と、いうわけで、思い立ったがなんとやら。行ってきました諸星大二郎じゃなくて、ブリューゲル版画展。
終わり間際なためか平日なのに意外とお客さんが多かったなあ。
奇天烈なブリューゲルのキャラクターたちは意外とみんな小さかったのだった。版画だからあたりまえか。
そしてほとんどはまともな絵だった。これもあたりまえか。へんなおばけばかり描いていたわけではなかったのだなと。風景画にしろ、なんにしろ、とにかくみっちり書き込まれているので一枚の絵を見るのも時間がかかる。
当時の風俗画もあってそれも興味深い。
どこだかの村の縁日の絵では、ブリューゲル他数人の版画がならんでいるのだが、みんな絵のどこかに喧嘩してる人が描かれている。そんなに喧嘩すきなのか16世紀の人間は。風車や尖塔の上に的を置いて矢で射落とすというゲームも描かれている。イギリスでは今でもこのゲームをやってるクラブがあるらしいですな。
河があれば必ず船がある。やはり当時は物流の中心的なものだったんでしょうね。海の櫂船のように左右に何十本も櫂が突き出した船の絵もあったな。エンジンがないから河をさかのぼるのはやっぱり人力頼みだったんですね。
版画なので、ブリューゲルが描いた元の絵(素描)を職人さん(版作りの人も絵をかいたり、絵描きが版をおこしたり、明快な区分はないようですが)が版になおすんだけれども、その職人さんの技あってこそみたいなものも感じましたね。
特に多くの絵を版におこしているフィリップス・ハレ(だったっけ)がすごい。ぬめっとして、つるりとして、冷たくてやわらかいくせにほわんとしているけれど、くっきりとして、確かで、とんでもなく繊細で力があって美しい線。
黒べたが使えないので、影を表現するためには何重にも「かけあみ」の線を重ねていかなくてはならないのだけれど、それがまたとんでもなくすごい。精密機械のような線描写。今の日本の漫画界でもコレだけのかけあみを引ける人がはたしているだろうか、というくらい(たとえのせいであんまりすごさが伝わらなかったとしたら申し訳ないが)すごい。
いったい製作にはどれだけの時間がかかったのだろうか。
すごいすごいと書いてばかりでもなんなので、ちょっとちがったことも。
鳥がいいかげん。空を飛んでいる鳥。
犬もけっこういいかげんに描いているところもあるけれど、鳥はいいかげんだ。ブリューゲル以外の絵も同じような鳥の描き方なので、流行なのかなんなのか知らないが、けっこう適当に描いてるんじゃありませんかあれは。
でもその適当な鳥からおばけ鳥頭への変化もみられるので、そのへんはブリューゲルのすごいとこかも。(添付した冒頭の2つめのイラストを参照されたし)
展示会場の終わりには例によって関連グッズの販売ブースがあるのだが、いまいち欲しいものがなかったので、ガチャガチャ(けったいなキャラクターを立体化したガチャ)をやった。一発で欲しかったキャラ(冒頭に添付した最初のイラストを参照されたし)がでたので(といってもキャラは3種類だけなんだけどね)、これでいいや、と会場を後にしたと思ったら忘れてた。
常設の物品販売コーナーでエドワード・ゴーリーのうそっこタロットカード(すべての予言が悲観的なものばかりらしい)を売ってたんだよう。あ~買えばよかったかなあ。
ブリューゲルの版画やらデューラーの精密線画やらがあって、エドワード・ゴーリーの絵もあるわけなんだね。チョイ前のエントリでかいた、クリス・プリーストリーの本のデビッド・ロバートの絵もね。いろいろつながったところでこのへんで。