今日は、なんて日なんだろう・・・?
よりによって保健室でK子とS美が遭うなんて・・・。
そんな偶然な事ってあるのか・・・?
しかも、なんで俺が板挟み状態になるんだ?
俺、やましい事は何もしてないぞ?
神様、酷くありませんか?
こんな仕打ち・・・。
バチが当たる事、なにかしましたっけ?
と言いますか、無神論者なんですが・・・。
そう、S美と初めて出会ったのは小学3年生の頃。
S美は大阪から転校してきた。
転校当初は引っ込み思案で、大人しく優しい女の子だった・・・。
関西なまりをクラスの男子にいじめられ、
よく泣いていたのを覚えている。
俺は、いじめの類は大っ嫌いだ。
だが、いじめられる側にも要因が存在する。
それは強者に対抗する意思が欠落していること。
いじめに反発しない事が、いじめをエスカレートさせる。
そう言えば当時、S美も俺の隣に座っていたんだったな・・・。
隣のK子の席を眺めながら思い出していた。
K子とは違い、よく泣く女だったっけ・・・。
あまりに泣くので、S美に言った覚えがある・・・。
「あまり泣くな。
幸せが逃げるぞ?」
「でも、男子たちが私を・・・。」
「そんなのゴミだと思え。
女を泣かす男なんか、カスだ・・・。」
「えっ?」
S美は驚いていた。
考えてみれば俺も男だ。
男が男を批判する。
そんな光景を見て、S美は戸惑っていたのかもしれない。
「頭が良ければ、いじめられない。
もっと自分に自信をつけろ・・・。
弱い女は、俺は嫌いだ。」
「うん!」
翌日から、S美は泣くことをやめた。
そして俺は、算数を主軸に勉強も教えた。
かくして、以前のS美とは全く別人のように変わっていった。
明るく、そして逞しく・・・。
もう、S美に手助けは必要ないだろう・・・。
そして俺は、S美の自信に満ち溢れた行動を見守りつつ彼女から離れた。
あれ・・・?
ってことは、今のS美の性格って・・・。
俺のせいなのか?
そうかぁ~。
そうだったのか~。
原因は俺だったのかぁ・・・。
ある意味、自己嫌悪である・・・。
でも、あんな嫌味な女にした記憶はないぞ!?
程なくして、K子に付き添ってくれていたU子とC子が教室へ戻ってきた。
「どうだった?」
「やっぱり、お医者さんに見せた方がいいって。
ついさっき、お医者さんに行ったわ。」
「やっぱり、そうか・・・。」
隣の席が空いている。
意外とK子の存在感が大きかった事を改めて実感した。