思い出しついでに。
アルセーヌ・ルパンといえば、世界中で知らない人以外はみんな知っている有名な大泥棒。
現在の日本では孫(日本人が考えたことですが)のルパン三世のほうがよっぽど有名ですが、「怪盗」のイメージ、つまりシルクハットに片眼鏡(モノクル)、マントを翻し闇に消えるというイメージを広めたのがこのアルセーヌさん。でも小説ではこのスタイルはでてこない、というのはシャーロック・ホームズの帽子と一緒ですね。
ポプラ社から出ていた(現在、復刊されています)ハードカバーの児童向け翻案シリーズを読んでいたんですよ。26巻までは読んだ記憶があるけれど、場面場面は覚えていても細かいストーリーはやはり忘れていますね。残念。大人になったらオリジナルの翻訳を読もう読もうと思っていながら、読んでません。
ルパンシリーズはエピソードタイトルがいいんですよね。「奇岩城」(第1巻)なんてこれはもういったいなんのことだろうかと思わずにはいられない名訳ではあるまいか。他にも「三十棺桶島」だの「813の謎」だのなんじゃこれはというタイトルが並んでいた。もちろん「カリオストロ伯爵夫人」もね。
カリオストロという名前も不思議だけれど、ルパンの本名ラウール・ダンドレジーだとか、ルパンのライバル、ガニマール警部だとか、フランスの不思議な名前は異国情緒満点ではなかろうか。
当時は児童向け翻案ミステリーシリーズとして、ルパン、ホームズ、少年探偵団(江戸川乱歩)の3つが出版されていて、わたしはルパンの大ファンでした。ホームズはもっと後になってからでしたね。
法は破るが正義は守る。盗みはすれど殺しはせず。本職は泥棒なのに、悪人退治もやる。矛盾を抱えたキャラらクターが正義の味方の探偵(ホームズ、明智)や、悪の怪人(二十面相)とは一味違った魅力だったんですね。また、時にはぜんぜん本人が出てこないで、別の主人公の脇役になるというのもおもしろかった。ちゃんと部下がいて独自の組織をもっているというのも大仕事をこなす場合の理にかなってる。得意の変装もメイクと演技によるものなのはホームズと同じく、これも理にかなってる。やっぱり漫画じゃあるまいし一皮べりっとむけばほらこの通りみたいな変装ではなかったのだな。延々と盗みを働くわけでもなく、時にはルパンであることを隠し若い娘さんを助けて事件を解決したり、自ら探偵社を開いて警察に協力したりとエピソードが多彩なのもおもしろかった。今思えば、同じ主人公でマンネリにならないようにいろいろ考えたということなんでしょうけれど、ルパンというキャラクターがそれを可能にする幅の広いキャラだったということでしょうか。
ルパンの時代は19世紀末から20世紀の初めごろ、第1次世界大戦まで。ホームズより若く、ポワロより年寄り。なので、様々な(当時の)最新鋭メカや、科学の新発見の登場もかっこよかったなあ。読んでいた頃にはべつにヨーロッパの歴史などに興味はなかったが、フランスとドイツは仲が悪いとか、フランス語は単語の初めのHを発音しないとか、アルザス・ロレーヌ地方をドイツに取られてくやしいなあきっととりかえしてやるぞ(第1次世界大戦以前の普仏戦争で取られた)、というのはずっと憶えていました。
でもルパンがきっかけでフランス語をどうこうというわけでは全然ないんですよ。だいたいフランス語が読めるようになれば、ルパンも原書で読めるなんてことは、今思いついたくらいだし。そっちはあくまでバンドデシネ(フランス漫画)が読みたいから。
でもそのうちルパンも読めるようになりたいものです。