この気持ちは何だろう?・・・私は頭の中が混乱しきっていた
いや違う、自分の中で思い当たるひとつの感情と戦っていた
(恋かもしれない・・・)
でも、それは麻耶香にも指摘されていた事だったけど
小野寺君と会ってまだ2週間ほどだ、そんなのあまりにも早すぎる
恋ってそんなに唐突に発生するものじゃないはず・・
こんな短期間で人を好きになるとかどう考えてもおかしい!
(落ち着け、私!これは助けてもらった事で起こった
そう、つり橋効果みたいなもの!ちょっと考えても
小野寺君は確かにやさしいし、知的でちょっと素敵だし
寝顔見たらまつげも長いし、落ち着いた感じで頼れるし
塚田と違って私の話もちゃんと聞いて理解してくれる
一緒にいても楽しいし、話してても趣味も合って楽しいし
ずっと一緒に・・・・いやいやいや・・違うのよ・・そうじゃない
落ち着いて今の感情を分析するのよ!)
何をどう考えても結論が一方向に収束する・・
でもそれは自分の思っていた恋とはかけ離れている気がして
なんだかどうしても認められないし、恥ずかしい!
ぐるぐると思考が迷宮に入り込む
そして私は忘れていた、今日も塚田に追いかけられて
ここに上がって来た事を・・・・
「探したぜ、緋沙希~!こんな所にいたのか、さては俺と二人っきりになりたかったんだな?」
不意に後ろの階段方向から声がした!
(ヤバッ!)そう思った時はすでに遅く
私は塚田に強引に胸板へ引き寄せられ抱きしめられてしまった。
空手着から何日も洗っていないような汗の匂いがして気持ち悪い!
「ちょっと放して!離れて!」
でもそんな私の必死の抗議も塚田はまるで聞いていない
「探し当てるのが遅くてごめんな、寂しかったろ?」
塚田は勝手な事を言いながら私をさらに強く抱きしめ身動きが取れないようにする
「二人だけの時くらい照れるなよ、緋沙希!」
「うっさい、いいから離れて!」
(しまった、こんな部室のすぐ横でゴリラにつかまるなんて、
こんなに騒いだら小野寺君に見られちゃうじゃない・・・
やだ、こんなところ小野寺君に見られたくない!
彼が誤解だって理解してくれるのは解ってる、でもこんなの絶対に嫌!!)
私はあらん限りの力で塚田の腕を押し返す!
とにかくこのゴリラから離れて自由になりたい
いつもの部室で小野寺君のコーヒーが飲みたい
だって・・だって私は・・・私は小野寺君が!!