ちーずブログ
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嫁取りVS婿取り2
俺はそんなケースが在り得るなどとは、全く考えてすらいなかった。
まったくの勉強不足である。
そのことをいま、目の前に突き付けられた。
「そいつは困ったねぇ~。
ウチは嫁さんもらう側だし・・・。
大体俺、婿なんか行く気ないしなぁ~。
行くこと自体、大問題だゎ・・・一族中の・・・。」
いや婿に行くこと自体、大反対されることは目に見えていた。
するとK子が本心を話し始めた。
「私だって、婿取りなんて嫌よ。
絶対、お嫁に行きたいもの・・・。
そして子供たちに囲まれた、幸せな家庭を作るの。」
俺は、K子の以外と頑固な性格を垣間見た。
なるほど、これくらいの気概がないと、
ウチではやって行けないだろうと半ば安心した。
だが、子供たちに囲まれた・・・?
一体、何人産むつもりなのだろうか・・・?
「そうか・・・、どうしようかぁ~?」
「ねぇ、何か考えてよ・・・。
じゃないと私、お嫁に行けないよ?」
K子は催促してくる。
「ちょっと待て、あまり急かせるなよ・・・。」
まず状況を整理する。
現在の薬屋を継続するには、薬剤師免許を持った者が必要である事。
それはつまり、薬剤師免許を持つ者がK子でなくとも良いという事。
ならば答えは簡単だ・・・。
「そうだ、こうしよう。」
「何か、良い方法でもあるの?」
「結局、薬剤師が居れば良いんだよな?」
「そうよ?」
「だれか薬剤師を雇おう!」
「良いわね、それっ!
それなら気兼ねなく、お嫁に行けるわ!」
しかし親の心情からすれば、子に店を継いで貰いたいであろう。
そして家を出たからと言って、親を疎遠にする訳にもいかない。
嫁に出た後のフォローが、どうしても必要となる・・・。
「だからって、お母さんのところを素っ気無くするなよ?
優しく、いたわってやらないと・・・。」
「は~い。」
すっきりした笑顔でK子は答えた。
が、本当に分かっているのかね?コイツ・・・。
結婚するってのは、ゴッコ(遊び)じゃないんだよ?
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嫁取りVS婿取り
いきなりK子に袖を引っ張られた。
「あのね、さっきU子ちゃんがいたから言えなかったんだけど・・・。」
K子が困り顔で俺を見ている。
「どうしたの?」
「ウチね、お父さんが別に会社やってるのよ。」
なるほど、事業を2つも起こしているとなると、やっかみも出てくる。
ましてやサラリーマン家庭では、どんな反応を示すかわからない。
U子には、伏せておく方が無難であろう・・・。
「そうかぁ・・・。
ともかく、それは良い判断をしたね?」
褒められて、K子は嬉しそうな笑顔を見せる。
しかし、なぜ今頃俺に話すのか・・・?
「で、なぜ俺にそのことを・・・?」
「あなたのこと信頼してるから・・・。
私ね、お兄ちゃん二人いるのよ・・・。」
「三人兄妹かぁ。それで?」
「お父さんは、上のお兄ちゃんに自分の会社を継がせて、
下のお兄ちゃんを医者にするつもりなのね・・・。」
おや?
「それじゃ、薬屋さんは?」
「薬屋さんはお母さんがやってるんだけど、
いづれ私がやらなきゃならないと思うのよ・・・。」
ん?
「って事はなんだ・・・、お婿さんを取らなきゃならんと・・・?」
「そう・・・かもしれない・・・。」
おいっ!
「そうかぁ・・・。
俺のところは嫁取りだ・・・。」
なんと、そう来たかぁ~。
さて、これはまいったな・・・。
どう判断すれば良い?
「困っちゃったねぇ~?
どうしようかしら・・・。
何か良い方法ない?」
K子も困ってるのかぁ~。
あれ?嫁に来るつもりでいたの?
これは真面目に考えないと・・・。
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う~んとねぇ・・・。
俺ばかりでは不公平だ・・・。
「なんかさぁ、俺んトコばっか話してないか?」
「それもそ~だねぇ~。」
幼馴染のU子が話す。
「それって不公平だと思わない?」
「いいのよ、それでっ!」
間髪入れずにK子が言い放つ。
「えっ?」
躊躇ないK子の答えに、俺は逆に戸惑った・・・。
「だって、色々知りたいもん。」
なんとまぁ、ストレートな女だろうか・・・。
本当いい度胸してる女だよ、お前は・・・。
「ところで、お前のところは何やってるの・・・?」
今度は、こちらから問いかける。
するとU子が話し始めた。
どうやらK子とU子は、互いに行き来しているようだ。
「K子のところも凄いんだよねぇ~?」
U子が話すところによると、K子の家は薬屋を営んでいるらしい。
「えへへ・・・。
私は薬屋の娘だぞぉ~。
どうだぁ~、凄いだろ~。」
「へぇ~、そうなんだぁ~。」
あどけない表情と仕草に、思わず微笑んでしまう・・・。
「そうそう、俺ん家の近くの薬屋だよね?」
Yが話すところによれば、Yの家から見える距離なのだそうだ。
「そうなんだよね。
そういえば、Yの家も大きいよね?」
と、K子がYに問いかける。
「うちは設計事務所やってるから・・・。」
Yは照れながら話す。
「そりゃ、すごいじゃないかぁ~!」
俺は自分の周りに自営してる家が結構有ることを知り、
同じ境遇の人間が意外といることに安心を覚えた。
「凄いなぁ、みんな・・・。
ウチは普通の会社員だからなぁ~。」
そういえば、U子の家はサラリーマンだった。
「そんなことないよ。
会社員だって立派な仕事だよ?」
すぐさま、K子はU子のフォローに回った。
なるほど、機転が早いな・・・。
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あなたって・・・
家での出来事、兄妹間の問題、友人関係・・・エトセトラ、エトセトラ・・・。
俺はいつの間にか、K子専属の相談相手にされてしまったようだ。
いや、もしかすると単に不満のはけ口にされてるのかもしれない。
聞かされてる方の身にもなって欲しいものだが、それで本人の不満解決に繋がるなら良しとしようか・・・。
なんってたって、俺はフェミニストだからね。
冷静に判断することができるまで、付き合ってやるさ・・・。
いつものように、物事の考え方や対処方法を教えたりしていていると、突然K子が聞いてきた。
「ねぇ、あなたってどういう人なの?
考え方や解決方法が大人なのよね・・・。」
「はい?」
何を唐突に言い出すんだろうね、この子は・・・?
「だから、あなたの家って何をやってるの?」
「まぁ一応、小さいながらも会社を経営してますが?」
「え~っ?
そうなの~!?」
K子の顔は驚きの表情だった。
普通一般には、サラリーマン家庭が当たり前だ。
当然の反応といえば当然なのかもしれない。
「は・・・はい・・・、そうなんです。」
思わず、K子のオーバーリアクションにたじろいでしまった。
「それじゃ、御曹司なんじゃないの!」
「お・・・御曹司?」
言われてみればその通りだ・・・。
だが、何やらこそばゆい・・・。
「そうよ!」
「そんな大それた者では・・・、ないと思うぞ・・・?」
「そんな事ないってばぁ~!
で、長くやってるの?お家のお仕事・・・。」
「長いといえば、長いかなぁ・・・?」
まぁ、いづれ分かってしまうことだろうから、K子に説明することにした。
元をただせば、うちは士族の家系である。
現在の仕事についてからは、俺で四代目かそこらだったと記憶している。
家系で言えば某藩主側近の家系で、十六代目か十七代目総本家当主が俺である筈だ。
「そんなに凄い旧家なんだぁ~。
そこの総本家・・・で、当主・・・。」
「気にするなよ?
昔の話なんだから。」
「ううん。やっぱり凄い!」
K子は何やら興奮状態のようだ。
そんなに凄い事なのだろうか?
俺は当たり前に過ごしてきたので、たいして気にもしなかったが・・・。
「K子!
そしたらもしかして、あなた大奥様なんじゃないの?」
U子が脇から口をはさむ。
「はい~っ!?」
いつの間にか、周りにYとU子が居た。
「おほほほほ・・・。
嫌ですわ奥様ったらぁ・・・。」
突然に、K子がU子相手に悪乗りする。
俺は思わず頭を抱えた。
人の家系で遊ぶなよなぁ・・・。
「旦那さんも、気苦労が絶えませんなぁ~。」
と、Yが俺の肩を叩く。
くそっ、Yまで悪乗りしやがって・・・。
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頭きちゃう!
私、頭きちゃった!」
2限目後の休み時間、教室後方のドアからK子が入ってきた。
かなり憤慨しているようだ。
ズカズカと、真っ直ぐ俺に近寄って来る。
あれ?俺、何かしたっけ・・・?
「ねぇ、聞いてよっ!」
うわっ!
ちょっと待て、いきなり何だ?
「な・・・なにを・・・?」
「3組のN子ったら酷いのよ!」
真っ赤に紅潮した顔に、泣きそうな瞳だ。
こりゃマズイ。
「ま・・・待て、まず落ち着けって・・・。
ほれ、深呼吸して・・・。」
K子は思いっきり深呼吸をする。
「ちっとは落ち着いたか?」
「うん。」
「それじゃ聞くから、落ち着いて話してみ?」
「あのね・・・。」
K子は話し始めた。
要約すると、K子は休み時間中、
友達のN子に会いに、3組まで出向いて行ったらしい。
おしゃべりをしていると、だんだんN子の自慢話が始まり、
それがエスカレートしてK子のカンにさわったのだそうだ・・・。
俺は思わず、
ご近所の主婦同士がいがみ合ってる風景を連想してしまった。
「それってさぁ~。
ご近所の主婦同士が子供を自慢しあってるのと、
ちっとも変わらなくないか?」
「あっ!
そうかぁ・・・。」
途端にK子の顔から紅潮が引いた・・・。
「そんな些細な事でイチイチ隣ともめてたら、
結婚してご近所づきあいなんて出来ないだろ?」
一瞬、K子の顔が輝いたのを俺は見逃さなかった。
今なにか、とってもマズイ事を俺は言ってしまった気がする・・・。
これは、墓穴を掘ってしまったかも知れない・・・。
単に例え話として話したつもりだったのだが・・・。
どうも、あらぬ方向へ展開してしまったようだ。
「そうよねぇ~。
ご近所付き合いなんか、出来ないわよね~。」
ニコニコしながらK子は納得した。
え~い、この際しょうがない。
言ってしまったことは後で修正しよう。
ともかく俺の妻になるかもしれない女が、短気では困るのだ。
「まず自分にプライドとポリシー、誇りと信念を持ってごらん?
そうすれば自慢されても憤慨することはなくなる筈だよ?
そして冷静に判断すること。
感情的になると、ロクなことが起きないからね?」
「わかった。
私、努力してみるね。」
意外とすんなり、K子は受け入れた。
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二人の距離
他人を蹴落とすことで、優越感に浸るタイプの人間だ。
個人的にも関わりたくない。
確かに秀才(?)肌だが、人が悪く周りからの評判も悪い。
いままで、そいつと俺をK子は同一視していたのだ。
個人的にも非常に心外な事ではあるのだが・・・。
まぁ、学年学力テスト上位者の俺を
奴と同じ性格の人間と思われていても、
仕方のないことなのだろうか・・・?
いや、だからってそれは酷いんじゃないか!?
成績優秀でも、人間らしく優しい奴だっているんだよ。
しかもココに!!
そこは強く強調したいよ!!
強調しなけりゃ、俺の立場がないでしょ。
でも、そのわだかまりが解けた瞬間(いま)、
K子の態度が一変したのは当然の成り行きだったのだろう・・・。
なぜかK子は、俺のそばにいる事が多くなった。
そしていつの間にか俺も、
K子がそばにいることが当たり前であるかのように思うようになっていた。
そうなれば当然、冷やかしの声が上がってくるのが世の常。
決まって出てくる言葉は・・・。
「旦那さん、今日はいないの?」とか
「奥さんも大変ねぇ~。」である・・・。
それに対するK子の対応といえば・・・。
「宅の主人、ちょっと出かけていますのよ。」と
「いいえ~、そんなことございませんわぁ~。」だ。
完全に遊んでる・・・。
大した女だよ、お前は・・・。
これだけ肝の据わった女性は、オフクロ以外見たことがない。
これなら妻として、当家に迎えられるかもしれない・・・。
いつの間にか俺の心の中で、K子への恋心が芽生え始めていた。
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