アメフトの基本的なプレーを紹介しましたが、ここでひとつアメリカンフットボールが行われる場所、フィールドを見てみましょう。
アメフトのフィールドはサッカーのフィールドとほぼ同じ大きさをした長方形をしていますが、正確には長いほうが(縦)120ヤード、短いほう(幅)が53ヤード(こっちは半端ですね)の長方形で、外側とはラインで仕切られています。この部分を「イン・バウンズ」といい、ラインの外側を「アウト・オブ・バウンズ」といいます。プレーが行われる部分、つまりダウンフィールドやバックフィールドになるの、は「イン・バウンズ」のうちの長い方中央の(縦)100ヤードと短い方(幅)53ヤードの長方形の部分です。残りの20ヤードはそれぞれ長い方の両端にある奥行き(縦)10ヤード幅53ヤードの「エンドゾーン」になります。
さらに「エンドゾーン」の端中央にはゴールポストが立っていて、高さ10フィートの位置から18.5フィートの間隔を置いて上へ向かって二本のポストが伸びています。この二本のポストの間にボールを蹴りこむことでも得点になります。
「イン・バウンズ」には中央にセンターラインが引かれ、そこから両端にむかって5ヤードごとに目印となる幅いっぱいのラインがセンターラインと並行するように引かれています。フィールド内の位置を表すために、両方のエンドゾーンとフィールドを区切るラインが0ヤード。そこから中央へ向かって10ヤード20ヤードと数えていき、フィールド中央が50ヤード、となっています。これを基準にプレーがスタートする位置、つまりこれからはじまるプレーのスクリメージラインの位置がどこかを表すことになります。
アメフトはプレーごとにボールを運ぶ攻撃チームとそれを妨害する守備チームがスクリメージラインをはさんで対峙し、それぞれ前進とその阻止を目的にプレーしますが、それ以外にも重要なプレーがあります。
それが「キッキング(キック)」と呼ばれるプレーです。
アメフトではこのキッキング・プレーが試合を左右する場合が多々あります。それにそもそも試合はまずキッキング・プレーから始まるのです。
ではキッキングプレーを見てみましょう。
キッキングプレーには主に4つのプレーがあります。
まずは試合開始の「キックオフ」からです。
アメフトは試合開始前にコイントスが行われ、コインの裏表で勝ち負けを決めます。コイントスに勝ったチームは、ボールを蹴る(キック)か受ける(レシーブ)か、2つあるエンドゾーンのどちら側を自分のチームのエンドゾーンにするかの選択ができます。
これでまずどちらのチームがどちら側から攻撃するか、まず攻撃権を与えられるのはどちらのチームなのかが決まります。
エンドゾーンが決まることで、どちらの方向に攻撃するかが決まります。つまり相手側の選んだエンドゾーンにタッチダウンすればこちらの得点。相手がこちらの選んだ側のエンドゾーンにタッチダウンすれば相手の得点ということになります。
センターラインをはさんで、自分のエンドゾーン側50ヤード分のフィールドを「自陣」相手側を「敵陣」といい、ボールがどこにあるか、つまりスクリメージラインの位置がどこなのかを自陣何ヤード、敵陣何ヤードの位置ということであらわします。
キックを選択すると、試合開始で相手に向かってボールを蹴ることで敵に攻撃権を渡すことになります。つまり最初の攻撃は相手が行うということです。
レシーブを選択すると相手が蹴ったボールを受け取ることになります。最初の攻撃はレシーブを選択したチームが行うことになるわけです。
さてそれぞれのエンドゾーンが決まり、キックする側レシーブ側が決まると、いよいよプレー開始です。しかし、フィールド内に入るのは攻撃チームと守備チームではありません。
プレーするのはキックする側がこのプレー専門の「キッキング・チーム」。キックされたボールを受け取る側が、これもそれ専門の「リターン・チーム」です。
プレーはキッキング・チームが相手陣地にむかってボールを蹴りこむことから始まります。これが「キック・オフ」です。サッカーと同じ名称ですね。
ボールはキックするチーム側の自陣35ヤード(NFLの場合、それ以外は30ヤードから、おっと失礼2011年シーズンではNFLは40ヤードからのキックオフになったのでした)の位置に置かれ、ボールを蹴る選手、キッカーによって敵陣に向かって蹴られます。蹴られたボールは普通「リターン・チーム」の中にいるボールを受け取とる役目の選手がキャッチ(レシーブ)します。そして、レシーブした側からみた敵陣(キッキングチーム側)に向かって「ラン」することでボールを進めます。これを「リターン」といい、リターンする選手を「リターナー」と呼びます。
レシーブする側から見れば、キックによって自陣のエンドゾーン手前に来たボールを「リターン」することで、そのチームにとってより有利な位置までボールを前進させることが目的です。
逆にキッキングチームから見れば、リターナーの「ラン、リターン」を食い止め、相手を不利な位置に押し込むことが目的です。そのためキッキングチームはキッカーを除く10人がキックと同時に敵陣になだれ込み、「リターナー」の「リターン」を「タックル」によって食い止め早い段階で「ダウン」させようとするわけです。
レシーブする側、リターンチームから見れば、リターナーの「リターン」を助けるためにキッキングチームの「タックル」を防ぐため相手選手を「ブロック」することになります。
リターナーが「タックル」されて「ダウン」するか、あるいはフィールドの「イン・バウンズ」からラインの外側「アウト・オブ・バウンズ」に出てしまうと、そこでプレーが終了します。これを「ボール・デッド」といい、その時点でボールのある位置が、最初のスクリメージライン、つまり攻撃チームの基点になります。
リターン・プレーが終了しボールの位置が確定するとリターンしたチームからは攻撃チームが、キックしたチームからは守備チームがフィールドに入り、スクリメージラインをはさんでの攻防が開始されます。
さて、攻撃チームは相手のエンドゾーンに向かって、まずは「ファーストダウン・10」の獲得を目指します。これを普通「ファーストダウンの更新」あるいは「ファーストダウンの獲得」といいます。
しかしもし、4回のプレーで10ヤードゲインできず、新たな「ファーストダウン」が獲得できなければ、「フォースダウン」でプレーが終了した位置、つまり「ボール・デッド」になった位置から相手の攻撃が始まります。
もしその位置が自陣のエンドゾーンに近い位置であれば、相手にとって「タッチダウン」が狙いやすい位置からの攻撃ということになり、とても不利な状態になってしまいます。
「ファーストダウン」「セカンドダウン」「サードダウン」と3回プレーして残りの「フォースダウン」のプレーでも新しい「ファーストダウン」の獲得が難しいと判断した場合、攻撃側には3つの選択肢があります。
ひとつはあくまで「ファーストダウン」の獲得を目指して「フォースダウン」をプレーする。しかしもし失敗すれば相手に攻撃権が渡り、上記のように自陣のエンドゾーンが近ければ大変不利です。また、「ファーストダウン」獲得のための距離が長い場合は「ファーストダウン」の更新は実現性が低いと判断することになります。
そこで2つ目の選択。それがキッキングプレーの2つ目「フィールド・ゴール」です。
「フィールド・ゴール」は相手エンドゾーンの奥にあるゴールポストの間にキックでボールを蹴りこむプレーで、これによって「タッチダウン」の場合より低い点数ではあるが得点することが可能です。
「フィールド・ゴール」で得点すれば、そこで攻撃側のプレーが終了し、攻守交替。次は得点した側チームの「キックオフ」で次のプレーが始まり、得点された側が「リターン」して攻撃を開始します。
しかし、もし、「フィールド・ゴール」が狙えないほど相手エンドゾーンから遠い位置からのプレーだった場合、「フィールド・ゴール」を狙って、ボールがゴールポストに届かなかったり、ゴールポストから外れてしまえば、無得点なのはもちろん、そのプレーのスクリメージラインから相手の攻撃が始まります。場合によっては敵に有利な位置で攻撃権をわたしてしまうことになってしまいますし、ボールがフィールド内「イン・バウンズ」に落下し、それを相手選手が地面に落ちる前にキャッチすれば、リターンすることも可能です(めったにありませんが)。
「ファーストダウン」も「フィールド・ゴール」も望めないと判断した場合、攻撃側チームは「フォースダウン」の攻撃プレーをあきらめ、「パント」を選ぶことになります。
これがキッキング・プレーの3つ目です。
「パント」とは「フォースダウン」の攻撃権を放棄して、相手陣にむかってボールを蹴りこむプレーです。通常パント・キック専門の選手、パンターを含む「パントチーム(大抵パンターを除いてキッキングチームと同じメンバーだったりする)」が送り込まれ、プレーします。これでボールの位置を自分のエンドゾーンから遠ざけ、相手のエンドゾーンに近い位置まで押し込むことを目指します。そのかわり攻撃権は放棄しているので、蹴ったボールを攻撃側、この場合キックしたチームが拾ってそのままプレーを続けることはできません。キック側が先にボールに触ればそこで「ボールデッド」となり、相手チームはその位置から「ファーストダウン」の攻撃を開始します。
「パント」される側は、相手がパントを選んだと判断すると、ここでも「リターンチーム」をフィールドに送ります。パント・キックされたボールは「キック・オフ」の時と同様、リターナーによってリターンすることが許されています。リターンが始まれば、後は「キック・オフ」の時と同様のプレーが展開します。
しかし、パントチームの接近が早く、レシーブした時点で「タックル」される危険がある場合、ボールをキャッチする選手、レシーバー(たいていはりターナー)は手を上げて、「フェアキャッチ」を宣言することができます。「フェアキャッチ」はボールをキャッチしてもリターンはしないという宣言です。そのかわり、パントチームの選手はキャッチする選手に「タックル」を含む接触行為をしてはならず、レシーバーのキャッチを受け入れなければいけません。「フェアキャッチ」シグナルが行われたら、普通「キャッチ」となり、そこで「ボールデッド」となって、レシーブ側チームの次の「ファーストダウン」の攻撃がその地点からスタートします。
こうして、アメフトは「キックとリターン」「攻撃と守備」「パントとリターン」「攻撃と守備」「キックとリターン」いうような構成で進んでいくことになります。
4つ目のキッキングプレーは?
それはもう一度「攻撃と守備」に戻ってから説明しましょう。