おこなもち

『おこなもち』は、いとまのこの友達のことです!

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世の中に対して納得できないことはたくさんある。

とかく、当事者だけを助ける支援とかは納得できない。

命が大切!心臓移植を助けてください!とかもそう。
海外の手術は保証金として大量のお金は必要だけれど
その後、お金が帰ってきてからのことは絶対に語ってもらえない。

別に募金を偽善だとは思わないし、ツイッター募金とかも気まぐれで
私もやったりするけれど、その中では1円だろうが1000円関係無い。
というか、どんなに思いを込めたとしても全体に対しての何割としか
伝わらない。伝えられないのだ。

だから、もしその点に対して正義を行使したいと願うなら
関連企業の株でも買って開発を促す方がよっぽど現実的というか
計画的で、建設的。真っ当な発想だと思う。

社会責任に対してプレッシャーを与えることで、耐えられない人間から
お金を搾取しているような図式をどうしても感じてしまうのだ。

どんな訴えもそうだ。仮に戦争反対を訴える人がいるのなら
彼らはそんな訴えを起こすだけで満足しては行けないと思うし
よほどの指導者がいない限りは、デモとテロが同化してしまって
結局は口だけで終わったと風化してしまっては意味が無い。

社会の中で、確実に存在し続けるということ。

それはつまり、いつの時代も教育の中に存在しなければいけない。
あるいは経済活動として、一国の方向性に変える必要があるのだ。

とはいえ、一度、形を持ってしまうとそれを保つためのコストも
それを悪意の下で利用されるリスクも考えなければいけない。

原点からかけ離れて解釈してはいけないということだ。
それはいつか時代遅れになることも知っておかなければならない。

神様に頼ってきた世紀から、経済活動に依存した世紀を迎えたのは
神様が経済活動を重視した上で成り立っていたからだ。

では次に作る社会はどうあるべきか。
それは経済活動の根本にあるものでなければ衰退するだろう。
そうして物事が充足していく中で、物語は中心へと近づいていく。




私たちはどうして働くのか。

何がしたくて、何となくでも生きているのだろうか。

何を認めて、何を許せずに淘汰してきたのだろうか。





もし、あらゆる人間が勉強に没頭できる「教育国家」を実現すれば
その国の技術は確実に群を抜き、技術革新で経済に貢献できる。

技術面ばかりでは無い。精神的な活動も勉学によって発展する。
だから日本の文学から始まっている変態、オタク文化の成長は
私にとってはとても頼もしい、健全な成長であると感じる。

常日頃考える悩み、分からないことについて答えを出す為には
その答えがいくつもあることと、その過程が無限にあるということを
出来るだけ早く子供に教えてあげるべきなのだ。

そして、その最先端のフィールドでは大人も子供も関係ない。
誰も知らないことだけしか存在しない世界が広がっているということ。




私たちが無能なわけではなくて

君達、私達に未来があるから

無限大の知識が必要なのだということ






こんにちわ!いとまのこです!









あらゆる疑問を明確にするには、理解する為の知識も必要だが
それ以上に、経験して感覚を培うことも必要だと思う。

あぁ、これはアレの心理と似ているね。とか。

添削前です。1週間公開してファン用に回します(*´ω`*)
あついなー。あつくてノートPCに触るのも嫌やー。


――――パチッ バチチッ

音と共に煙が上がった。
ゴーグルを外し、ソレを確認する。

「あーぁ。またやっちまった」

男が指を鳴らすと部屋の明かりが消えた。
部屋の中は急に壁に包まれた暗い部屋となる。
窓から差し込む日差しは男の背中を照らし
熱を持ったソレが赤く光っていた。

換気扇の低い振動音だけが響く。

「嫌われてるのかな」

ギィと音を立て、椅子の背にもたれた。
頭の後ろで手を組んだ男は、熱を逃がして闇に帰るソレを見送る。

赤く光る箱が次第に紫へと発光色を変えていった。
その箱が青くなる頃に、一人の足音が聞こえてきた。

「ごはんきたよー」

足音の主は部屋までくることなく、開けっ放しのドアからは
階段を響いて十分に聞こえる程度の声が聞こえた。
影に隠れた時計は午前12時を過ぎていた。

男は大して空腹感を感じなかったそれまでが嘘のように
グゥと腹を鳴らすと席を立ちあがった。

「今日のメイン何かなぁー!」

階段を上りながら少し遅れた返事をした。

「もぎょーむんが」

行儀悪いその声を聞くと男は少し反省した。
我が家にも礼儀作法が必要なのかもしれない。
しかしそんなことは何度も考えて、腹を満たせば忘れそうなこと。

「…。」

ふと、暗い階段を下りきる手前にあった張り紙メモに目が行った。

――"飯は2人で食べること"

そう書いてあった。それだけで十分かと思った。
どうやら過去の私はそこを重要視したらしい。

「ティー、その煮物くれ」

真っ先に目が行ったカボチャの煮付。
醤油色が程良く染みた橙色の宝石。私の好物だった。

「このフライくれたら」

少年は箸で自分の弁当のソレを掴んだ。

「…決裂」

男だけの家になってから、昼食は配給弁当になった。
食材は週に2度注文したものが届く。
二人で買い物に出ることもあまりなくなった。
弁当が来て、手を洗って席につけば食事が始まる。

男は手を洗い、冷蔵庫からソースを持ち出して席に着いた。

「いただきます」

 「いただいてます」

弁当のふたを開けると例のフライが既になかった。

「…なぁ」

 「カボチャなら晩に作る」

「おまえが?」

 「もち」

「へぇー」

男はその時、今日が何の日か知らなかった。
カレンダーを見ても思い出せなかった。

「ごちそうさまでした」

 「今日は何かあるのか」

「アメニおばさんがくるかもしれないし」

 「こないかもしれない、か」

「そういうこと」

カボチャにこだわる理由はなかったが負けた気はした。
弁当の一品よりは、皿いっぱいに乗せられる方が嬉しかった。
顔が勝手にニヤけるのが分かった。

「よし。飯も食ったし、そろそろ行ってくるかな」

 「おう。バスなら金忘れるなよ」

「あいあーい」

半分ほど食べた弁当を見ながらふと思い出した。

「"飯は2人で食べること"か…」

最後にカボチャを頬張り、行き場を失った箸を置いた。

「誰が誰に言ったんだろう」

男の記憶には過去がなかった。
覚えているのは自分がどんな仕事をして生きていたか。
それだけだった。

記憶の無い自分に"父さん"と話しかける少年がいて
しかし彼が息子だという実感がなかった。
記憶を失う前の私が何をしていたか聞いてみたが
彼もあまり多くのことは知らなかった。

親の仕事を理解している子供は少ない。
聞いた私もどうかしていたと思った。
母親についても聞いてみたがソレも知らなかった。
困りかねた私は誰なら知っているのかと尋ねると
彼も状況が掴めないのか、泣きそうな顔になった。

「あぁごめんよ。お前は何も悪くないよな」

抱きしめて頭を撫でてやった。
父親として何ができるのかは分からなかった。

それから、父親役が出来ないことに悩んでいたが

「あの年頃にはその程度が丁度いいらしい」

と聞いてからは、あまり人間関係に悩むこともなくなった。

ソレを教えてくれたのが"アメニおばさん"。
少年が唯一覚えていた私の仕事仲間らしい。
彼女と出会ってからの記憶は何となく分かった。

私の仕事はゴーレムを修理すること。
それは私の頭の中にもはっきりとしていた。

家屋の横に工場が隣接していた。
工場には動きそうにない物がたくさんあって
カレンダーにはソレを直すスケジュールが組まれていた。
この状況も私の仕事を物語っている。

記録によると"アメニおばさん"は10年前から私の大口の客で
定期的に修理が必要なゴーレムを送っていた。
私はソレを修理して送り返す。そして金が振り込まれる。
閉鎖的な生活だが恵まれた仕事環境であった。

記憶を失ってから彼女と会うのは今回が初めてだ。
しかし来客のスケジュールは私のカレンダーにはなかった。
おそらく私は"誰か"に生活の予定を管理してもらっていて
それが息子の仕事になる前も"誰か"がやっていたはずなのだ。

仕事場と家屋を繋げる窓の無い廊下には
その人物と築いた教訓が何枚も張り付けてあった。

"呼び名決定!ステアはティーちゃん!"

どうしてそうなったか。"誰か"は発想は豊かな人物だと思う。
そして正しいことを言っている気がした。



「ごちそうさまでした」



一人の食事はむなしい。
















  #001  それぞれの生活













「ひっさしぶりだわ!」




この女。アメニ・シャーロット。ゴーレム研究者であり
暗号解読ライセンスを持つ博士である。
ライセンスを持つ研究者はゴーレムが確認された場所で行われる
遺跡探索・発掘チームに召集される権利がある。

召集にはルールが存在する。

まずは発掘の場合、開拓・建設を中断して調査が行われるため
土地権利者の意見が優先される。
ここでは主に有力な実績を持つ者が召集される。

次に指名された召集メンバーはそれぞれ
自分のパートナー・チームを召喚することができる。
そして国からの指定メンバーを含め、8~10人規模の博士と
それに伴う約100人規模のメンバーで遺跡調査が行われる。

メンバーは国際的なライセンスを剥奪された時点で
無期懲役に準ずる罰則を被ることになる。こうした規則は
ゴーレム技術の漏えい対策は国際的な法律から、血族関係に
罰則を与えるようなローカルな法によっても守られている。


もう一つ、探索の場合。これは主に経済支援者が勝手に
個人にアプローチして行うのでライセンスの有無を問わない。
つまり法の外で起こる事件である。

しかし発掘したゴーレムに関して権利を主張する場合
ライセンスを持つ者がいなければ所有権を剥奪され
発掘所が所属する国有財産となる。

なお、個人が発掘されたゴーレムの所有権を得るまでに
平均10年ほどの時間がかかる。所有するゴーレムについて
国が安全を保証できない場合は危機管理金を納めなければいけない。
など、様々な条件を解決してやっと個人の所有物になるため
古代ゴーレムを所有する人物は上流階級の中でも稀である。

「学生の頃と変わってない…」

エアリア国は4つの区画に分かれている。

1区は国の中心にあり主に居住区である。
2区は東の海側で港を中心とした工業特区となっている。
3区は西の山側で観光都市と本の街として知られている。

そしてアメニおばさんの目的地となる4区。
北西に位置し、山の入り口に当たる。

4区はゴーレムの発掘場の跡地であり、開発途中の地区である。
スウェリアから独立できたのもこれらの発掘の賜物である。

簡単にゴーレム発掘商売の流れを説明すると
まず始めに、冒険者たちが未開拓地を切り開き道を作る。
その途中に遺跡があった場合、そこを拠点に研究者が発掘する。
そこで発掘されたゴーレムは国の技術支援団体、企業、
個人の私有物として買い取られる。金の分配としては
遺跡発掘主催と冒険者が情報料と成功報酬を相談する。
研究者たちにはポイントとしてライセンスに反映されており
主催側からの取引は基本的に禁じられている。

文面だけを見れば研究者たちが損をしているように見える。
ライセンスから給与される額は冒険者のソレと比べると
御駄賃程にしかならない。
しかし、この現状に不満を述べる研究者はいなかった。

実態はこうだ。研究者と主催側の取引は存在している。
そして、取引する物は没収される恐れのあるゴーレムや
事前に研究者側から提示されていたゴーレムである。
この事実は認識されつつも国は目を瞑っている。
事実、国が大企業戦うにはこの方法しかないからである。

これに対して企業側から訴えが無い理由も同じである。
企業側に売り込む研究者も存在するのだ。
お互いに隠しておきたい技術がある、というわけだ。

ゴーレム産業とはそうした灰色の構造で成り立っている。
それは兵器を内包した経済であることを意味していた。

この大まかな流れから推測される通り、研究者である
アメニおばさんはソレをステアの家に預けているわけだ。

勿論、支払いなどは関係機関を通せば済む話で
顔を出す程の用事はないのだが、仕事のついでに
記憶が無くなった古い友達のお見舞いにでも行こうか
という話なのである。

「ん?」

4区の駅に着く前に見慣れぬ光景が広がってきた。
そこには列をなして山の方へ歩く群れがあった。
歩く連中は人間に限らず、小さな動物から
化物のようにデカい連中までいる。が、しかし
彼らは互いを襲うことはないようだ。

ただ列を成して進んでいた。

「なんだなんだなんだ…」

気になってどうしようもなくなった女は
前の席に居る男に声をかけようとした。
前の席の背中にノックを二つ。

「すみませーん」

――――コンコン

返事はない。前の席の男はそういう状態なのだ。
仕方なく、座席から首一つ分腰を上げて周囲を見渡す。
高級座席においては4区まで列車を使う客は少なかった。
二つ後ろの席の女と目があった。
二人は目を大きくした。一人は驚き、一人は微笑む。
アメニは自分の席から一つ後ろに移動して、女の前に来た。

「あれ、何か分かります?」

 「いえ…私にも…」

覚悟していたのだろう。後ろの女は返事が早かった。

「駅とは方向が違うからいいけれど、ちょっと怖いですね」

 「そう?逆に気になりません?
  一体、何が始まるんだ!って!!」

「はぁ。どうにも。わたしは…」

 「ですよねぇ。安全第一ですよね。
  とか言いながら4区まで来たり?」

「仕事で…あっ、でも危ないものではないですよ」

会話は続いた。お互いに退屈だったのか。
知らない同士、答えの出ない会話が始まる。
それからしばらく経っても窓の向こうの列は続いていた。
訴えかけるデモカードを持つわけでもない。
アクションじゃないとすればギャラリー?
何にせよそれだけ集客力のあるものが
その列の先には存在しているのだ。

しかし二人の女はそんな推測とは関係ない身の上話をしていた。
物事の発見はきっかけに過ぎず、そこから生まれてくるものは
必ずしも行動の理由を肯定する結果でなくてもよい。
少なくともアメニの中にはそういう価値観があった。


"時はナマモノ、食わねば腐って忘れるだけ"


――――まもなく4区。4区に到着します。


旅人たちはそれぞれの目的地を浮かべ
列車を降りる支度を始める。
アメニも自分の席に戻ってソレを始めた。
列車連結部から外に顔を出して叫ぶ。

「ハナー、時間!そろそろ降りるよー」

 「はい!分っかりました!!」

金策に困る仕事柄、無賃乗車というわけではないはずだが
アメニの連れは列車の上部にいたようだ。

「もう大丈夫だぞ。おまえはもっと走れる」

ハナと呼ばれた少女はそう言うと風除けにしていた列車の屋根を畳み
屋根の上で吹き荒ぶ風を受け、線路のように続く列を見つめていた。

ソレが繋ぐもの、続くもの。そこには運ぶ何かがある。
それを考えただけで嬉しくなったりもした。

「ハウワズユワデイ!!」

ハナは両手を振って叫んでいる間に4区の駅が見えてきた。

「テリフィック!」

列車内に戻りアメニと合流して荷物を持たされるハナ。

「重ぇ。しかし外のアレはなんですか?」

 「さぁねぇ?」

「あんな行列は今まで見たことない。エイプリルマーチです?」

 「違うと思うけれど。
  学生時代に過ごしただけでもう何年も離れてるから…」

ハナはキョトンとした目でアメニを見ていた。

「…。」

 「何よ。学生時代があったら悪いわけ?」

歳の話にはあまり突っ込みたくないし
いい大人になったら数えたくも聞きたくもないだろう。
若い奴はこれだから困る。
アメニはそう考えていたのだが、ハナの答えは次元が違った。

「博士にも先生がいたので、まだ学生かと思ってました」

 「…。」

アメニは呆れて降車口に向かって歩き出す。
ハナの言う"博士の先生"とやらに急に預けられたのが
このゴーレムオタクの不思議少女だった。
たまに変な言葉を話すのは親の影響らしい。

「フフン。あと少しだ」

ハナはステアの家に預けられることになっていた。
男ばかりの家、というのが少し可哀想だが
自分がこんな子の面倒を見るのだけはゴメンだ。
大体、子供は会話をするだけで疲れる。

そういえば…。ステアはもう16歳。
早ければ自分の"移動機‐モビール"でも持ってるかな。
だとするとどう考えても2人乗りが限度。ハナはどうするか…。

列車に乗っている間はそんなことを考えていたが
列車を降りた頃にはもうそんな心配は消えていた。

「ハナ。荷物を持って先に行ってて。
 行先は分かる?メモは持ってる?」

 「はい、大丈夫です。バスなんてお手の物です。
  でも、何か用事ですか?」

「私はアレを調べる」

アメニは駅から線路に続々と降りていくその集団を
これでもかというほどのポーズで指差した。

「確かに気になります。分かりました。
 先方に何か伝えておくことはありますか?」

 「そうだな…。晩飯は私のおごりだと伝えておいて」

「太っ腹!」

 「あらどうも」

ハナが腹をポンと叩きながらそう言ったのを見て
何かにイラッとしたアメニはその場から追い出すように
背を押して駅の階段まで送ってやった。

何だろう。今はまだハナのことは全然分からないけれど
それが分かったところで私はハナを好きになれないだろう。
列車に乗って10分も経たぬうちに外に出ると言いだしたときから
ハナが私の嫌いな部類であることは分かっていた。
その性格はステアの父、ベルーノ先輩にも似ていた。
余計なことばかりして、周りを困らせるタイプだ。

「ご武運を!」

そのハナの言葉。私も心の中で繰り返して手を振った。



「さてと。ティーちゃんでも探しますか」



先に言っておこう。私は美人で、酷い女だ。



NEXT → #002
2009-06-05 02:25

創作のひとコマ※

※5日10時半 修正分
ダイアナの「甘えすぎたのかも」以降に理由を追加。


「我々は誓おう。
 汝の死をもって命の平等を示し
 共に人間として生きていくことを」

男の声は半球の天井から出口を求めるように
建物の中を駆け巡っていた。

「スウェリアが4つの王ケンブレア。
 ここにマレ・エイバンの死を証明する」

それ以外の声は聞こえない。静けさの中には人の音が聞こえた。
咳き込む音、咽ぶ音、啜る音、しゃくり上げる音。
多くの人が悲しみを受け入れようと、心を隠せなかった。
彼らは半球の丁度真ん中にあるソレを見つめながら
何の力にもなれない、叶わぬ何かを祈っていた。

「愚かだ…」

スウェリア王の傍らにいた鎧の騎士はそう呟いて
ソレに一人で近づいていった。

外からはもう見えないが、逆三角のソレの中には男がいた。
マレ・エイバン――その人物である。

「さようなら。エイバン先生」

騎士はそう声を掛けて、ソレの足元にある大剣の柄を握る。

「僕は君でよかったよ。アンジェリカ」

ソレは微かに笑ってそう言った。
その笑い声を隠すように剣先を引きずりながら
儀式のような見慣れない動きをした後、体の正面に大剣を構えた。

「呪わないでくださいね」

 「あぁ。ほかにやることができたしね」

「…んふふ。私の覚悟は――」



――――――――ガッ!!



「――無駄だったのかしら?」



――――――――ドシュッ!!


「…。」

騎士が大剣を掲げ、振り落とし、そして突き刺した後
ソレから返事が聞こえることはなかった。

騎士は深呼吸をすると大剣を少し下げ
滴る色がソレから伝って来るのを待った。

「…。」

鍔から滴る色を見て、大剣を一気に引き抜いた。
そしてまた、儀式のような動きをして大剣を元に戻し
騎士はスウェリア王の傍らに戻っていった。

それと同時に、今度は神父が出ていった。
二人は会釈を交わしながらすれ違う。
そのすれ違いざまに神父が言った。

「この音が悲しみに聞こえるなら――」

騎士は振り向いて神父を見た。

「――間違っているのは世間でしょうな」

騎士は「抑えろ」と片手をあげて神父を見送り
スウェリア王の隣にある小さな椅子にドスンと座った。

「不条理」

兜を取った騎士アンジェリカは隣の王に愚痴をこぼす。
スウェリア王ケンブレアは膝の上に重ねていた両手を外し
少し背にもたれて腕を組んで見せた。

「それ以外に国が滅びる理由があったかね」

二人は首を傾げ、横目を合わせた。
アンジェリカは眉をあげておどけてみせたが
ケンブレアは視線を逸らして前を向いた。

「白騎士ともあろう人が…」

ケンブレアとは反対側からした声の主に向かって
アンジェリカは首をグルンと回してガンを飛ばす。

「人間ですから」

右も左も敵になった状況で仕方なく前を向いた騎士。
騎士の後ろにいたスウェリアの右大臣はそれに安堵して
顔を両手で隠し、一つため息を着いた。

「ヒッ」

両手を離した。その前にいた騎士は逆様の顔でこちらを見ていた。

「ダイアナ。まだ終わっていませんよ」

ため息をつくには早すぎる。自分だけが問題児ではないぞ、と
アンジェリカらしい警告を周囲に発信していた。

マレ・エイバンの葬式はまだ終わっていない。
それは"怪人法"と呼ばれた協定制度の一つ

『齢三○○を超えた人間には死を与える』

という項目の執行であり、その文字の指すところは
魔法使い狩りに他ならなかったのである。

もちろん魔法使いに縁ある者たちはこれを快く思わず
特にマレ・エイバンたる人物の葬式となる今回の執行には
何万という人が彼の下に集まるという事態となり
国を挙げての厳重警戒の下で行われていた。

執行地エアリア国は、スウェリア国から独立し
マレ・エイバンの協力の下で繁栄してきた。
彼はいわば"国の父"のような魔法使いであった。

"竜"の名を持つ組織が執行を阻止すべく
何度か彼を国外へ追いやったこともあった。しかし今回は
その当人、マレ・エイバンからの執行の申し出であり
当人にその意思がなければ"竜"は動けない。と踏んでいるが
執行に対する不安は関係者の誰もが拭いきれない状況であった。

「何をするの。エイバン先生」

最後の言葉が引っ掛かるアンジェリカ。
次第にブツブツと独り言を漏らし始めた。

「――ったのに…。死ななくても、よかったのに」

その独り言が不気味でダイアナは不安そうな顔をしている。
その隣、ケンブレアの後ろにいた左大臣マルクスが呟いた。

「彼女の言うとおり。何度だって逃げれたはずだ。
 でも逆に言えば、死ぬ必要があったのかもしれない」

ダイアナの顔は余計に不安の色を帯びた。

「執行自体が…」

そう言いかけたダイアナの脳裏に過ったのは
エイバンが味方であり敵であるという
この奇妙な事態を納めるには丁度良いフレーズだった。

「先生には甘えすぎたのかも」

エアリア国、スウェリア国を含む大陸の国々は災害により
国際連盟からの経済的な援助を必要とした。その引き換えとして
"怪人法"を含む協定を結ばなければいけなかった。

もはや魔法使いに頼っていては街も人も廃れてしまう。
大きな力がなくとも、自分たちでできることを増やしていこう。

大陸から海を越えた場所―"外大陸"では、魔法使いの存在は
もはや民を守る職業としても機能していない。
その常人とはかけ離れた能力は犯罪者と同等の扱いであった。

"外大陸"の国際連盟からすれば、犯罪者を囲うような国として
問題視されていた未知の大陸だったのだ。

マレ・エイバンはその考えに対しては肯定的だった。
しかし、"外大陸"から命を狙われるたびにソレを回避した理由は
大陸の国々に希望を見出せるほどの未来を約束する国になりえるかと
執行人を通して"外大陸"を見極めていたからだ。

ダイアナは信じていた。
エイバン先生は犠牲になりつつも"国を思う者"であり
だからこそ、何度でも生きて帰ってきてくれる。
だからきっと今回も大丈夫。そんなふうに甘えていた。

「まぁ、それ考えるのは今でなくてもいい」

マルクスがそう言うと葬式も次第に景色を変え
歌の準備が始まった。ザワザワと人の声が聞こえてきた。

「しっぽを探すんだ。猫は茂みに隠れてる」

アンジェリカは目を丸くした。今の声はエイバンの声だ。
しかし周りに聞いてもそれを確認した人はいなかった。
あぁ、ついに疲れが出てきた。空耳か。と思っていた矢先

「やっぱり。若い君でよかった」

皆は歌い始めた頃、アンジェリカだけが立ち竦んでいた。
何の事だか分からない。話しかける声の主は誰だ。
ただ一つだけわかっていることがある。

彼が死んで、それでも生きることが可能であるとすれば
それは彼が神か悪魔になったということだろう。

「お疲れさま」

執行は無事に終わったように見えた。




アンジェリカの呪いを除いて―――――――




(゚∀゚) つづく


あかんわ…。
創作楽し過ぎて、一度スイッチ入ると勉強に身が入らん。


時系列がバラバラになるけれど、1章で一番インパクトのある場面を
最初に持ってきて構成してみた。魔法使いを処刑する場面。

でもこれが、どれくらいの人が読んで理解できる文章なのかは
読んでもらわないと分からないんだよねー。

難しい。絵と合わせて漫画にすれば読みやすいだろうにな…。

まぁ、アンジェリカとその仲間たちを楽しんで頂ければそれでよし。
ちなみに右大臣左大臣の意味とかよく分かってなくて
二人くらいでいいかなって思っただけなんだ。
でも役職なんて勝手につけてもいいよね(゚∀゚)



おやすみなさい。そして、おはよう!!



明日は頑張る。休みだし。勉強しる。うー!


P.S.
ちなみにこの物語の主人公はアンジェリカではありませn
彼女は準レギュラー。

※5日10時半 修正分
ダイアナの「甘えすぎたのかも」以降に理由を追加。

3件中 1件〜3件を表示