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04月04日
23:53

Skellig
author David Almond 読了

Michel の一家は冬の終わりに持ち主のいなくなった古い農場へ引っ越してきた。荒れた敷地に建つぼろぼろの納屋で Michel は、埃と蜘蛛の巣、虫の死骸にまみれやせ細った人、あるいは人に似た何か、を見つける。暗く古い納屋で見た幻かと思われたそれの元を再び訪れた Michel は、それの世話を始める。やがて同じ通りに住む Mina と親しくなった Michel は「彼」を納屋から Mina のおじいさんの遺した屋敷に移し世話しようとするのだった。一方、生まれたばかりの Michel の妹、まだ名前も決まっていない赤ん坊の妹は、重い病気を抱え、母とふたたび病院に戻っていく。死んだも同然の状態から再び生を取り戻していく「彼」と、生を受けながら死と戦わざるをえない妹。学校へ行かず、母に教育を受けながら、独自の価値観で行動する Mina 。これまで当たり前だと思っていた学校や友達とのわずかな心のずれ。こうした彼らとの関わりが、Michel の生への視点を変えていくのだった。

とても面白かったのだが、そのお話はなんとも説明が難しい不思議な小説。これまで暮らしていた家から新しい家族のために新しい家に引っ越してきた Michel の家族。古く荒れ放題のその家で、現実とは思えないものと出会い、また、確かにそこにいながら、Michel が知っている生活とは違う生き方をしている Mina とも出会う。生死をさまよう幼い妹と、これまで知っていた世界と知らなかった世界の間をさまよう Michel はある意味リンクしているともいえる。この小説の雰囲気は何かに似てるなあと思い出したのは「北風のうしろの国」。ちょっと前に呼んだ「great blue yonder」もある意味似た雰囲気。このへんイギリスファンタジーの伝統なのかもしれないと思ったりしました。単にあらすじや設定だけでは図れないという小説、物語というものの面白さが味わえます。
作品中、何度も出てくる「肩甲骨は翼の名残」というのが翻訳版(創元推理文庫版)の題名になっていたんですね。翻訳本は本屋で何度か目にしていたのだけれど、タイトルがぜんぜん違うので気がつかなかった。翻訳で読んでなくてよかった。今はまだ翻訳本で読んじゃったものは読まないようにしてるんです(そのうち読みたい、と)。原書で初めて触れるほうが他人の訳にとらわれないからいいんじゃないかなと思ってるもので。これからも気をつけないとね。