどこに引かれたの?」

「そうだなぁ・・・。
 簡単に言ってしまえば・・・。
 コイツになら、俺の背中を任せられる・・・と思った。」

S美はハッとした表情をした。

「そうなんだ・・・。
 凄いわね・・・、彼女・・・。
 
 そこまで、あなたに言わせるなんて・・・。
 嫉妬しちゃうわ・・・。」

そう言われれば、そうだ・・・。
背中を任せられる程、信頼した女など今までいなかった。
このS美ですら、信頼の域にまでは無い。
 
「で・・・、告白したの?」

「いいや・・・、してない。」
毛頭、告白などするつもりは無い。

「どうして?」

「言ったら、あいつに負けた気がするからなぁ・・・。」

もし『好きだ。』『愛してる。』などの類の言葉を言ってしまったなら、
俺はK子に一生頭が上がらないだろう。

つまり、俺の生命与奪権はK子が握ってしまう。
何としても、それだけは避けたい。

「なに?それ?
 相変わらず、変なところで意地を張るのね?」

「悪かったなぁ。
 まだ、ガキだからな・・・。
 笑ってくれてもいいぞ?」

とりあえず、これは男としてのプライドでもある。
たとえ笑われようと、通さなくてはならない。

まぁ、本当の理由は別にあるのだが・・・。

「笑わないわよ。
 ・・・らしいわね。」

と言いつつ、やっぱりS美はクスクス笑った。
でもいいさ・・・。
やはりS美に・・・いや、女に涙は似合わない。
 
「そっか・・・。
 まだ・・・、なんだ・・・。」
ポツリとS美はつぶやいた。
2013-07-18 01:48

カス

「あの頃と違って、もう泣いてはいないね?」

「ええ、幸せが逃げちゃうから・・・。
 もう泣かないわ・・・。」

「そうか、君は強くなったな・・・。」

「じゃないと、あなたに嫌われちゃうもの・・・。

 あはっ、なに言ってるんだろう・・・わたし。
 なんだか私、あなたと一緒にいて舞い上がっちゃってるみたい・・・。」

「そうか・・・。
 俺は逆に、君から嫌われてると思っていたから戸惑っているよ。」

「嫌いよ・・・。
 大っ嫌い・・・。

 だってアナタ、わたしを見てくれないんだもの。
 悔しかった・・・。

 わたし、あなたの事、ずっと見てたのよ?
 気付かなかった?」

「正直言えば、なんとなく気付いてた。
 でも、気付かないフリをしてた。」

「ねえ?
 どうして居なくなったの?
 私はあなたに・・・、傍にいてほしかった・・・。

 なぜあなたは、私から離れていったの?
 なぜ私の前から姿を消したの?

 私は、あなたのために強くなったのに・・・。」

「君は、自立できる女性に生まれ変わったんだよ?
 泣き虫だった頃の君とは、全く違うんだ・・・。
 その時に俺は、君に必要でなくなったんだ・・・。」

「だから、居なくなったと言うの?

 なのにアナタは突然、わたしの前に現れた・・・。
 あの女を抱きかかえて・・・。

 どうして、あの女なの?
 どうして、わたしじゃダメなの?」

「あいつは・・・。」

「あの女の事は『あいつ』とか『コイツ』なのに・・・、
 私の事は『君』と呼ぶのね・・・?
 
 まるで・・・、線を引かれてるみたいだわ・・・。
 あなたって、酷い人ね・・・。」

「ごめん、そんなつもりじゃなかった・・・。」

「・・・私の方こそ、ごめんなさい。
 つい、取り乱してしまって・・・。
 あなたを苦しめるつもりは無かったのよ・・・。

 あれ・・・?
 へんだなぁ・・・。
 なんで?・・・だろう・・・。
 おかしいわね?」

「とうとう俺も、カスの仲間入りだな・・・。
 君を泣かせてしまった・・・。」

「そうよ・・・。
 私にとって、誰にも自慢できる、最高のカスだわ!」

「だが俺は、君のその涙を拭いてやれない・・・。
 すまない・・・。」

「馬鹿にしないでよ。
 私は自立した女よ?
 ハンカチくらい持ってるわ!」
2013-07-17 01:10

誘惑

保健室の窓からそよいでくる風は、とっても心地よい。
しかも、抜けるような青空が気分を晴れやかにしてくれる。
今までの空虚感も皆、吹き飛ばしてくれるようだ。

「なるほど居心地の良い場所だ・・・。
 君がココを気に入っている訳がわかるよ。」

おそらくココは、S美にとって本当の自分でいられる、
唯一くつろげる場所なのではないだろうか?

そう言えば、S美には姉がいた。
たしか、二人姉妹だった筈だ・・・。

「ところで、お姉さんは元気?」

たしかS美と年子だから、一級上の先輩になる筈・・・。

「ええ、とっても元気よ。
 受験間近だから、必死で頑張ってるわ。」

「そうか・・・。
 そう言えば来年、俺たちも受験なんだなぁ~。
 君は看護婦になるのが夢だったっけ?」

「そんな事、よく覚えているわね?」

「覚えてるさ、心配してたからね。」

「・・・・・・。」

S美が保健室のキッチンから出てきた。

「はい、紅茶が入ったわよ?
 お砂糖いくつ入れる?」

「じゃあ、二つ頼むよ。」

驚いたことに、ティーセットで出てきた。
しかも、レモンのスライスまで一緒に・・・。

「凄いな、ココは・・・。
 レモンまで付いてくるのか?
 こりゃ本格的だ。」

「そうでしょ~?
 だから、いつ来ても良いのよ?
 あなたなら、いつでもおもてなししてあげるわ。
 わ・た・し・も、居るしね・・・。」

本当の自分でいられる、唯一くつろげる場所・・・。
そんな大事な場所に俺を入れて、大丈夫なのか?
自分の居場所が、他人に侵害されるんだぞ?

S美は気にしないのか?

それよりも、ちょっと待て・・・。

『わ・た・し・も』・・・、だって・・・?
じゃ、今までの俺に対するツンツンした態度は何だった?
分からん・・・。
なんとなくわかりそうで、やっぱり分からん・・・。
2013-07-16 02:21

保健室

翌日、K子は学校を休んだ。
おそらく医者で、関節に溜まった血でも抜いたのであろうか・・・。

もしかすると、もう一日休むことになるかもしれない。
今日は一日、隣の席は空席である。
なんとなく、空虚感に襲われる。

俺は、担任からプリント回収を言い渡された。
放課後に職員室まで届けなければならない。
まぁ、気晴らしには丁度良いか・・・。

回収したプリントを職員室に届けると、S美に廊下でバッタリ出会った。
そう言えば、職員室の先に保健室があったんだっけ・・・。

「ねぇ、いま暇?」
S美が嬉しそうに駆け寄ってくる。

はて・・・?
俺の事を嫌ってるんじゃなかったのだろうか?

「ああ、用事はいま済んだところだ。」

「じゃ保健室で、お茶でも飲んでいかない?」

「おいおい、いつから保健室は喫茶店になったんだ?」

「いいから、いいから。」

S美は俺の腕を掴んで離さない。
今までの俺に対する態度と違い、やけに積極的なアプローチだ。
俺は、強引に保健室へ引きずり込まれた。

「ねぇ、ココ静かでしょ?
 それに今の時間、滅多に人来ないのよ?
 だから私、ココが好きなの。」

「そうかぁ・・・。
 自分の居場所が持てて良いなぁ。」

「あなたも放課後、ココに来れば持てるわよ?
 しかも、お茶付きで・・・。」

S美は微笑みながら、俺に語りかけてくる。

「そいつは、いいや。」

「ねっ、何飲む?
 コーヒー?紅茶?それともジュースが良いかしら?お茶もあるわよ?
 しかも、お茶菓子までありま~す!!」

あれ?
S美って、こんな性格だったか?

「えっ!?
 そんなのまであるの?
 保健室・・・だよな?ココって・・・。」

「うふふ・・・。
 学校医の先生が、いらっしゃった時の為に用意してあるのよ。」

「なるほどな・・・。
 勝手に飲食して、大丈夫なのか?」

「わたしが居るから、心配しなくても大丈夫よ。」

「それじゃ、お言葉に甘えて紅茶でも貰おうか?」

「紅茶ね?
 いま入れるから、そこに座って待っててね。」

鼻歌交じりで入れてくれている、S美は上機嫌である・・・。

なんだ・・・?
なんなんだ?このシチュエーションは・・・。
2013-07-15 11:44

自業自得

今日は、なんて日なんだろう・・・?
よりによって保健室でK子とS美が遭うなんて・・・。
そんな偶然な事ってあるのか・・・?
しかも、なんで俺が板挟み状態になるんだ?
俺、やましい事は何もしてないぞ?

神様、酷くありませんか?
こんな仕打ち・・・。
バチが当たる事、なにかしましたっけ?
と言いますか、無神論者なんですが・・・。

そう、S美と初めて出会ったのは小学3年生の頃。
S美は大阪から転校してきた。
転校当初は引っ込み思案で、大人しく優しい女の子だった・・・。
関西なまりをクラスの男子にいじめられ、
よく泣いていたのを覚えている。

俺は、いじめの類は大っ嫌いだ。
だが、いじめられる側にも要因が存在する。
それは強者に対抗する意思が欠落していること。
いじめに反発しない事が、いじめをエスカレートさせる。

そう言えば当時、S美も俺の隣に座っていたんだったな・・・。
隣のK子の席を眺めながら思い出していた。
K子とは違い、よく泣く女だったっけ・・・。
あまりに泣くので、S美に言った覚えがある・・・。

「あまり泣くな。
 幸せが逃げるぞ?」

「でも、男子たちが私を・・・。」

「そんなのゴミだと思え。
 女を泣かす男なんか、カスだ・・・。」

「えっ?」
S美は驚いていた。

考えてみれば俺も男だ。
男が男を批判する。
そんな光景を見て、S美は戸惑っていたのかもしれない。

「頭が良ければ、いじめられない。
 もっと自分に自信をつけろ・・・。
 弱い女は、俺は嫌いだ。」

「うん!」

翌日から、S美は泣くことをやめた。
そして俺は、算数を主軸に勉強も教えた。
かくして、以前のS美とは全く別人のように変わっていった。
明るく、そして逞しく・・・。

もう、S美に手助けは必要ないだろう・・・。
そして俺は、S美の自信に満ち溢れた行動を見守りつつ彼女から離れた。

あれ・・・?
ってことは、今のS美の性格って・・・。
俺のせいなのか?

そうかぁ~。
そうだったのか~。
原因は俺だったのかぁ・・・。
ある意味、自己嫌悪である・・・。

でも、あんな嫌味な女にした記憶はないぞ!?

程なくして、K子に付き添ってくれていたU子とC子が教室へ戻ってきた。

「どうだった?」

「やっぱり、お医者さんに見せた方がいいって。
 ついさっき、お医者さんに行ったわ。」

「やっぱり、そうか・・・。」

隣の席が空いている。
意外とK子の存在感が大きかった事を改めて実感した。
2013-07-14 01:53

修羅場?

保健室にK子を運び込むと、室内に女子が一人で本を読んでいた。
見覚えがあるが、誰だっけ・・・?
・・・・・・思い出した!
幼馴染のS美である・・・。
ツンツンしていて人間味が乏しく、俺の苦手な女である。

しまった、そう言えばS美は保健委員だった。
なぜか俺は、直感的に身の危険を感じた。

「あら?
 一体どうしたの?」

だが相変わらず、事務的な口調でS美は聞いてくる。
男をさげすむような気位の高さは、昔のままで変っていない。
もう少し、人間味があっても良いと思うのだが・・・。

それならこっちも、ビジネスライクで構わないだろう。

「ちょっと、怪我人を見てくれるかな?」

俺はK子をベッドに降ろす。

「まぁ、随分しばらくぶりね?」

えっ?
意外な一言だ・・・。
俺は、予想外の言葉に思わず躊躇した。

「あ・・・あぁ、しばらく・・・。」

途端にK子が睨みつけてくる。
くそ~っ、S美め・・・俺の事を覚えてたってのか?

「ちっとも保健室に顔出さない人が、珍しいわね・・・?」

まったく、嫌味な女だ・・・。
だから苦手なんだよ・・・。

「いや、そうそう頻繁に怪我していられないでしょ?」

嫌味には、嫌味で対抗する。

「そうじゃないわよ・・・。
 少しくらい、ココへ遊びに来なさいって言ってるの・・・。
 わたし、大概居るから。」

おや、意外にストレートな答えだ・・・。
だがK子の前では、言って欲しくない言葉である。
これは、後でなだめるのが大変だ・・・。

「わかった、わかった・・・。
 その内にな・・・?」

でも・・・いつからココ(保健室)は、バーの類になったんだ?
この応対、まるでドラマに出てくる飲み屋のママだぞ?
もしかして、女房同伴でキャバレーにでも行った気分って、
今のこんな気分なのかもしれない・・・。

保健室内の空気が、異様に張りつめているのがヒシヒシと感じられる。
なんか鋭い視線が、深く背中に突き刺さってくるのを感じるんですが・・・。
そして、とっても怖くて振り返りたくない気分なんですけど・・・。
ああ、早急にココから退避したい・・・。
 
「ともかく緊急事態だ、コイツを見てくれるかな・・・?」

「へ~っ・・・。
 抱きかかえてきた上に、コイツ呼ばわりなんだ・・・。」

だからなんなんだよ、その反応は・・・。
まるで嫉妬でもしてるみたいじゃないか?
まぁ、思い当たる節が無い事も無いような・・・。
あっても、随分昔の話だぞ?

ちょっと待て、今はそれどころでは無い!
ともかく、K子の怪我を治療することの方が先決だ。

「階段を踏み外して、落下したみたいだ。
 骨折はしてないみたいだが、足のあちこちに擦り傷がある。
 たぶん、足首がこれから腫れ上がってくると思う。
 だから早急に治療をお願いしたい・・・。」

「分かったわ・・・。
 あなたからのお願いじゃ、しょうがないわね・・・。
 じゃ服を脱がせるから、出て行ってくれる?」

「わかった。
 よろしく頼むよ・・・。」

「じゃぁ、私とC子で付き添ってるからね?」
保健室のドア手前で、U子がすれ違いざまに俺に言う。

「それじゃ、二人とも・・・頼むな?」

K子の付き添いをU子とC子に任せ、我々男子は教室に戻ることにした。
何やら階段の方が騒がしい。
するとU子が教室に飛び込んできた。

「K子が階段から落っこちて怪我しちゃった!
 誰か、保健室に運ぶの手伝って?」

「えっ!?」
まさかK子が、そんな大怪我したのか?
思いがけず、俺は動揺した。

どうしてこんなに動揺するのか、自分でもわからなかった。
なぜか、いてもたってもいられない・・・。
自分が自分でコントロール出来ないのだ。

ともかくU子の先導で、俺にYそしてEもK子の元へ急いだ。
階段の下でK子がうずくまっている。
C子がK子の傍で見守ってくれていた。

「大丈夫か・・・?
 一体どうしたの?」

「ちょっと、階段で滑っちゃって・・・。
 あいたたたた・・・。」

「立てそうか?」

「今は無理そう・・・。
 でも、時間経てば・・・なんとか・・・。」

「ちょっと足見るぞ?」

K子は、うずくまりながらもすかさずスカートを抑える。
見るのは足首周辺だから関係ないのだが、本人は気にしているらしい。

見たところ、膝やら脛などあちこちに擦り傷がある。
足首を押してみる。
骨折は無いようだが、これから腫れてきそうだ・・・。

立てるまでの時間の経過など、待ってはいられない。
すぐさま俺は、K子を抱きかかえることにした。

えっ!?
何ってキャシャなんだろうか・・・。
力を入れたら壊れそうだ・・・。
これが女の子?

でも、力を入れなければ持ち上げられない。
時間的な余裕は無い。
構わず力を入れて持ち上げた。

「きゃっ!」

「よし、このまま保健室まで行くぞ?」

「嫌だ、嫌だ、嫌だ~っ!」

突然、K子が暴れだす。
暴れだすとズッシリ重みが増してくる。
さっきまであんなに軽かったのに・・・。

「うるさい。
 大人しくしないと、このまま落とすぞ?」

「それも嫌だぁ~。」

「じゃ、黙ってろ。」

「ねぇ?
 周りでみんなが見てるのよ?」

K子は、顔を赤らめて恥ずかしがった。

「知るか、そんな事!
 俺はお前が大事なんだっ!
 悪いか!?」

K子はビックリした表情で俺の顔を見た。
そして、にこやかな表情で言葉を発する。

「もうっ!
 あなたって、強引な人なのね?」

「おや、知らなかったか?」

「うん、知らなかったわ。」

「じゃあ、覚えとけよ・・・。」

「そうね、覚えとくわ・・・。」

俺はK子を抱きかかえたまま
U子やC子、YとE達に先導されながら保健室に向かった。

どうやら俺も、恋のミイラになったようだ・・・。
認めてやるさ、俺はK子を愛している。
2013-07-07 00:20

さそり座の女

英語の説明を一通りした後、突然K子が顔を近づけてくる。

「ねぇ、あなたってモテるでしょ・・・。」

「えっ!?まさか・・・。
 そんなバカなこと、ある訳が無いだろ?
 あまり人を驚かせるなよ。」

「だってあなた、去年役員席で全校生徒の前にいつも居たじゃない?」

「うん、居たけど・・・。」

ああっ、ひな壇の事か・・・。
副会長不在では形が揃わないので、仕方なく居ただけであった。
本音を言わせてもらえば、『さらし者』みたいで嫌だったのだ。

「その時、女子の間で噂になってたのよ?
 カッコイイって・・・。
 もしかして、知らなかったの・・・?」

本当かよ?
それでラブレターなんてのが来てたのかぁ・・・。
あっ、この事は内緒にしなくちゃ。

「そんなことになってたなんて、ぜんぜん知らなかった・・・。
 いま、初めて聞いたよ・・・お前から・・・。
 大体、カッコイイ奴なんか他にも居るだろ?」

「あなた、本当に鈍いわね~。
 勉強できるうえに生徒会の中心人物なのよ?
 憧れない女の子なんて居ると思うの?」

「いや、まったく気付かなかった・・・。」

しかしそれは、鈍い以前の問題だろ!?
余裕が出来て、初めて気付くもんじゃないのか?
実際、校則作成やら何やらで、気付いてる余裕なんて全く無かった。

「女子の間で素敵な人だって、凄かったんだからね?」

「そんなの知るかよ~。
 俺は一人だけで十分だからな?
 で、お前はどうだったのよ・・・?」

「私は、チョットは素敵だな・・・とは思ったけど・・・、
 やっぱり気に食わなかった・・・。」

それでこそ、俺の気に入った女だ。
他のミーハーな女達とは違う。
しかし、『気に食わなかった』にはガックリ来たな・・・。
ちょいと意地悪な質問でもしてやろうか?

「それで今は?」

「もうっ、意地悪ねっ!
 ・・・とっても素敵だと・・・思ってるわよ。」

「ありがとね。」
と、K子に笑顔で答えてやる。

K子はモジモジして戸惑っている様子だった。
可愛いなぁ~。
抱きしめてやりたいくらいだよ。

「でも、一つだけ覚えておいてね?」

「何を・・・?」

「私、さそり座の女だから・・・。
 裏切ったり浮気したら、酷いんだから。
 覚悟しておいてね?」

「げっ!マジかよ・・・。」

K子は俺を睨みつけた。
浮気はしないよ、間違いなく・・・。
2013-07-02 01:49

肝心な言葉・・・

最近、K子と俺、それにYとU子、更にはEとC子が加わり、
この6人で話をする機会が何かと多くなった。

C子は京都から親の転勤で転入してきた。
引っ込み思案な性格で、
京都弁を気にしてクラスに溶け込めなかったようだ・・・。

また、Eは男のわりにキャシャで、変声期が遅れている。
その為、女子のように甲高い声のせいで男子の中でも浮いていた。

だが、俺もK子も気にしていなかったし、当然、YとU子もである。
それらの事に偏見を持たずに接するうちに、
いつしか俺たちの仲間になっていた。

多分、そのせいであろうか?
このところのクラス内の雰囲気が、大分変ってきていた。

特に男女の仲が、このクラスは非常によくなったのだ。
当然、偏見も無いからいじめも無い。
更には気兼ねもせず、女子から男子に声をかけ話をするようにもなった。
そして男子は、女子を決して差別せず、
女子に協力を申し出るようにまでなっていたのだ。

この事は以前、個人的にも確認実証済みだった。

もともと男は女に、女は男に興味があるものである。
だが、どう接すればよいかわからず壁を互いに作ってしまう。
互いの接し方がわかれば、自然と仲は良くなるものだ。
その接し方を誰かが実践して、見せてやればよいだけなのだ。

今回の実践者は、俺とK子、YにU子、
それにEとC子の6人であった訳だが・・・。
大した成果である。

そんなクラスの雰囲気のせいか、
K子はためらいもなく、いきなり俺に問い詰めてくる。

「ねぇ、ところであなたさぁ~。
 私に、肝心な言葉を言ってくれてないんじゃない?」

「はぁ?
 え~っと、何を・・・?」

「ほらっ!何かあるでしょ~?」

俺を睨んでる・・・。

「そんなこと言われても、何を言えば良いんだよ~?」

「まったく、鈍感なんだからっ!
 ・・・もういいわっ!
 知らないっ!」

K子は、俺にそっぽ向いてふくれた。

「そんなに怒るなよ・・・。
 ほら・・・、その可愛い顔が台無しだぞ・・・?
 だいたい、分からないものは分からないんだから、仕方がないだろ?」

「ふ~ん?
 私のこと、可愛いとは思ってくれてるんだ~。」

「ま・・・、ま~ね。」

「そうかぁ~。
 じゃ、今回のところは大目に見てやろう。」

何やらK子は、ニヤニヤし始めた。

褒めると御機嫌ならば、何度でも褒めてやろうじゃないですか。
んで何?肝心な言葉って・・・?
2013-06-26 00:38

嫁取りVS婿取り2

まさか『婿取り』という言葉が出てくるまで、
俺はそんなケースが在り得るなどとは、全く考えてすらいなかった。
まったくの勉強不足である。
そのことをいま、目の前に突き付けられた。

「そいつは困ったねぇ~。
 ウチは嫁さんもらう側だし・・・。
 大体俺、婿なんか行く気ないしなぁ~。
 行くこと自体、大問題だゎ・・・一族中の・・・。」

いや婿に行くこと自体、大反対されることは目に見えていた。
するとK子が本心を話し始めた。

「私だって、婿取りなんて嫌よ。
 絶対、お嫁に行きたいもの・・・。
 そして子供たちに囲まれた、幸せな家庭を作るの。」

俺は、K子の以外と頑固な性格を垣間見た。
なるほど、これくらいの気概がないと、
ウチではやって行けないだろうと半ば安心した。

だが、子供たちに囲まれた・・・?
一体、何人産むつもりなのだろうか・・・?

「そうか・・・、どうしようかぁ~?」

「ねぇ、何か考えてよ・・・。
 じゃないと私、お嫁に行けないよ?」
K子は催促してくる。

「ちょっと待て、あまり急かせるなよ・・・。」

まず状況を整理する。
現在の薬屋を継続するには、薬剤師免許を持った者が必要である事。
それはつまり、薬剤師免許を持つ者がK子でなくとも良いという事。
ならば答えは簡単だ・・・。

「そうだ、こうしよう。」

「何か、良い方法でもあるの?」

「結局、薬剤師が居れば良いんだよな?」

「そうよ?」

「だれか薬剤師を雇おう!」

「良いわね、それっ!
 それなら気兼ねなく、お嫁に行けるわ!」

しかし親の心情からすれば、子に店を継いで貰いたいであろう。
そして家を出たからと言って、親を疎遠にする訳にもいかない。
嫁に出た後のフォローが、どうしても必要となる・・・。

「だからって、お母さんのところを素っ気無くするなよ?
 優しく、いたわってやらないと・・・。」

「は~い。」
すっきりした笑顔でK子は答えた。

が、本当に分かっているのかね?コイツ・・・。
結婚するってのは、ゴッコ(遊び)じゃないんだよ?
2013-06-24 00:58

嫁取りVS婿取り

次の休み時間、表の空気を吸いに行こうとすると
いきなりK子に袖を引っ張られた。

「あのね、さっきU子ちゃんがいたから言えなかったんだけど・・・。」

K子が困り顔で俺を見ている。

「どうしたの?」

「ウチね、お父さんが別に会社やってるのよ。」

なるほど、事業を2つも起こしているとなると、やっかみも出てくる。
ましてやサラリーマン家庭では、どんな反応を示すかわからない。
U子には、伏せておく方が無難であろう・・・。

「そうかぁ・・・。
 ともかく、それは良い判断をしたね?」

褒められて、K子は嬉しそうな笑顔を見せる。
しかし、なぜ今頃俺に話すのか・・・?

「で、なぜ俺にそのことを・・・?」

「あなたのこと信頼してるから・・・。
 私ね、お兄ちゃん二人いるのよ・・・。」

「三人兄妹かぁ。それで?」

「お父さんは、上のお兄ちゃんに自分の会社を継がせて、
 下のお兄ちゃんを医者にするつもりなのね・・・。」

おや?

「それじゃ、薬屋さんは?」

「薬屋さんはお母さんがやってるんだけど、
 いづれ私がやらなきゃならないと思うのよ・・・。」

ん?

「って事はなんだ・・・、お婿さんを取らなきゃならんと・・・?」

「そう・・・かもしれない・・・。」

おいっ!

「そうかぁ・・・。
 俺のところは嫁取りだ・・・。」

なんと、そう来たかぁ~。
さて、これはまいったな・・・。
どう判断すれば良い?

「困っちゃったねぇ~?
 どうしようかしら・・・。
 何か良い方法ない?」

K子も困ってるのかぁ~。
あれ?嫁に来るつもりでいたの?

これは真面目に考えないと・・・。
発端はK子であるにせよ、ふと俺は疑問に思った。
俺ばかりでは不公平だ・・・。

「なんかさぁ、俺んトコばっか話してないか?」

「それもそ~だねぇ~。」
幼馴染のU子が話す。

「それって不公平だと思わない?」

「いいのよ、それでっ!」
間髪入れずにK子が言い放つ。

「えっ?」
躊躇ないK子の答えに、俺は逆に戸惑った・・・。

「だって、色々知りたいもん。」

なんとまぁ、ストレートな女だろうか・・・。
本当いい度胸してる女だよ、お前は・・・。

「ところで、お前のところは何やってるの・・・?」
今度は、こちらから問いかける。

するとU子が話し始めた。
どうやらK子とU子は、互いに行き来しているようだ。

「K子のところも凄いんだよねぇ~?」
U子が話すところによると、K子の家は薬屋を営んでいるらしい。

「えへへ・・・。
 私は薬屋の娘だぞぉ~。 
 どうだぁ~、凄いだろ~。」

「へぇ~、そうなんだぁ~。」
あどけない表情と仕草に、思わず微笑んでしまう・・・。

「そうそう、俺ん家の近くの薬屋だよね?」
Yが話すところによれば、Yの家から見える距離なのだそうだ。

「そうなんだよね。
 そういえば、Yの家も大きいよね?」
と、K子がYに問いかける。

「うちは設計事務所やってるから・・・。」
Yは照れながら話す。

「そりゃ、すごいじゃないかぁ~!」
俺は自分の周りに自営してる家が結構有ることを知り、
同じ境遇の人間が意外といることに安心を覚えた。

「凄いなぁ、みんな・・・。
 ウチは普通の会社員だからなぁ~。」
そういえば、U子の家はサラリーマンだった。

「そんなことないよ。
 会社員だって立派な仕事だよ?」
すぐさま、K子はU子のフォローに回った。

なるほど、機転が早いな・・・。
2013-06-11 01:43

あなたって・・・

K子は先日の一件から、事あるごとに俺に相談を持ちかけてくるようになった。
家での出来事、兄妹間の問題、友人関係・・・エトセトラ、エトセトラ・・・。
俺はいつの間にか、K子専属の相談相手にされてしまったようだ。

いや、もしかすると単に不満のはけ口にされてるのかもしれない。
聞かされてる方の身にもなって欲しいものだが、それで本人の不満解決に繋がるなら良しとしようか・・・。
なんってたって、俺はフェミニストだからね。
冷静に判断することができるまで、付き合ってやるさ・・・。

いつものように、物事の考え方や対処方法を教えたりしていていると、突然K子が聞いてきた。

「ねぇ、あなたってどういう人なの?
 考え方や解決方法が大人なのよね・・・。」

「はい?」
何を唐突に言い出すんだろうね、この子は・・・?

「だから、あなたの家って何をやってるの?」

「まぁ一応、小さいながらも会社を経営してますが?」

「え~っ?
 そうなの~!?」
K子の顔は驚きの表情だった。

普通一般には、サラリーマン家庭が当たり前だ。
当然の反応といえば当然なのかもしれない。

「は・・・はい・・・、そうなんです。」
思わず、K子のオーバーリアクションにたじろいでしまった。

「それじゃ、御曹司なんじゃないの!」

「お・・・御曹司?」
言われてみればその通りだ・・・。
だが、何やらこそばゆい・・・。

「そうよ!」

「そんな大それた者では・・・、ないと思うぞ・・・?」

「そんな事ないってばぁ~!
 で、長くやってるの?お家のお仕事・・・。」

「長いといえば、長いかなぁ・・・?」
まぁ、いづれ分かってしまうことだろうから、K子に説明することにした。

元をただせば、うちは士族の家系である。
現在の仕事についてからは、俺で四代目かそこらだったと記憶している。
家系で言えば某藩主側近の家系で、十六代目か十七代目総本家当主が俺である筈だ。

「そんなに凄い旧家なんだぁ~。
 そこの総本家・・・で、当主・・・。」

「気にするなよ?
 昔の話なんだから。」

「ううん。やっぱり凄い!」
K子は何やら興奮状態のようだ。

そんなに凄い事なのだろうか?
俺は当たり前に過ごしてきたので、たいして気にもしなかったが・・・。

「K子!
 そしたらもしかして、あなた大奥様なんじゃないの?」
U子が脇から口をはさむ。

「はい~っ!?」
いつの間にか、周りにYとU子が居た。

「おほほほほ・・・。
 嫌ですわ奥様ったらぁ・・・。」
突然に、K子がU子相手に悪乗りする。

俺は思わず頭を抱えた。
人の家系で遊ぶなよなぁ・・・。

「旦那さんも、気苦労が絶えませんなぁ~。」
と、Yが俺の肩を叩く。

くそっ、Yまで悪乗りしやがって・・・。
2013-06-04 01:48

頭きちゃう!

「もう!!
 私、頭きちゃった!」

2限目後の休み時間、教室後方のドアからK子が入ってきた。
かなり憤慨しているようだ。

ズカズカと、真っ直ぐ俺に近寄って来る。
あれ?俺、何かしたっけ・・・?

「ねぇ、聞いてよっ!」

うわっ!
ちょっと待て、いきなり何だ?

「な・・・なにを・・・?」

「3組のN子ったら酷いのよ!」
真っ赤に紅潮した顔に、泣きそうな瞳だ。
こりゃマズイ。

「ま・・・待て、まず落ち着けって・・・。
 ほれ、深呼吸して・・・。」

K子は思いっきり深呼吸をする。

「ちっとは落ち着いたか?」

「うん。」

「それじゃ聞くから、落ち着いて話してみ?」

「あのね・・・。」
K子は話し始めた。

要約すると、K子は休み時間中、
友達のN子に会いに、3組まで出向いて行ったらしい。
おしゃべりをしていると、だんだんN子の自慢話が始まり、
それがエスカレートしてK子のカンにさわったのだそうだ・・・。

俺は思わず、
ご近所の主婦同士がいがみ合ってる風景を連想してしまった。

「それってさぁ~。
 ご近所の主婦同士が子供を自慢しあってるのと、
 ちっとも変わらなくないか?」

「あっ!
 そうかぁ・・・。」
途端にK子の顔から紅潮が引いた・・・。

「そんな些細な事でイチイチ隣ともめてたら、
 結婚してご近所づきあいなんて出来ないだろ?」

一瞬、K子の顔が輝いたのを俺は見逃さなかった。
今なにか、とってもマズイ事を俺は言ってしまった気がする・・・。
これは、墓穴を掘ってしまったかも知れない・・・。
単に例え話として話したつもりだったのだが・・・。
どうも、あらぬ方向へ展開してしまったようだ。

「そうよねぇ~。
 ご近所付き合いなんか、出来ないわよね~。」
ニコニコしながらK子は納得した。

え~い、この際しょうがない。
言ってしまったことは後で修正しよう。
ともかく俺の妻になるかもしれない女が、短気では困るのだ。

「まず自分にプライドとポリシー、誇りと信念を持ってごらん?
 そうすれば自慢されても憤慨することはなくなる筈だよ?
 そして冷静に判断すること。
 感情的になると、ロクなことが起きないからね?」

「わかった。
 私、努力してみるね。」

意外とすんなり、K子は受け入れた。
2013-06-02 00:00

二人の距離

谷川ケン、まさかコイツがK子のワダカマリの元凶だったとは・・・。
他人を蹴落とすことで、優越感に浸るタイプの人間だ。
個人的にも関わりたくない。
確かに秀才(?)肌だが、人が悪く周りからの評判も悪い。

いままで、そいつと俺をK子は同一視していたのだ。
個人的にも非常に心外な事ではあるのだが・・・。
まぁ、学年学力テスト上位者の俺を
奴と同じ性格の人間と思われていても、
仕方のないことなのだろうか・・・?

いや、だからってそれは酷いんじゃないか!?
成績優秀でも、人間らしく優しい奴だっているんだよ。
しかもココに!!

そこは強く強調したいよ!!
強調しなけりゃ、俺の立場がないでしょ。

でも、そのわだかまりが解けた瞬間(いま)、
K子の態度が一変したのは当然の成り行きだったのだろう・・・。

なぜかK子は、俺のそばにいる事が多くなった。
そしていつの間にか俺も、
K子がそばにいることが当たり前であるかのように思うようになっていた。

そうなれば当然、冷やかしの声が上がってくるのが世の常。
決まって出てくる言葉は・・・。

「旦那さん、今日はいないの?」とか
「奥さんも大変ねぇ~。」である・・・。

それに対するK子の対応といえば・・・。

「宅の主人、ちょっと出かけていますのよ。」と
「いいえ~、そんなことございませんわぁ~。」だ。

完全に遊んでる・・・。
大した女だよ、お前は・・・。

これだけ肝の据わった女性は、オフクロ以外見たことがない。
これなら妻として、当家に迎えられるかもしれない・・・。

いつの間にか俺の心の中で、K子への恋心が芽生え始めていた。

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