しょーりにっき

外部公開用

プロフィール

しょぉり、と読みます。
しょーりでもいいです。
わかる程度に適当に呼んでください。

好きなモノを好きなように描いて楽しむためにここに居ます。
好きなモノには実在人物が含まれます。(主に上司・2017現在)

前は古いゲームのリプレイをネタバレ多すぎ感傷ひたりすぎで書いてました。
言ってることが気持ち悪いですがイジメないでください。

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10月30日
01:47

有言実行。今日もゲーム漬け。三国志戦記2再開。

   ◆


曹操「ふーん、じゃ、
   ま両方の意見聞いてみようか。
   司馬懿、申してみよ。」

司馬懿「劉備を放っておいては
    後々困ったことになりましょう。
    ここはまず荊州を押さえましょう!」

曹操「じゃ、郭嘉。」

郭嘉「南の孫権を

曹操「よっし採用!皆の者、敵は孫権だ!
   呉への侵攻にむけて準備せよ!!」

司馬懿「・・・辞めたい、この軍。」

郭嘉「わかってはいても
   最後まで聞いてもらいたいのですが。」

曹操「なぁーにをしておる郭嘉!
   さっさと準備せよ。
   南へ行ったらな、俺は象に乗るぞ!象に!」

郭嘉「殿、それは違う作品での設定にございます。」

キャッキャする曹操をなだめながら、

あれ?俺は頭痛持ちじゃないのにな。
アタマ・・・痛くなってきたな。

そう思う郭嘉であった。

さて、頭痛を訴えて郭嘉が退出すると、

正気に戻った曹操様は武将の顔に戻り、

軍団編成表をながめはじめました。

おお、いつのまにか俺の軍団

もう1部隊分余裕ができてるじゃないか。

曹操軍団  軍師: 郭嘉 荀彧

従軍 夏侯惇 夏侯淵 李典 張郃 張遼

徐晃軍団  軍師: 荀攸 程昱

従軍 許褚 典韋 陳宮

高順軍団  軍師: 沮授 司馬懿

従軍 曹仁 楽進 于禁

編成を確認すると、準備を整えて出発。

未統治の汝南、譙を曹操色に染めながら

一行は孫権領へと向かう。

途中、夏侯淵に火矢速射をつけてあげようと思ったら

彼、弓系部隊持ってないからダメだそうな・・・。

え?弓の名手じゃなかったか??

・・・まずは寿春で敵の先鋒隊・朱桓軍団と戦闘。

こちらも良い訓練になるだろう、と高順軍団を出す。

一日目、いきなり沮授さんが発石車を組む。

二日目、発石車に一斉投射という戦法が

存在することを知る。

敵に使われたらキツいな・・・。と思いつつ使うw

2400人を撃破したものの速攻壊された・・・。

三日目、敵兵糧庫のせいで先制されやりたい放題

叩かれて、司馬懿敗走。

その後も于禁・楽進敗走と兵糧庫を破壊する

五日目までに敗走が相次ぐ。

なんでこんなに弱いのかな??

こっちは兵糧庫建てられないんだもんなー・・・

司馬懿をクビにして賈詡と交代。

後始末に曹操軍団が出向く。

乱射だの速射だの火炎放射(笑)だの、

弓矢系スキルがうざい。

名将李典さんの大活躍と最後にオイシイ所を

かっさらった張郃によりやっと勝利!

徐晃軍団は次の戦のため温存。

vs黄蓋率いる呉の名将で構成された少数精鋭!!

おっと。なんかウチにも兵糧庫があるぞ?

作れる条件が説明書よんでもわからんのだが・・・

どこに書いてあるのだッ!!

まー兵数倍だし両軍兵糧庫があるという状況なら

負けんだろう。ついでに川を進軍してくる相手に

川の上から矢倉をたて掃射。

大将徐晃を中心とした連鎖で、

細かく混乱を喰らいながらも安定して進めていく。

連鎖時の、戦法の成功確率が上がる所で興奮する。

徐晃に援護を覚えさせたのは正解だった。

連鎖入れやすい。

全部隊撃破できるハズだったのだが、

陳宮がやる気マンマンすぎて陸遜隊は

取り逃がしてしまった・・・。

ちょっと気付いたことをメモ。

1.兵糧庫は自分で建てられないようだ。
(条件については今後も観察継続)

2.大将に援護があると
  安全かつ便利かもしれない・・・。

3.必死で兵糧庫を壊してる間に負ける。
  進軍ついでに壊す、が正解か?

4.今回は兵科と成長関係ないもよう。

5.兵器設置すると壊しに来るので誘引に使える…?

・・・まあ、間違ってたらあとで訂正。

あくまでもこれは 個人の日記 なんだし。

と、以上のデータからちょっと兵科いじる。

曹操軍団

曹操:重装騎兵 荀彧:建設兵 郭嘉:歩兵→建設兵

夏侯惇:槍兵→鉄甲騎兵 夏侯淵:重装槍兵

李典:歩兵→軽騎兵   張郃:軽騎兵

張遼:槍兵→重装騎兵

徐晃軍団

徐晃:歩兵→重装槍兵  程昱:建設兵

荀攸:軽歩→建設    許褚:歩兵→重装槍兵

典韋:槍兵→重装槍兵  陳宮:歩兵→長弓兵 

高順軍団

高順:軽騎兵 沮授:建設兵 賈詡:歩兵

楽進:軽歩→長弓兵 曹仁:歩兵 于禁:弓兵

軍を整えて向かうは濡須口。vs太史慈軍団。

敗北条件:15日経過・・・これは厳しい!

おまけに敵は森に囲まれた場所に陣取っていて

マップは狭くとも進軍が容易ではない。

兵数では曹65000vs孫35000と有利。

それを生かし、張郃と夏侯淵は敵陣裏に回らせ

兵糧庫や矢倉の破壊を任せる。

えっと、二日で陵統捕縛。

しかし太史慈・甘寧の大暴れがマジ辛い。

敵の連撃指令の使い方が痛いので、

こっちも使ってみる。喰らえ、夏侯惇の三連撃!!

「どぅぅぉるゅやぁぁあっ!」えっれぇ巻き舌です。

に、対して。

んぎゃああっ!出た!呉軍お得意の火計!

あとあっちこっちで援軍にくる魯粛。

荀彧・郭嘉の双武連撃で捕縛。

ひとつも武じゃない・・・。

必死で戦ってみたところ、褒賞条件達成。

あと、終わったら

急に太史慈がしゃべりだしてびっくりした。

一方、今回全然敵と当たってない夏侯淵はご不満の様子。

夏侯淵「今回俺ずっと兵糧庫破壊だよ!
    一緒に作業してたはずの張郃は
    いつのまにかまたオイシイとこ
    もって行きやがるし!!くそっくそーっ!」

孫権を滅ぼすといいつつも、実際は

濡須口突破がキーだったらしく、状況が変わる。

劉備が馬騰と同盟したのにびっくりしちゃった

司馬懿が独断で馬騰を謀殺したというのである。

曹操様は迅速に軍を南から引き上げた・・・。

10月29日
06:09

一進一退を繰り返し軍備を整え、210年末長沙を奪取。

211年5月、さらに先の桂陽を制圧。

もう本当に公孫瓚様は長くない。

存命中の統一無理そうだ・・・。趙雲なのになあ;中の人がアタマ悪いから;;

6月1日、曹操様が桂陽を取り戻しに来る・・・が。

獲れると思うかい?・・・8日で撃退。

8月、呂布兄ィに頼んで軽く南海(曹操軍首都)制圧。


11月、交趾占領、12月、雲南占領。

212年、公孫瓚様皇帝に、国号は燕となる。そして袁紹殿他界。

213年1月、成都攻略・統治都市変更。9月長安攻略・統治都市変更。

軍を動かしやすいよう大都市狙って移動してます。

10月、劉璋領にて戦役発令。5月、戦役に勝利、劉璋軍滅亡。

残り曹操1都市、馬騰4都市!6月戦役発令9月勝利!馬騰滅亡!

10月、曹操軍残りの1都市を攻めるため南海へ移動。

そして最後の戦、あと1都市。

兄者、一緒に行こう。

関羽殿、ついてきてくれますか?

それから、郭嘉。隣に居てくれ。

援護は、張郃殿に頼みます。

さあ、出撃だ!・・・で、終われないw

一度負けて214年2月、城壁突破で曹操軍は最後の都市建安を放棄。

戦功第一は関羽殿、第二は張郃殿、第三は兄者。

ギッリギリ、公孫瓚様がご存命のうちに天下統一達成☆

ああ、どうやら荀彧はそれからも趙雲を支えてくれて・・・

って、確かに一緒にいたけど、

どっちかっつったら郭嘉のがベタベタしてたのにw



まあ、いいや。

ねぇ殿、趙雲は頑張りましたよ。

本来よりもきっと、ずっと待たせてしまったけれど、

満足ですか?・・・私はね、満足でした。




最終称号:顔利きの武神    統一日数10820日

10月24日
23:18

 「おい、お前の“守ってる”ってあのガキ、ありゃどうなってんだ。」
 低い声でそう投げかけた黒衣の男は、夜明け間際、漆黒から濃い紫色に変わっていく、目覚めはじめた空のグラデーションを写し取ったような、長い髪をしていた。
 彼は時に、黒いもやであったり、今のように黒ずくめの大男であったり、時にスズキの古い知人を名乗る者であったりした。
 「見たままさ。くわしく話すと長くなっちゃうんだけど、いいかい?」
 雲間から差す、帯状の太陽光。
 その神聖さを、そのまま まとったような、明るい長い金色の髪をした男、スズキが答える。
 彼らは対極をなす性質の魔物であり、その姿もまたそれを象徴しているように見えた。
 「別に、そう忙しいわけじゃない。」
 その言葉を承諾と受け取って、スズキは話し始めた。
 その瞳に過去が映し出されているかのように、どこを見るともない目をして。
    ◆
 天使や悪魔と呼ばれる彼らは、本当は人の心が生み出した怪物だった。
 もちろん、人間の信じるそれらとは確かに別物なのだが、その性質は、と言えば、同じようなものだった。
 そして、人の心から生まれたが故に、人間が思う天使や悪魔の概念に、その存在を全てではないが、強く縛られていた。
 だから、お互い相手を快くは思っていなかった。
 となれば、このようなことも起こりうる。
 「てめえ、”悪魔”だな?その人から離れろ!」
 自信にあふれた瞳をしたその黒髪の青年は、人ではなかったから、同じように人でない敵を気配でかぎわけると、心で話しかけた。
 長く人の間にいる彼は、それを言葉にしてしまえば人間からは”ヤバい人”にしか見えないことくらい、人でない身であっても心得ていた。
 話しかけられたそれは、ゆっくりと青年のほうへ青白い顔を向けた。
 こちらも黒い髪をしていたが、それは異常なほど、十分に不気味さを感じさせるくらいに長く、立ち上る妖気にゆらゆらとゆれているような錯覚さえ起こさせた。
 細い眼が淡く、紫色の光をともらせる。
 「こいつは、死にたがっている。もう止められん。」
 こいつと呼ばれた、土気色の顔をした中年男に、彼らの心でかわす会話は当然聞こえず、雑木林にどんどん分け入っていく。
 手にした紙袋には、ロープと、数冊の本。
 首でも吊ろうというのだろう。
 止めなければ、彼は自ら命を絶ってしまう。
 “天使”は焦っていた。
 「止まらないかどうか、試してやるよ!」
 その背に、まばゆい光がほとばしり出る。
 光は翼を形作っており、こうなれば誰が見ても、彼が天使であることは明白だった。
 自殺者の目には、それが映らない。
 力ない足取りで、だが確実に彼らを置き去りにして、もはや一番近い道路さえまったく見えないほど奥深くへ進んでいた。
 “天使”の翼は、彼を引き止めるためのものではない。
 素早く羽ばたくように翼が動くと、その羽の一枚一枚が羽ばたきの速度のままに伸び、一瞬前まで“悪魔”の立っていたあたりの地面を、何重にもざくざくと突き刺し、えぐった。
 宙に体を浮かせた“悪魔”の背には、コウモリの翼の形に空間を切り取ったような闇が、“無”そのもののように広がっていた。
 「おいおい、そう焦るなよ。もっと二人の時間を楽しまないか?“天使”よ。」
 愛しい女にでも話しかけるような甘い言葉は、もちろん愛情からではない。
 時間を与えれば与えるほど、先ほどの人間が死ぬ確率があがる。
 “天使”は答えず、身構えた。
 悪魔が、踊るように優雅に体をひねると、回転にあわせて加速しながら、黒い翼が死神の鎌のように“天使”を襲った。
 なんとかかわしたものの、その速さ、威力は、“天使”の比ではなかった。
 今まで、こんな相手はいなかった。
 “天使”は、初めて自分の死というものを意識した。
     ◆
 抵抗する気力すら残らぬほど“天使”が傷つくのには、そうたいした時間はかからなかった。
 自分より強いものを知らなかった“天使”が、初めて知った敗北だった。
 それを経験として受け入れ、やりなおそうとするには、彼の無敗は長すぎた。
 長い時間をかけ、彼の中で作り上げられてきたプライドや自信は、まさに今の彼自身のようにズタズタに引き裂かれ、修復の見込みもなかった。
 もとより“悪魔”が“天使”を生かしてなどおくはずもない、と彼は思った。
 「おキレイな天使様におかれましては、“悪魔”が人との契約で力を増幅させることなど、ご存知なかったかな?…くくくっ」
 投げ飛ばされたまま、起き上がることもままならない“天使”の顔を、膝をついて覗き込み、愉快そうに、そして意地悪そうに悪魔は笑った。
 そんなことを知らないわけではなかった。
 だが、ここまで強い“悪魔”に、たまたま今まで出会ったことがなかったのだ。
 彼は、眼を閉じ、黙って訪れるはずの最期を待った。
 だが、その“時”はいつまで経っても訪れなかった。
 眼を開くと、“悪魔”は消えていた。
 それは“悪魔”にとって彼が、とどめを刺すほどの価値すら無いことを意味した。
 だが、悔しさよりも、今はあの人間の安否が気にかかった。
 気配をたどり、追いかけた彼が見たのは、男の死体。
 体から抜け出した生命エネルギーや、残留思念のようなものが、何も感じられず、ただぶらさがっているだけの物体に成り果てているのは、それらのエネルギーを全て“悪魔”が食ってしまったせいだ。
 “悪魔”に魅入られた人間を目の前にしながら、守れなかったのだ。
 彼の正義、使命感は、その意味を失った。
 そして、彼自身の存在意義すらも大きく揺らいだ。
 “悪魔”はもうそこにはおらず、ただ気配の残り香のようなものだけが微かに感じられた。
 たどって追いつけるような距離には、もういないだろう。
 追いついたとして、何ができる?
 叫んだ。
 気付かぬ内、泣いていた。
 もしも彼が、まだ生きることを望むなら、いくらでもそれは可能だった。
 傷ついた小動物などの姿で、心ある人間の前に現れるだけでよい。
 もとの姿よりも小さく変わることは、比較的エネルギーを節約できるから、今の彼でも何とかできる。
 あとは、人間が回復のための力を与えてくれる。
 『神様、この子を助けて』
 『はやく元気になってね』
 他者のための純粋な祈り。
 『きっと治してあげるよ』
 『守ってあげる』
 無償の愛、優しさ。
 それは“天使”にとってこの上ない力となるものだ。
 ただ、彼にはもう生きたいという意思も、希望も残っていなかった。
 罪の意識、無力感、挫折、後悔。
 そんなものばかりがぐるぐると渦を巻く彼の心は、死を受け入れ、望み、彼自身をゆっくりと侵食していった。
 先ほどまで、人のような確かな質感を持っていた彼の体は、急速に、幽霊のように半透明に透けていき、
 彼が、“自分が守っていると思っていた”町に戻った頃には、“視えるタイプ”の人にしか見えない、幽霊そのもののようになっていた。
 それから何日もかけて、ゆっくりゆっくりとその存在を少しずつ失いながら、ほとんどの人の意識の外側から、彼は、自分が守りたかったものたちを眺めていた。
 今は、児童公園のベンチに腰掛けて、無邪気に遊ぶ子供を眺めている。
 このまま消えていこう。
 彼は、思っていた。
 守れなくて、ごめんな、みんな。
 限りある命を、ありったけの力で輝かせることができる、人間。
 他者に優しくすることができる、時に自分を犠牲にすることができる、人間。
 たいした力もないくせに、大切なものを守ろうとする、人間。
 希望を知っている、人間。
 おれたちを生み出してくれた、人間。
 いろんなものを愛することができる、人間。
 おれも、あんたたちを愛していたよ。
 あんたたちがそうするように、愛するものを守りたかったよ。
 だけど、おれには力がなかった。
 もう全てが、見えないカベを隔てた向こう側。
 力がなかったその罪で、
 自分の守れる以上のものを愛してしまったその罪で、
 おれはもう、消える。
 自分の意思で消える。
 それが、償いだ。
 愛しそうに、悲しそうに人を見つめる彼を、“視える”人は霊として恐れたり、関わらないようにした。
 それさえも、人の自然な反応であることがわかる彼には愛しかった。
 「おまえ、なんでトーメーなの?ユーレー?」
 まったく唐突に横から投げられた言葉は、衝撃を持って彼に届いた。
 まさか、と思ったが、声の主は、まっすぐに彼を見ていた。
 5、6歳くらいの、男の子。
 きらきらした瞳は、生命力にあふれていた。
 このまま、まっすぐに育てば強く、美しくなりそうな心、他の人より少しだけ優しい魂をもった子供であることが、“天使”の彼にはわかる。
 それも環境しだいでは、いくらでも“悪魔”のおいしいエサとなるような、腐った魂に変わりようがあるのもまた事実だが。
 とにかく、今のこの子供は、“天使”と波長が合うような無邪気さ、優しさを備えていた。
 だから、幽霊のようになってしまった“天使”を“視る”ことができたのだろう。
 “天使”は儚げに微笑んだ。
 「はは…おれ、もうすぐ消えちゃうんだよ。」
 「きえちゃう?」
 「そうだな、死ぬってことだ。みえなくなって・・・消えちゃうんだ」
 フン!と子供は荒く鼻息を吐いた。
 「おまえ、それちっげーよ!」
 どんなおかしなことを言うのだろう?
 思いがけない反論に驚きながらも、きっと子供なりのトンチンカンな理屈だろう、と、“天使”は期待してしまう。
 これが人間と話す最期かも知れないな、でも、だれかと話せてよかった。
 そんなことを思いながら。
 「死んだって人はきえないんだぞ!みんなのココロにいきるんだよ!」
 得意げに、だけど心から信じきっている顔で子供の口から出てきたこのセリフは、おそらくアニメかなにかの受け売りなのだろう。
 だけど、確かにこの子供はそれを信じていた。
 ぽかん、と口を半開きにして見つめられ、子供は、
 おれ、やっちゃった?
 カッコつけすぎたかな、と幼い脳みそで考えた。
 震える声で、“天使”は、今の自分よりもずっと天使らしく見える子供に
問いかけた。
 「じゃあ、おれは、キミの心に生きるのかな?」
 子供には、それが笑いを押し殺しているように聞こえ、…ひっこみがつかなくなった。
 「いきるよ!」
 当たり前じゃん!というように答えたのはそんな強がりもあったが、アニメの中のヒーローを彼は本当に信じていたから。
 「そうか、…そうか!ならおれは、キミの心に生きよう!」
 両目から、きらきらと光る涙をあとからあとからほとばしらせ、声をふるわせながら“天使”はそう言い、子供を抱きしめた。
 「おぉ?!」
 子供は少し驚き、小さく声をあげた。
 子供を抱きしめながら、体の外側から徐々に“天使”は光になり、ほどけ始めた。
 希望も、生きる力もなくした彼に、最期にもう一度与えられた希望。
 許してくれるのなら、人の心に生きよう。
 人として生きよう。
 死んだって人は消えない。
 俺は、人じゃないけど、死んで行こうとする俺にそんな優しい言葉を、一生懸命かけてくれたこの子のココロで。
 自分の心におれを受け入れてくれた、そんな人間を信じて。
 この子が迷うのならば、正しい道を選べるように。
 助けたいと思った人を、助けられるように。
 希望をなくさぬように。
 おれはこの子の力になろう。
 だけど、この子がこの子らしさを失わないよう、俺は永遠に眠ろう。
 それは、死ぬのではない。
 眠るだけ、この心地よい、小さくも広いすがすがしい心の中で眠るだけだ。
 絶望は、すでにない。
 寂しさも、恐怖もない。
 ただただ、希望のみが満ちる。
 おれはいつでも、きみと一緒だ…
 きみと…
 最期の小さな光のかけらが、消えた。
 自分を抱きしめていた青年が急に消え、子供は、あたりを見回す。
 「あれ?どこいったんだよユーレー!おーい!」

 やがて、子供は何の変哲もない普通の少年に育つ。
 普通の、“いい奴”に。
    ◆
 スズキが、懐かしんでいるような、そして少しだけ悲しそうな眼で語り終えた。
 「その天使、覚えてるな。」
 黒い男が、悪びれた風もなくつぶやく。
 ほとんど色のないその瞳が青い空をみつめている。
 この高い青い空に、記憶の中の何かがあるとでもいうように。
 「うん、きみが痛めつけてくれたんだったよね。」
 スズキは、困ったような微笑をうかべた。
 「で?その子供が、あのガキなんだろう?」
 スズキが“守っている”という“ガキ”が、アキヤだった。
 「そう、アキヤのココロで眠りについたのが、僕の友達だった“天使”さ。ぼくら“天使”は、君たちみたいに片っ端から共食いはしない。自我を持った、気の合う同種は友達になることだってあるんだよ。」
 寂しそうだが、恨んでいる口調でないのは、この悲劇が、本人が死を選ぼうとした結果であることを、よく承知していたからだ。
 黒い男が彼を叩きのめしたことがきっかけだったとはいえ、彼の友達は助かる道を自ら捨てたのだ。
 スズキは、友達がぼろぼろになって自分達の町へ帰ってきたとき、人を守れなかったこと、”悪魔”との戦いに負けたことを聞いた。
 ただならぬ様子に、彼の心の状態を知った。
 「…ごめんな」
 話の最後にそう言って、彼はいつもと違う顔で笑った。
 その表情は、彼の心の傷がとても深いこと、友達である自分にも、容易に解決できるような状態でないことを物語っていた。
 スズキは何も言えず、ただ心で祈りながら友達が立ち直るのを待った。
 そして、友達は消えてしまった。
 スズキは、友達が消えてしまった町にひとり残った。
 せめて、彼の守りたかった町を自分が守ろう、そう思った。
 10年後、その町で彼はアキヤと偶然出会い、その心に間違えようのない、いなくなった友達を感じた。
 理性も何もかも吹き飛んで、彼は少年の心を勝手に探り、遠い昔の記憶を見つけだす。
 全てを知り、彼は少年を守護しようと決めた。
 友達の安らかなる眠りと、最期に友達が信じたこの少年を、命に代えても守り抜くと。
 なぜなら、祈りは、通じない。
 神様なんていないのだ。
 当然本物の天使も、悪魔も。
 正しいものが、悪から守られるとは限らない。
 信じても、救われるとは限らない。
 確かなのは、今ここにあるこの気持ち。
 「これが、アキヤが“何”なのか、っていうきみの質問への答え。ほら、長くなっちゃったでしょ?」
 本当は、まだ話したいことがある。
 あのころから、いいや、もっとずっと前からきみにききたいことが。
 口には出さず、スズキは一人心の中でつぶやく。
 だけど、今は言うわけにはいかない。
 それこそが、僕がこの町にきた理由、とどまる理由。
 僕はきみを、見定めたいんだ。
 消すべきただの悪魔なのか、信じる価値ある存在なのか。
 「長いわりに、つまらない話だな」
 スズキの葛藤を知らない黒い男は、相手を思いやることもなくストレートに感想を吐き出す。
 「何とでも言えよ。聞きたがったのはきみだ。あ、それから、今回は何もなかったから許すけど、次アキヤに何かしたら、ただじゃおかないからな!」
 今となっては、アキヤも大切な友達だ。
 彼と、彼の中に眠るかつての友。
 もしそれを同時に失ってしまったら、奪われてしまったなら、そのときこそきっと自分は黙ってはいられないだろう。
 本気でそう思う彼は、真顔で黒い男に言う。
 おそらく自分より、ずっと大きな力を持つ魔物に。
 「ただじゃおかないだと?俺とお前じゃ勝負にならんぞ。ま、あのガキよりお前のほうが観察対象としちゃ面白い。何せ、天敵のハズの“悪魔”とこうして平気でダベってられるんだからな。・・・ふん、あんな面倒くさいニンゲン、お前にくれてやる。」
 あまり人の多くない、小さな通りの隅。
 背を向けた、黒い男の影が遠くなる。
 それを見送りながら、一人になったスズキは、決意を新たにするようにつぶやいた。
 「そう…守らなきゃ。神様なんていないから、僕は…僕が。」

10月18日
03:08

 「亘、お友達スイカ食べる?」
 ドアの向こうから声をかけてきたのは、鴨井の母だ。
 「あー、よろしくう。」 
 室内から鴨井が答える。
 ここは彼の部屋だ。
 “お友達”のメンツは、アキヤに、りあん、そしてもう一人、今日は庭月ではない女の子がまざっていた。
 浦野 蒼子(うらの そうこ)だ。
 「さー、じゃ電気消して、はじめよっ!」
 夏の一大イベント、とかなんとか言って、わざわざみんなを集めたのはこの蒼子で、何をするかといえば、百物語だ。
 とは言ってみても、みんなそんなに怪談のネタがあるはずもなく、結局ただの友達同士の集まりでしかない。
 コワイの大好き!な蒼子が、強引に進めたこの集まりは、テキトーにみんなで怖い話を披露しあったあと、彼女の持ってきたホラーDVDを見る、という計画になっていて、みんな蒼子の言うところの“百物語”よりも、見ると眠れなくなるというそのホラー映画の方が目的だった。
 その後も、女の子を家まで送りつつ、ちょっとした近所の心霊スポット(あくまでローカルかつマイナー)をみんなで通ってみよう、ということになっていた。
 「じゃ、アタシからいくね。」
 蒼子が神妙な顔つきで語り始める。
 「この前、ガッコー行くときにね、朝アタシの目の前を、“黒猫カマボコ宅急便”の車が通り過ぎたのね。黒猫かぁ、エンギ悪いなあ、って思ったんだぁ」
 「ぃゃ宅急便だろ・・・」
 アキヤがツッコんだが、見事になかったことにされ、話は続いた。
 「でね、あぁ、やだな、運悪いなーって思ってたらぁ・・・その日のテスト、17点しかとれなかったのぉおおおお!たたりだよねぇえええ?!」
 「たたりじゃねええええええ!!!」
 今度こそビシっとアキヤのツッコミがきまり、鴨井とりあんが笑ってそれを見ていた。
 「じゃーアキヤが次ね!アタシより怖い話しなよね!」
 そもそも怖い話として成立していないようなものを語っておきながら、立場もわきまえず蒼子は挑戦的にアキヤを指名した。
 「おー。俺のは実体験だかんな?ちゃんとユーレイ見たハナシ。」
 まだ、小学校にあがる前の遠い、ところどころ無くなってしまっている記憶を、彼はゆっくりとたどりながら話し始めた。
 「公園でさ、遊んでたんだよ。時間は・・・全然明るかったな。友達が、まだきてなくて、俺一人だったんだ。で、待ちながらテキトーに遊んでたんだけど、そしたら、すみっこのベンチにさ、誰かいるんだよ。ボーっと座ってて、何か、ヘンなカッコした人でさ。今思えば、あれすげえ昔の人だった気がする。まとにかく、そのヘンなカッコが気になってそばまでいったら、その人、透けてんだよ!ベンチとか、その人の後ろの風景とかがさ、うっすら見えてんの!俺ビビって、本人にむかって、アンタすけてる?とか言っちゃってさ。」
 「えぇぇええー?!バッカじゃない?」
 アキヤの話を、蒼子の叫びがぶった切る。
 「浦野、もちっと静かにな?」
 鴨井がやんわりと注意するが、当の蒼子は気にしていない。
 「ヤバくない?とりつかれたんじゃないのアキヤ?」
 「そーなんだよ、俺その後そのユーレイに抱きつかれて、そのままソイツ、消えちゃったんだ。」
 「ギャー!近寄んなアキヤ!たたりがうつる!!」
 さらにデカい声を出す蒼子。
 「だからウルサいよ浦野。」
 呆れ顔の鴨井の横で、りあんが彼を気づかいつつも、少し楽しそうに笑った。
 結局、2周もしないうちに蒼子のちっとも怪談でない話をのぞき、みんなネタがつきてしまった。
 「みんなもうオシマイ?アタシまだ全然イケるんだけどー?もしやアタシゆーしょー?ぃぇーい。」
 蒼子が一人はしゃぐ。
 「バカ」
 「バカ」
 アキヤと鴨井のあきれ声が素敵なハーモニーを織り成した。
 「何?くやしーんでしょー?」
 なおも得意げな蒼子を放置して、アキヤと鴨井はDVDの鑑賞会にうつることにした。
 後ろではりあんが、蒼子ちゃんスゴイねー、などとキゲンを取ってくれている。
 蒼子は悪いヤツではないが、少々めんどくさかった。
 スネられても扱いに困ってしまうので、りあんが気を使ってくれることは、アキヤたちにとってはありがたい。
 「よし、じゃ見ちゃおうか、そーこオススメのホラー映画。」
 アキヤが言って立ち上がり、鴨井がDVDをセットする。
 「じゃ消すぞー?」
 というアキヤの声で、部屋の照明はTV画面の光だけになる。
 ホラー好きの浦野がすすめるだけあって、かなり怖い映画だったが、終わって気づくと全員が鴨井にしがみついているという状況もまた、かなりのものだった。
 「八敷・・・お前がつかまってんのはちっとオカシイだろ。つか、嫌。」
 「いや、スマン。・・・マジ怖くて、タハハ。」
 照れ笑いをしつつ、アキヤは手を離し、部屋の照明をつける。
 「よし、じゃ女の子送ってく?」
 鴨井が言うと、アキヤも同意し、一同は部屋から出る準備を始める。
 夜道を、アキヤと鴨井、蒼子は自転車を押して、りあんは徒歩で進んだ。
 地元の最恐!もとい、やや恐スポットまでは、幽霊を見逃さないように歩いていこう、というのだ。
問題のスポットは、定番、と言ってしまってもよさそうな場所だった。
 事故現場。
 「あー、ここ、か。マジ出んのかなぁ?」
 アキヤも知っている、超有名な場所だ。
 「そう、この場所では、数年前ひき逃げがあって、男が一人死んでいる。夜中の事故だったためになかなか発見されなかった彼は、息絶えるまでの数時間を苦しみぬき、その怨念は今でもこの場所に・・・」
 鴨井が雰囲気を出そうと、いつもと違うおどろおどろしい声で説明をする。
 「きゃー!やめてー!」
 自分で怖い場所に案内しろと言っておいて、現地でそのイワクについて説明をされると、蒼子がイチバン怖がっていた。
 「あ、あーくんコワイよぅ・・・」
 蒼子と手をとりあいながら、りあんもおびえている。
 「フは。そーこビビりすぎ。」
 幼い頃に一度幽霊を見たきり、あとは怖い思いをしたこともないアキヤは、怖がる蒼子を気楽に笑う。
 自分には、レーカン(霊感)なんてないから幽霊なんか見ないですむだろう、と。
 笑いながら、街燈の明かりが少し暗くなった気がして、見上げると闇に浮かぶ月が見えた。
 ように思えたそれは、月ではなかった。
 なぜならそこに、赤く弧を描いているのは、笑っている唇に違いないから。
 「・・・!」
 これは、ウワサの幽霊か?
 声も出なかった。
 赤い唇は動いていないのに、耳元で声が響く。
 
 今日は 助けなど来ない 報いを受けろ クソガキ
 
 今まで聞いたこともないくらい低い、からみつくような男の声。
 報い、とは何かを考えることはなかった。
 もちろん、今見ているモノを、以前庭月にまとわりついていた“よくないもの”と結びつけて考えることも。
 幽霊を見た、声を聞いたショックで動転していて、それどころではない。
 宙にうかんでいる白い顔、開いているのか閉じているのかもわからないその細い目は、しかし自分を見ている気がした。
 目をそらしたいのに、恐怖でカラダが動かせない。
 この声は、あの顔か?
 まわりのみんなは、“顔”に気づいていない。
 そのハズなのに、悲鳴が聞こえた。
 「きゃぁあーっ!」
 その声にかき消されるように“顔”が見えなくなり、アキヤのこわばっていたカラダが動くようになった。 
 悲鳴のあがったほうを見る。
 いま幽霊を見たばかりだと思っていたら、そこにも幽霊がいた。
 身体の一部分がぺしゃんこになった男が、足をくねらせ、腕を使ってこちらへはいずってくる。
 おぁああがはあぁあああああああ!
 ああぁああーーーぁああ!
 妙な響き方をする声で、苦しそうに叫びながらずるずると近づく。
 「きゃーっきゃああああ!」
 「ぁーーーっあーーーー!!」
 「ぅわっ、っちいけよ!くんなよ!」
 恐怖で冷静さを欠いているのか、みんな悲鳴をあげるばかりで逃げることを思いつかないようだった。
 あるいは、幽霊の持つなにかの力が働いて、逃げられないのか。
 この場で、自分の意思を持って冷静に動けそうなのは、アキヤだけだ。
 「みんな、逃げろよ!」
 その声にも、反応が返ることはなく、悲鳴は入り乱れ続ける。
 「ぃやー!やぁあー!!」
 声をかけてもラチがあかないなら、とアキヤは幽霊とみんなの間に入った。
 「しっかりしろって!」
 蒼子の腕をつかんで身体をゆすると、けたたましい悲鳴とともに彼女は走り出す。
 刺激をあたえられてやっと、恐怖に身体が反応したようだ。
 「ほら、アマちゃんも、逃げっぞ!」
 「ぁ、あーくん!あーくん!」
 「りあん!」
 りあんは、とっさに鴨井の腕につかまり、それで我に帰った鴨井が、彼女の手を取って走り出した。
 アキヤもそれを追おうとした。
 そのハズなのに右足が、動かない。
 
 だ ぅ げ で   く どぅ ぢぃ  いだ ぁい
 
 濁った、聞き取りづらい声が聞こえる。
 見下ろした足元に、頭があった。
 ところどころ血のついた手に、足首をつかまれている。
 頭が動いて、こちらを見ようとした。
 恐怖が、限界を超えそうだ。
 何も考えられず、視界が白く薄れていく。
 頭の中が熱く、なのに身体は凍えそうに冷たい感じがする。
 ゆっくりと、足元にある顔がこちらをむく。
 何か黒い汚れと血とがこびりつき、苦しみ、痛み、悔しさにゆがんだ表情、恨みに満ちた瞳。
 助けて 苦しい 痛い 痛いぃ 痛いいいい!!
 幽霊と目が合うと、とたんにその声はクリアになる。
 心がつながって、直接頭に思考が流れ込んできたかのように。
 目が合った瞬間に、終わった、とアキヤは思っていた。
 しかし、彼は気絶することも、その場で死んでしまうこともなかった。
 苦痛を訴え、幽霊はなおも叫び続ける。
 そして、突然。
 なぜか当然のようにそれを、助けなきゃ、というキモチがどこからか生まれてきた。
 同時に、それをおかしいと感じる、冷静なもう一人の自分もいた。
 それでも、なんの根拠もないのに、自分にはそれができる気がして、アキヤは幽霊に語りかける。
 「大丈夫、もう終わってるんだ。」
 自分じゃない誰かが、自分の口を通してしゃべっているような感覚だった。
 その言葉を聞くと、幽霊は叫ぶことをやめ、ただアキヤの目を見た。
 「もう苦しいハズない、痛くもない。・・・目を、閉じろよ。」
 ゆっくりと、幽霊が目を閉じる。
 なぜおとなしく従うのか、アキヤ自身にもわからない。
 「どうだ?光が見えてくるハズだ、そこへ行けばいい。高い高い、空だ。」
 
 見 え る  そうか    そこだったのか
 
 部分的に潰れていた彼の身体は、知らぬうち正常な人間のカタチに変わっていた。
 恨みでギラついていた瞳も、ふたたび開かれ、今はおだやかな色をしている。
 「どこに行けばいいのか、わかったよな?」
 アキヤは確認してみる。
 あのおだやかな目は、それを物語っていると感じながら。
 アキヤの足から手を離し立ち上がると、幽霊はコクリとうなずいた。
 「ありがとう」
 そう言ったその声は、頭の中に直接響いてきたような気がした。
 と同時に、水面に映った影が風でゆらぐように、幽霊の身体はカタチをくずす。
 空に向かって、彼という風が吹き上がっていく。
 それは、人間には、アキヤには感じることのできない風。
 そして、アキヤは自分自身の背に淡く光が生じていることもまた、感じていなかった。

 そんなアキヤを、少し離れた場所から消えたハズのあの白い顔が、ずっと見ていた。
 顔は、かすかに不愉快さのにじんだ表情を浮かべると、今度こそ、本当にかき消えた。
    ◆
 俺って、レーノーシャかもしんね。
 と言って、アキヤが話したのがそれだった。
 ブレイブにいたのはヒサシとスズキで、二人はアキヤと仲がいい。
 それでも。
 「マンガ読みすぎ。」
 「作りすぎだろ。」
 冷ややかなまなざしで返された。
 「マージーだって!成仏さしたんだから、俺が!」
 彼らなら信じてくれると思って話した、というワケでもなく、庭月にも同じような反応を返されていた。
 その場で幽霊の片割れを一緒に見た蒼子、りあんも、さすがに全部は信じてくれず、結局鴨井だけがアキヤのたった一人の味方だった。
 何でも信じる、というより、考えるということをしない男だった。
 「悪霊バスター、って、マジだったらカッコいいけどさー、アキヤだろ?」
 お前じゃムリ、といいたげなヒサシ。
 ねー、とヒサシに笑いながら同意するスズキ。
 「っだよ!お前らトモダチだろ?信じねーのかよ!」
 特に、スズキなどは“そういう”力を持っているのだから、わかってくれてもいいはずだ、と、むくれるアキヤ。
 ただ、スズキは人前でそれを自分から語らない。
 だからアキヤも、なんとなくそこはいわないでおいた。
 ふと、スズキが真顔に戻る。
 「ねえアキヤ、そんな力、本当に欲しい?」
 「は?」
 「そんな力があったとして、悪霊っていうのを退治できたとして、やっつけ続けて、でもいつか、キミより強い悪霊が現れて危険な目にあうかもしれない。それでも、そんな力、欲しい?」
 少し叱るような口調で、けれど瞳は切なげに。
 「や・・・欲しいとか、じゃなく、なんで怒るかな。」
 急に雰囲気が変わってしまったスズキに、戸惑うアキヤ。
 ヒサシも、きょとんとしている。
 「アキヤが、オトナゲないから。ちょっと叱ってあげただけだよ。」
 不自然に、スズキが笑う。
 「何だよ、何か、ヘンじゃね?」
 不審がるアキヤ。
 「スズキさん、どーかした?マジなんか怒った?」
 ヒサシも気遣う。
 「んん・・・、ホント、へーき。とにかく、そんな力あっても怖いだけだよ。きっとさ、怖すぎて気絶でもしちゃったんじゃない?夢みたんだよ、きみは。」
 ぎこちないスズキの笑顔が、なぜだか痛々しくてアキヤもヒサシも黙ってしまう。
 「夢だよ、ぜんぶ夢。」
 明け方の夢のように、彼自身がはかなく消えてしまいそうな笑顔。
 届かなくなる前に、つなぎとめておきたくて、笑った。
 「・・・かもな、っはは!」
 「だろ、あはは!」
 笑っているうちに、本当にただのオオゲサなカン違いのような気がしてきて、アキヤは照れ隠しにさらに笑う。
 「そぉだよ、あっははは!」
 そうやってみんなで笑ううちに、いつのまにかスズキはいつもの顔に戻っていた。
 そうだよな、俺があんなことできるわけない。
 きっとみんなで見た幽霊以外は、自分の気のせいなのだと、アキヤは思った。

10月12日
00:29

お話をかいています。

アタマの中で考えてるときに
どうしても主人公さんがゲームキャラのイメージになってしまうので
先に絵を作ってしまおう、と思いました。
小説だけど時々絵もかきたいので
ゲームキャラそのままパクるのイヤですし。

描いてみました。
イメージそのままに。
気弱そうなどこにでもいるお兄さんを。
        (↑たぶんこれがいけない)

見事なノーインパクト。

描いたイミあるのか?エキストラじゃん!背景みたいな顔じゃん!

いや。どこにでもいるんだからそうなるよな・・・。
普通の人チョイスした時点で終わってたよな。
描いてみたものの、このヒトの顔をおぼえていられる自信がない。
つーことで日記にも貼って自分への印象付けをしてみるw
そこまでもして特徴のあるヒトに描き直さないという。
趣味へのこだわり。ダメな方向のこだわり。・・・わかってます。
マイナー街道一生爆走。それでいい。だって趣味なんだから。

ちなみに、女の子のほうはワガママそうな可愛らしいコを目指しました。
こっちは最初からイメージ固まってたし可愛く描いてよかったので楽でした。
別に可愛くないよ、というご意見の窓口は閉鎖しました。

10月11日
07:50

208年1月、予備徴兵かけつつ、濮陽と平原を同時攻撃。

濮陽は呂布兄ィと呂蒙の呂コンビに李典の応援つき。

平原は趙雲みずから攻めてみる。

ちょっと兵力が心もとないので公孫瓚様に援軍依頼。

その間に汝南が陥落。

平原8日目、公孫瓚様の援軍。

黄忠に楽進に・・・わがオリキャラ息子・李氷!わー、なんかうれし。

元々ほぼ互角だった戦力は敵援軍あわせても我が方が倍以上の優勢。

どうやっても獲れるね、こりゃ。

うう、李氷が軍師発揮して黄忠を指揮してる・・・りりしいぞわが息子!

ツルッと城壁に上る張郃様、素敵です。平原、濮陽占拠!

平原へ本拠を移転・濮陽太守には成湯を任命。

2月、北海侵攻!移転!・・・この焦りの理由は、占い。

何か間違えて覚えており、もう公孫瓚様も郭嘉も長くないと出たのだ。

できれば公孫瓚様の存命中に統一を!

3月、許昌陥落。4月、濮陽陥落。

4月、濮陽奪還・下邳攻撃。

濮陽奪還軍は張繍に任せ、下邳には趙雲が向かう。

このとき初めてメイン軍師に徐庶をつれていく。

曹操軍の攻撃は間断なく、都市はどんどん落ちて行くが、

むこうの兵力は目に見えて減っている。

面倒になっていくとしても士気は失ってはならない。下邳占拠・移転。

208年7月、曹操軍は少しおとなしくなったが、こちらは違う。

徴兵、兵器配備を同時に行いつつ後衛の李典を頼みに小沛・寿春同時攻撃!

・・・え?李典殿、呂布兄ィの援軍いきたくないって?

うわー。5万で落ちるかな、寿春。頑張ってね兄者。

小沛は田畑が多く回復しやすい、いい戦場に見えた。

城壁に周瑜を見つけるまでは。

霧の中忍び寄ってきていた周瑜隊により張郃突騎兵に大ダメージ!

周瑜の掘った落とし穴に張飛が落ちる!(ちなみに張郃様は見切った)

あンの もぐら男~~~~~!

市街戦では落とし穴がうまくできたらしく、

先行していた張郃様がボッコスコ落ちたが、無事に小沛・寿春陥落。

知らんうちに周瑜もゲットできた。

そして、落ち着くヒマもなく許昌と汝南を取り戻す。

地理の関係で今度は許昌を呂布兄ィに担当してもらい、

そっち方面の援軍を袁紹に頼む。

せっかくきてくれたし周瑜を連れて行き、軍師の腕を見せてもらおうか。

208年末、呂布兄ィに頼んで軽く江夏攻略。

209年 年明け早々、江陵攻撃。

李典さんはどうしても呂布兄ィの援軍をイヤがるので

趙雲の江陵攻撃のアシストをしてもらう。

援軍頼んでよかった・・・

曹操軍は、援軍の曹操様本人含めて18部隊にも膨れ上がった。

それでも14部隊の我が軍に数で負けるという・・・。哀れ。

恐ろしきは魯粛。関羽将軍の混乱すること2度、

うち一度は徐庶との同士討ちまで起きたが、

悪いことに徐庶の突騎兵がまた強く、負傷者は3600人に上った。

おまけにそこへ劉備が霹靂の誤射・・・。関羽様かわいそう。

劉備、しっかりしてくだされって言われてたw

やはりこの作品での劉備は、畑にいるときが一番輝いているようである。

その後、関羽のポジションに張飛が換わるが、またも同士討ち。

突騎兵強すぎる・・・徐庶ぉ~、・・・手加減してやれ!

さらに魯粛による張飛隊への放火。張飛隊炎上。地獄絵図。

この間に寿春陥落。

それを取り戻した後、江陵の周りに陣を作り防御を固めた。

そうしているとウチの軍師たちは、勝手に建業へ破壊工作を始めた。

郭嘉と徐庶のススメどおり、少し遠いがここで建業を取って逆方向から

曹操を脅かすとしよう。

建業は城門を突破されると太守が防衛を放棄。あっさり落ちた。

4月には廬江を手に入れ、今回の目標・平原制圧をクリア。

10月10日
17:47

 隣のクラスに、アマちゃん、と呼ばれている女子がいる。
 名前は、天王(あまおう) りあん(漢字で書くとスモモとアンズで李杏になるが、日本人の名前にみえないから嫌なんだそうだ)。
 カワイイ名前に似合わずデブキャラで、苗字をとってアマちゃんというより、甘いものばっか食ってる甘ちゃん。
 とにかく食べるのが好きで、みんなからイジめられている、というほどでもないが、まるっこい体をよくネタにされている。
 地味でおとなしいアマちゃんは、からかわれても弱々しく笑うだけで、怒ったり言い返したりはしない。
 すると、周りの女子が助けてくれるのだが、なんとなーく、その彼女たちの表情にも、うっすらと、仕方ないじゃんデブなんだから、という気配が見え隠れする。
 そんなおデブキャラが、アマちゃん。
 中学に入るくらいの頃は、まだちょいポチャぐらいだったらしいが、高校入学時にはすっかりただのデブだった。
 成長期とは恐ろしい。
 あまりの変化に自分でも困って、ちょっぴり悩んでいたらしいアマちゃんを、ある時なぐさめてくれた優しいヤツがいた。
 それはこの俺、八敷阿輝矢、ではなく、俺の心の友、鴨井だった。
 いわく
 「だいじょーぶだって、俺なんか、ちょっとぽっちゃりしてるくらいの方が好きだしさ!」
 考えナシにもほどがある不用意発言。
 そしてその1ヵ月後、ばっちりオチてしまったアマちゃんは、鴨井に告白をする。
 「ぃゃ・・・でも、もー、ちょっと?ちょっとだけ、ヤセてるほうが、いいかな、なんて。アは、あはは、あの、ごめんな?そんじゃっ!」
 最後は、こんなサイテーな言葉で逃げてしまったが、鴨井は鴨井なりに、アマちゃんを元気付けたかったのだろう。
 これは、まだ俺たちが高一だった頃のこと。
        ◆
 もーちょっとだけ、って、どのくらいなんだろ。
 ・・・考えてもしょうがないか、フラれちゃったんだし。
 どうせ、あたしみたいなデブなんか、誰も好きになってくれないよね。
 ダイエットなんてしても、こんなに太ってたら少しくらいやせたってきっとムダ。
 落ち込んだら、おなかすいてきちゃったな。
 りあんの足は、自然といつも行くコンビニに向いていた。
 学校から一番近いそのコンビ二には、ちょっと目立つ店員がいる。
 男のクセに長い髪をした外人で、ネームプレートには、スズキと書かれていた。
 彼が目当てでこの店に来る女の子も、最近では何人かみかける。
 あからさまに話しかけたり、チラチラ彼のことを観察してみたりと、追っかけレベルはさまざま。
 そんな女の子たちにスズキがどう接しているかといえば、誰に対しても親しげに、仕事そっちのけで相手をする。
 そういう女の子以外にも、人懐っこい彼は話しかけてくる。
 たとえば、あたしみたいなおデブにも。
 「いちごチョコスティック、くるくるレアチーズクレープ、あんダンゴにぃ、ふんわりメープルクリームサンド、チョコバナナロール・・・甘いのスキなんだね。」
 さらさらと長い髪を揺らして、彼は微笑んだ。
 かっこよくて優しいって、みんな言うけど、あたしは、鴨井くんの方が背も高いしかっこいいと思う。
 きっと、見た目がいいからって女の子にモテるのを楽しんでるだけだもの、こんな人。
 だから、本当に優しいっていうのは、鴨井くんみたいな人を言うんだと思う。
 さすがに、彼女にはしてくれなかったけど。
 そんなことを考えて、何も答えなかったあたしに、スズキさんはさらに話しかけようとした。
 「でも、こんな食べたら太っちゃうんじゃない?」
 「!」
 カンケーないじゃん、あんたに!
 クラスのコとかにからかわれるのはガマンするけど、コンビニの店員にそんなこと言われるスジアイない。
 さすがにアタマにきて、あたしはスズキをちょっとにらんだ。
 「あぁ、ゴメンね?そうだよね、いっぺんになんて食べないよね。えっと、全部で1184円。」
 ちょっと申し訳なさそうに、会計をする彼。
 あたしは、余計イラついた。
 だって、いっぺんに食べるんだもん。
 突きつけるように千円札を2枚差し出すと、受け取りもせず、彼はあたしの顔をのぞきこんだ。
 「ぁれ・・・、もしかして、やっぱこれみんないっぺんに食べる、つもりなんじゃない?それに、本当は太るの、気にしてるでしょ。」
 お客さんに対して失礼すぎるけど、鋭い。
 でもやっぱり失礼すぎ。
 むかつくー!
 「あの、お金!」
 早く清算してほしくて、あたしはキツめに言った。
 すると彼は、あたしが買った商品の入ったビニール袋をひょい、と持ち上げると、自分のうしろへ置いてしまった。
 「だめー。清算してあーげない。」
 「ぇえ?!」
 びっくりして、まともな言葉がでてこなかった。
 どうやって文句を言おうかとあたしが考えている間に、彼は店の奥のほうへ声をかけた。
 「てーんちょー、僕用事できちゃいましたー。今日これであがりたいんですけどーお。」
 その言葉も非常識だった。
 ありえない。
 あきらかに思いつきで早退しようとしてる。
 「んーもーう、またかぁい?仕方ないなあ。いいよ。」
 「えへへー、すみませぇん。」
 「そのかわり、明日一緒に食事にいかないかい?」
 「えー?またおごってくれるんですか?やったあ!いいですよ!じゃ、お疲れ様でーす!」
 目の前で、スズキにだけモノスゴク都合のいい会話が流れていった。
 でも、あたしには関係ないハズ。
 支払いかけていた千円札を財布に戻し、ここでの買い物をあきらめて立ち去ろうとすると、スズキに止められた。
 「待ってー。ちょっと着替えるから。」
 「は?」
 これから一緒に出かけるみたいに言われ、あたしは固まった。
 「君はこれから僕とおデートです。ぁはは。」
 少しふざけた口調で言って、やわらかな声で彼が笑う。
 ちょうど店内にいた、彼のファンらしい女の子二人組の視線が突き刺さり、イライラしていたあたしは心のすみで軽い優越感を覚えた。
 みんなの憧れの人を独り占め、っていうのもいいかもしれない。
 楽しい時間になりそうな気はしないけど、少なくともあの女の子たちはあたしがうらやましいに違いない。
 フラれたことと、さっきのスズキの言葉で感じたストレスが、すこし解消できた気がした。
       ◆
 よく考えたら、一時の優越感のためだけに、よく知らない男の人と二人っきりって、結構キケンなんじゃないだろうか。
 と、りあんは思うが、後悔しても、もう遅い。
 少し歩いた、商店街のファーストフードにつれてこられた。
 マスタードを練りこんだ特製ソーセージを、これまたマスタードを練りこんだ生地でつつんで揚げたマスタードーナツが看板メニュー、その名もまんま“マスタードーナツ”という店。
 アフロのカツラとちょびヒゲ(マスターのイメージらしい)が制服の一部として義務付けられているが、女子のバイトにも例外がないというフザけた店だ。
 それでも味は確かで値段もお手頃、若い世代の人気が高い。
 りあんの前には、普段どおりのにこやかな顔のスズキがいる。
 「なににする?」
 「ええと・・・」
 好きに選んでいたら、3つめでストップがかかった。
 「ちょーっと待ったぁ!2つにしとこ?僕が出すから。ね?」
 「え、でも、出してもらわなくても別に・・・」
 控えめに言いながらも、りあんは心では、自分で払うから口出しはしないでほしい、と思った。
 「2コくらいまでのほうが可愛らしいなって、思ったから。だから、お金のことなら遠慮しないで?」
 「かわいくなんかないです!」
 すかさず言い返したのは、かわいかったら、フラれてなんかいない、と思ったから。
 適当に耳に心地いい言葉を垂れ流さないでほしい、と思った少し腹立たしい気持ちをぶつけるように、強めに反論した。
 「ははっ、そういう態度も、僕から見たら可愛いんだけどね、とにかく2コに決めちゃいなよ。」
 相手にする様子もなく、楽しそうに笑いながらスズキは彼女に
うながした。
 余計腹が立つところだが、その楽しげな様子になんとなく、あきれてしまったのか怒る気が失せてしまった。
 ついでに、店員の女の子がスズキと話す彼女に気のせいか、うらやましそうな視線をむけていたせいもある。
 やっぱり、カッコいいのかな?この人。
 スズキと居ることに、またも軽い優越感を覚え、りあんはすこしいい気分になると、続けてドーナツを選び始めた。
 いちばん食べたいのは、・・・どれにしようかな。
 好きなだけ食べる気でいたから、二つにしぼるとなると迷ってしまう。
 りあんがしばらく悩んでいるあいだ、変わらず楽しそうな表情でスズキは彼女を見守っていた。
 その彼は、席についてから見てみるとコーヒーだけのようだ。
 「あ、なんかコーヒーだけってカッコよくない?あはは。」
 その発言がカッコよくなかった。
 カッコよくない男と一緒でも、ドーナツはおいしい。
 口に広がる甘さに、思わず頬がゆるんだらしい。
 「ふふっ、おいしそうに食べるね。」
 カッコよくない男が、また笑った。
 「どうせ、太ってるから。」
 みんなだってそう言う。
 太ってるから食いしん坊だとか、食べてるときが一番しあわせそうだとか。
 「あれぇ?そんなスネちゃって、気にしてるならダイエットとかすればいいでしょ?」
 普通、もうちょっと遠まわしに言うとか、触れないようにするとか気を使うものだ。
 ということは、からかわれているんだろう、とりあんは思う。
 「やせたって、誰も気づいてくれないもん。ムダだよ。」
 あきらめはついている、ということをスズキに伝えようとした。
 「僕は気づく。君が努力するなら、僕はちゃんとそれを見てるよ。」
 微笑は絶やさずに、けれど真剣さのうかがえる瞳でスズキが言った。
 「あなたが気づいてくれても、別に嬉しくないから。」
 食べるのも忘れて反論する。
 「じゃ、誰に気づいて欲しい?いるんじゃないの、そんな相手が。」
 「ぁ・・・」
 「僕なんかが相手じゃ不満かもしれないけど、相談とか、してみない?きみより長く生きてるぶん、アドバイスとかしてあげられるかも知れないでしょ?ね。」
 すっごくウザくてアヤしくて、ムカつくことばっかり言うのに、言葉も、声も、笑顔も、とても優しい。
 目の前の金髪男は、どうしてもりあんに嫌悪感を持続させてくれなかった。
 「でも、グチっちゃっていいの?こんな、おごってもらって、しかもあたし、ただのコンビニの客だよ?」
 さっきまでは、ただウザいだけだった。
 でも、親切心のみで悩みを聞いてくれると、この人は言う。
 そんな優しい人につまらないグチみたいなことを聞かせてしまって、迷惑じゃないだろうか。
 さすがに、少し迷った。
 「だって、すっごく暗いカオでイライラしてて、心配になっちゃったから。それに、こうやって一緒にでかけたんだから、もう友達でしょ?」
 どこからか光が射したかと思えるほど、明るく周囲を照らすようなスズキの笑顔。
 「ぅん、・・・じゃぁ。」
 あまりにも太っているせいでフラれてしまったこと、体型のせいでみんなにからかわれ、悩んでいることを全てスズキに話す。
 暖かいまなざしでりあんを見つめながら、スズキはおおむね黙って話を聞いていた。
 そんな彼といると、まるで兄ができたような気がした。
 少し年の離れた、面倒見のいいお兄ちゃん。
 「そっかあ、でもさ、それなら大丈夫だよ!だってヤセちゃえばいんだもん。」
 優しいけど、なんにもわかってない。
 ダイエットなんて、言うほどカンタンにできるもんじゃない。
 そう思っているのが伝わったかと思えるような言葉を、彼は続けた。
 「すぐに効果はでなくてもさ、始めてみなきゃなにも変わらないでしょ?やってみようよ、ダイエット。僕、応援するから。」
 りあんも、今までなにもしなかったワケではない。
 いくつかの方法を試したものの、効果が出なかったり、辛かったりで、くじけてしまい、今ではすっかりあきらめてしまったのだ。
 きっと自分は太る体質だから、ダイエットはムダなのだと。
 そんな思いから、すぐに返事ができず、黙ってしまう。
 「暗いカオしないで、えっと、名前、そういえば聞いてなかったね?」
 「天王・・・天王りあん。」
 「りあんちゃんか、スゴく可愛い名前なんだね。ねえ、りあんちゃん、僕がきみを助ける。だから、もう悩まないでもいいんだよ。・・・じゅうぶん、きみは悩み倒したんだもん。」
 ぱふん、と、スズキの大きな手がりあんの頭に軽くのせられた。
 なんだか、その感触に安心してしまう。
 不安や、否定的な気持ちが、その大きな手で払いのけられた気がした。
 もう一度、もう一度だけ試してみようかな、と思った。
 「ヤセたら、絶対気づいてくれる?」
 「うん。絶対。」
 嬉しそうな笑顔を見せられると、なんだかりあんもつられて嬉しくなった。
     ◆
 とりあえず、間食をなくすことにした。
 よって、スズキのいるコンビニに行く機会もないまま、一週間くらいはがんばれた。
 その間も、がんばってるねー、とか、えらいね、とかいいながらも、周りの女の子たちはちょこちょこお菓子をすすめてくる。
 だんだん空腹に耐えられなくなり、少しづつそれに手をつけてしまうようになっていた。
 やっぱり、お菓子はやめられないかも。
 ダイエットするって、言ったのになあ。
 スズキの笑顔を思うと、なんとなくうしろめたい。
 罪悪感・・・。
 こんなの、よくないよね。
 またくじけそう、と思ってから、彼の言葉を思い出した。
 僕がきみを助ける、彼はそう言った。
 なら、頼ってもいいハズ。
 りあんは、スズキのいるコンビニへ向かった。
 「スズキさーん、叱ってくださぁい・・・。」
 誘惑に負けてお菓子をつまんでしまった事を白状すると、スズキは怒るでもなく言った。
 「そんなにガマンしちゃダメだよー、あはは。モデルになろうってワケじゃないでしょ?極端すぎ。」
 「え・・・?」
 「僕、助けるって言ったでしょ?みんなからダイエットの事いろいろ聞いて、僕なりに分析したんだけどさ。がんばりすぎると、途中でザセツしちゃうんだって。だからね・・・」
 間食は、全くしないのでなく、減らすこと。
 油モノを控えるのはいいけど、全く抜くとかえって体によくない上に、余計コッテリしたものが欲しくなるので、それもほどほどにすること。
 なるべく体をうごかす、夕飯を軽めにしてみること・・・などなど。
 「すごい・・・超くわしい・・・」
 「ふふーん、すごいでしょ?仕事の時間もけずってガンバっちゃった!」
 胸を張るスズキだが、自分(りあん)のためとはいえこれはツッコまねばなるまい。
 「ダメくない?それ・・・」
 「そう?」
 何がダメなの、といった表情を返されると、これ以上追求もできなかった。
 「それにしてもー・・・、エラいね。ちゃんと頑張ってたんだ?」
 この前のように、兄の表情でスズキがりあんの頭をなでた。
 「でも、結局ガマンできなかったし・・・」
 落ち込むりあん。
 「ガンバりすぎたから、ガマンが続かなくなっちゃっただけ。きみは、エラいよ。そんなにガンバらなくても大丈夫、だから、あきらめないで。ね?」
 頑張らなくていい、と言われると少しラクになり、明日からも続けていける気がした。
 不安になったら、いつでも話をきくから。
 そう言って、スズキは笑った。
 本当のお兄ちゃんみたいに。
 時々スズキにはげましてもらいながら、りあんのささやかな努力は続いた。
 一ヶ月もすると、1kgほど体重が減った。
 「ねえ、もしかしてやせた?」
 約束どおり、スズキは気づいた。
 「え、わかる?!」
 「だって、なんだか嬉しそうだから。」
 それこそ嬉しそうに笑うスズキ。
 気づいてもらえると思うと、少しやりがいが出てきた。
 もっとヤセちゃおうかな、と思うりあん。
 ジュースやコーラばかり飲んでいたのを、ハーブティーにかえてみたり、ヒマな時間で少し散歩をしたり、ヤセるための行動が、なんだか楽しい。
 楽しいと思うと、続くものだ。
 3kgも落ちると、なんとなく見た目が変わってきた気がした。
 自分に自信がついてくる感じがする。
 「あれ、お化粧してるの?」
 試してみたほんの少しだけのメイクにも、スズキはすぐに気づいてくれた。
 少し驚いた彼は、すぐに笑顔にかわると、似合うよ、と、ほめてくれた。
 ダイエットは順調、友達に教わって、メイクも少しづつ上達していった。
 そうやって、半年もすると8kgほどやせた。
 「ヤセたら、目もおっきくなったんだよ?」
 りあんは、いつものコンビニでフルーツミックスティーを買う。
 「てゆーかさあ。」
 バーコードを機械で読み取り、レジのキーを押しながらスズキが答える。
 「変わりすぎ。ヘアスタイルからメイクから・・・すっかり可愛くなったから言わせてもらうけど、これ以上はヤセなくてもいんじゃない?それにメイクなんかも必要ないからやめなさい。」
 優しいお兄ちゃんは、説教兄貴に変身した。
 「だって、まだデブだもん!」
 ふう、とスズキがタメイキをつく。
 確かに彼女はまだまだ太っているが、それでもずいぶん変われたと、彼は思っていたから。
 「だいじょぶだって。さっさと告白してスッキリしちゃいなよ。」
 相手がどんな男か知らないが、こんなにガンバった彼女がフラれるとは思えない。
 いいや、そんな事になったら自分がその相手に一言いってやる。
 お兄さんはおせっかいだった。
 「ダメ!10kgやせて可愛くなってからって、決めたから。」
 フラれたからといって、すぐに忘れることもできず、ずっと、鴨井への想いを抱いたまま、彼女は頑張ってきた。
 すこしずつ体重がおちてくると、もう一度告白してみようかという考えが出てきた。
 見た目が変わってきて、希望がわいたのだ。
 告白のための目標として、元の体重から10kg減らすことに決めた。
 スズキはじゅうぶん可愛いというが、今はまだまだ太って見えるから、ダイエットをやめるわけにはいかない。
 今の時点ではまだ、“可愛いデブ”なのである。
 
 2ヶ月後・・・
 「おめでとう!とうとう10kg達成かぁ!やっと告白できるね!」
 うれしそうにスズキが笑う。
 しかしりあんは言い放った。
 「スズキさん、あたし、まだイケそうな気がする!」
 「・・・え?」
 結局、もうちょっともうちょっと、とガンバって、彼女のダイエットは約一年続いた。
 そして、なんと15kgもの減量に成功した彼女は、少しぽっちゃり目の、けれどかわいらしい女の子に変身していた。
 ヤセただけではなく、自然に見えて可愛いメイクや、自分に似合うヘアスタイル、カラーもあれこれと試行錯誤し、周りの意見をきき、時にスズキにも相談しながら、文字通りの変身を果たしたのだ。
 「明日、ちょうど一年だから、もう一回チャレンジしてみようと思う。」
 いつものコンビニで清算を済ませながら、りあんは、少し緊張した表情で言った。
 「絶対、大丈夫。」
 スズキは微笑んだが、彼でなくとも、きっと誰もがそう保証しただろう。
        ◆
 「で、アマちゃんは鴨井なんかと付き合ってるワケよ。」
 長かった話を、八敷阿輝矢がしめくくった。
 駅近くの、ほどよく人が少ない広場で男女4人の学生が集まっている。
 それぞれ手にジュースのパックやら、お菓子やらを持って、話し込んでいるところだった。
 内容は、といえば。
 今ではすっかり男子からの人気が高くなった、癒されポッチャリ系美少女、天王りあんと、背だけは高いが他のあらゆるパラメータ全てが平均より若干低めのアキヤの親友、鴨井亘(かもいあたる)がなぜ付き合ってるのか、という話だ。
 「鴨井なんか、じゃないよー。あたしは、あーくんがいいんだもん。」
 天王りあんは、大好きな彼の腕に、ぷにぷにした腕をからませて言った。
 「へへ、照れるし。でも俺は、もうちょっと太ってもいいかなって思うな。あんまカワイイとこっちがフラれそうでさ。」
 そーんなことないよーう、なんて言いながら鴨井をこれもまたやわらかそうな肩で押すりあん。
 笑う鴨井。
 「うーん、素直に悔しい。ここは俺たちもこう、イチャつきませんか庭月さん。」
 言葉どおりくやしそうに二人を見ながら、アキヤは隣の庭月小楯に話しかける。
 「それって、私が恥かく以外になんの効果があるの?」
 迷惑そうに、庭月。
 「俺が嬉しい、とか?ははっ」
 「ストレートなバカだよね、八敷くんて。」
 笑うアキヤに、表情を変えずにそう答えた庭月だが、若干・・・でもなく、その笑顔が実物よりカッコ良く見えていたりした。
 「でも、それからすぐ、会えなくなっちゃったと思ってたら、ゲーム屋さんにいたんだねえ、スズキさん。」
 話の途中、コンビニがでてきた所で、そのスズキが共通の知人だとわかった。
 「つーか、ここはちっとお礼参りってヤツに行った方がいんじゃね?鴨井。」
 「八敷くん、お礼参りだと意味が違ってくると思う。」
 庭月ツッコむが意味のわかってないアキヤ、笑顔で少し首をかしげスルー。
 「あー、そうだねぇ。告白、成功したって報告もできなかったんだぁ。」
 りあんが賛同すると、鴨井は特に意見もないようで、それに従った。
    ◆ 
 「ぁ・・・アキヤ・・・あれ?りあんちゃん!」
 商品を棚にならべていたスズキは、数歩離れたところからアキヤたちを見つけると、声をかけた。 
 「スズキさぁーん!久しぶりぃ!」
 りあんのはしゃいだ声。
 「どしたの、ゲームとかそんなにしない人でしょ?」
 スズキは再会の喜びよりも、なじみの面々のなかに彼女を見つけた驚きのほうが勝っているようだった。
 「お礼いいにきたぁ。ダイエット応援してくれて、ありがとー!あのね、スズキさんのおかげであたし、今あーくんと付き合ってるんだぁ。」
 ニコニコしながら、りあんが言う。
 「あーくん、っていうの?彼氏。そっかー、よかったねぇ。」
 あやすように、スズキ。
 「ね、あーくんもアリガトって、来てきて。」
 手首から先だけをちょこちょこ動かして、小さくりあんが手招きした。
 ん、と返事をして近づいてきた相手を見て、スズキは驚く。
 「あれ?連れてきてるの?・・・ぇ、え?え?鴨井くんなのー?!」
 「あはは、あー、そのセツはぁ、うちのりあんがお世話になってぇ、でへへ。」
 だらしなく笑う鴨井は、やっぱり全国男子平均レベルより若干カッコ悪かった。
 「りあんちゃんがフラれたって言うから・・・僕、もっとカッコいい人かと思ってた・・・ぇー、鴨井くんかぁ、意外ぃ・・・。」
 「カッコいいよぉ、あーくんは!ね、あーくん!」
 「ぃゃ、どうだろ、ね?」
 気弱に、あーくんこと鴨井ははぐらかした。
 身の程、というものを知っている男だった。
 「とにかく、スズキさんはあたしたちのキューピッドなんだよ?あたし、超シアワセだから、アリガトぉ。」
 可愛らしく、りあんは笑い、だらしなく、鴨井も笑った。
 「キューピッド・・・うーん、キモいっ」
 しみじみ言って、アキヤもまた笑った。
 「そうかもね、あはは」
 言われた本人も、似合わないと思ったのか、笑っている。
 「でも、それって僕の理想だなー、恋をかなえる天使。そうなりたいって、ずっと思ってた気がするよ。」
 夢見がちな言葉を、どこか寂しそうに吐き出す。
 その場の誰もが、不釣り合いなその表情の変化に気づかない。
 あまりに、かすかで。
 「だから、そうだってぇー、夢かなったじゃんスズキさん、あはは。」
 軽い調子で鴨井が言葉をかける。
 「天使って、だからキメぇよスズキ!」
 わいわい盛り上がっていると、水を差された。
 「スーズーキーさんっ!あんたまたそうやってサボって!」
 年下だけど、バイトではスズキの先輩、堀がやってきていた。
 「ほらっ、これ!ちゃんと陳列オネガイしますよ?ったぁくもーっ。」
 もってきたカゴごと沢山のCDをスズキの足元に置くと、ダシダシと足音荒く去っていった。
 「はーい・・・ごめんなさぁーい」
 反省ゼロでスズキがその後姿に形式的に謝った。
 「また、って、ここでもサボってるんだ・・・スズキさん」
 ややあきれつつ出てきた、りあんのセリフは最後に(汗)がついているように聞こえた。
 「まあね、ってかさ、あんなエラそーにしてるけど、堀くんて、彼女スッゴい怖くて、頭あがんないらしーよ。電話とかしてるとき、たまに別人だもん。超よわよわ。」
 当然のお説教なのに、気に入らないのかスズキは堀の個人的な事情をみんなにバラす。
 「ほー、あの堀が。」
 「えマジ?彼女いたんだ、コワいのに。」
 「そういうことにちゃんと興味あるんだ、堀さん。」
 「え、でもけっこうカッコよくない?あの人」
 「えー僕パス。キツネ目でコワいからヤ。」
 「だからテメーにきいてねえよ」
 「あやっぱスズキさんて・・・」
 と、またしょうこりもなくしゃべっている彼らは、引き返してきた気配にきづかない。
   ど す っ
 「ぎゃはっ!」
 悲鳴をあげるスズキの背中には、堀のスニーカーがめりこんでいた。
 「人の、プライベートを、垂れ流すなっていうんだ貴様らはぁああ!」
 ぐりぐり足をねじってから、チカラをこめて押し出す。
 「どぅわぁっ!!」
 つんのめったスズキは棚につっこみ、CDが土砂くずれのごとく彼らを襲った。
 「あいたぃたいたいだだだだっ!」
 「きゃああっ」
 「いてててっ」
 がらがらがしゃがしゃとなだれてきたCDが全て落ちきると、もう堀の姿はなかった。
 蹴るだけ蹴って、さっさと持ち場へ戻ったのである。
 「・・・ぁんのやろーっ、俺らは悪くねえだろがっ!」
 キレるアキヤ。
 「はは、みんな大丈夫?」
 周りを確認する鴨井。
 「うー、ごめぇん、みんな・・・」
 ぺたりと座りこんだまま、スズキが謝った。
 「手伝うから、さっさと片付けよ、また怒られちゃうよ。」
 言って、はは・・・と笑う鴨井を、見つめるりあん。
 やっぱり、あーくんは世界イチ優しい、そう思いながら。
 彼女のシアワセそうな視線を、スズキは微笑ましく見守り、祈る。
 
 きみの幸せが、どうかずっと続きますように。

10月07日
04:45

 地元のアイドルも、ついにその座を追われるときがやってきた。
 アイドルとは、「中古ゲーム・マンガ・CDのブレイブ」の、お荷物店員こと、偽名バレバレ不審外人スズキだ。
 ブレイブの店員は、もちろん彼だけではない。
 スズキより先にこの店で働いていた、その少年が時間通りにやってきたとき、やはりレジのあたりはいつものように女の子がたまっていた。
 「他のお客様の迷惑になりますので、お会計がすみましたらレジの前をお空けください。」
 少年とはいえ、もうほとんど大人の男。
 その彼のイラ立ちをふくんだ口調に、女の子たちがじわじわと場所をあける。
 そして、人垣がなくなってみると、なんということだろう。
 「スズキさん!あんた何やってんだっ!」
 カウンターでぼんやりと頬杖をついているスズキの横で、店員でもなんでもない女の子がかわりに接客をしていた。
 大きな声に、スズキが視線を動かす。
 「あ・・・堀くん、おはよ。」
 「おはよじゃないだろ!部外者に何させてんだよ!」
 スズキをしかりつける堀に、レジにいた女の子がかわりに応じた。
 「あ、あたしレジくわしいから全然ヘーキ。」
 堀は、自分とたいして年がかわらないように見える彼女に、店員らしく敬語で答えた。
 「そういう問題ではありません。レジから出ていただけますか?」
 そして自分よりずっと年上に見えるスズキを、またも叱りつける。
 「ほらっ、スズキさん代わって!」
 「んー・・・」
 どこかぼんやりとした様子のスズキは、だるそうにうなりながらのろのろと定位置についた。
 そこにいた女の子のほうは、なごりおしそうに他の女の子たちの輪の中に戻っていった。
 「ボーっとしちゃって、どっか悪いんですか?まさか、好きな女のことでも考えてた、とかじゃないでしょうね?」
 堀は、冗談半分で言った、つもりだった。
 少々キツい言い方になったが、あまり気にしないでもいい、と気をつかったのだが。
 それなのに、スズキはその言葉であからさまに、文字通り顔色を変えた。
 「え・・・」
 つぶやくと同時に、白い頬が染まっていく。
 恋する乙女のような色に。
 一瞬あってから、周囲の女の子たちがざわつき出す。
 うそでしょ?
 ありえない
 まじで?
 ざわざわ、ざわざわ。
 ざわめきの中には泣き声すら混じりはじめ、その中の数人は、サイテー、と堀をにらんだ。
 そして、数人が駆け出すと、あとはナダレだった。
 店の外へ女の子たちが走り出て行く。
 「俺は悪くないだろ・・・。」
 すでに居ない声の主たちに、あきれ声で堀がつぶやいた。
 堀の後ろで、まだうっすらと頬を染めたままのスズキが、気まずさを解消しようと話しかけてくる。
 「なんか、あの、すっきりしたね、店。えっと、さみしいけど。」
 焦っているのか、ややカタコトになりながら。
 「ああ、・・・ですね。」
      ◆
 「えヒサシその場にいなかったの?」
 アキヤが、”ヒサシ”と呼んだのは、ブレイブのバイト3人目の男、坂井久志。
 定職につかず、ここでバイトをしながら親元で遊び暮らす、ダメダメな22歳。
 まだ高校生のアキヤにも呼び捨てにされているが、明るく大らかな性格でどこか憎めない。
 堀からはよく怒られているが。
 「んー、うっせぇ女どもがヒくとこ見たかったけどなー。まぁ、次の日からもうぽつぽつ戻ってきて、今じゃ元通りっつか、誰だかわかんねえ相手と、スズキさんくっつけようって勝手に盛り上がってるよ。応援団、だってさ。」
 スズキのファンクラブ(そう名乗っているコもいる)についての話をしていた二人のところへ、奥で商品整理をしていたらしい堀が戻ってきた。
 「ヒサシ、あんま人のプライバシーとかふみこむなよ。」
 堀も、ヒサシより年下である。
 「だって本人が話してくれたんだし、別にアキヤならいーだろ?」
 「いーんだよ、スズキうらやましすぎだし。」
 ヒサシの言葉にアキヤが続け、二人は、『なー!』と、声と顔を合わせる。
 「それは、ヒガミっていうんだ。」
 冷ややかな目つきで、堀が言った。
 その数日後、決定的な事件がおきる。
    ◆
 今日もスズキは女の子に囲まれている。
 「今度つれてきてくださぁい!」
 「めっちゃ見たいしー!」
 まるで、もう付き合っている相手の話をするように、女の子たちはスズキの片思いの相手に会いたがる。
 「だからー、カノジョとかじゃないからぁ、紹介とかヘンだし。それにあっちにはもう好きな人がいるんだよーぅ!」
 今日だけで、もう何度目になるかわからない説明。
 「そんなんスズキさんが告っちゃえばむこうだってキモチかわるって!」
 似たようなセリフが、今日は何度も飛び交っている。
 「だからぁ、僕は彼女を応援したいんだよ。割り込むつもりはない。」
 歓声。
 女の子たちは、彼の言葉を聞いて口々に、優しい、だの、だから好き、だのと感想を言い合う。
 「うるっせぇなあ」
 小さくつぶやいたヒサシはいっせいににらまれ、顔をそむけた。
 「ごめ、ヒサシくん」
 スズキが謝り、ヒサシは、気にしてねえよ、といわんばかりに軽く笑う。
 そんなうるささの中、誰も気づかないうちに一人の中年男が来店していた。
 女の子たち間をかきわけ、その人はまっすぐにスズキのもとにむかってきた。
 「スズキくん!」
 呼びかけられ、その人の姿を確認すると、スズキは青い目をみひらいた。
 「ぐぇっ・・・て、ん ちょおっ?!」
 がしっ、と音がしそうなほどしっかりと、店長と呼ばれた中年男はスズキの手をつかむとなかば叫ぶように言った。
 「俺が他の男に目をむけたと勘違いして、身を引いたんだってね?俺が愛してるのはキミだけなんだ!もう離さないよ!!」
 ホモだった。
 当然、その場にいた誰もが、スズキ自身でさえこの愛の告白に目をむいた。
 「ぃ・・・いぃいやあぁぁぁぁああああ!!」
 悲鳴の大合唱が響いた。
 ホモだってー!
 サイアク。
 好きな人、ってこのおじさん?
 『彼女』って言ってたのウソ?
 だから紹介できなかったとか?
 あまりのことにどうしていいかわからず絶句するスズキの耳に、女の子たちがヒソヒソと話す内容が届く。
 なんとなく、なんとなーく、ヒサシは一歩だけスズキから距離をとってみる。
 「ヒサシくん、僕、僕そんなんじゃ・・・」
 言い訳をしようとしたスズキから、なんとも言えない残念そうな表情のヒサシがもう一歩遠のいた。
 「ヒサ、シ・・・くん」
 「さあ、スズキくん、俺たちの店へ帰ろう!」
 鼻息の荒いホモがなおも迫る後ろで、女の子たちがまたヒソヒソ。
 店、ってもしかして。
 ゲイバーだよきっと。
 イヤー、信じらんない。
 ゲイバーだ、ゲイバーなんだ。
 だが、ぐいぐい腕を引っ張られているスズキは、それに反論するどころではない。
 「離してよ店長!もー僕はここの店員なんですっ!つかどこでそんなデタラメ聞いたんですか!!」
 嫌悪感いっぱいの顔で男の手をふりほどこうとするスズキだが、うまくいかないようで手と手はなかなか離れない。
 「キミの友達が教えてくれたんだよ、ここのことも、キミの本当の気持ちもね。さあ、恥ずかしがらなくていいから行こう!」
 友達、という言葉になにか引っかかるものを感じたらしく、スズキの表情が少し変わった。
 「友達、って、もしかして黒ずくめのでっかいヤツですか?超ロン毛でキモいカンジの。」
 「そうそう、でもキモいなんて言うなよ、いいヤツじゃないか。」
 「あーーーいーーーつーーー!!!」
 見る見る憤怒の表情へと変化しながら、スズキがつかまれていた片手を振ると、それをつかんでいた男はカンタンに吹っ飛んだ。
 空の段ボール箱かなにかのように、軽々と。
 カウンターに背中を打ちつけて咳こむ男を、やっちゃった、という表情でスズキが振り返った。
 「あっ、ごめんねっ店長!だいじょぶ、だよね?ヒサシくん、あとよろしく!」
 そういい残すと、なかなかの速度で外へと駆け出していった。
 女の子たちは、スズキがいなくなると散り散りに帰っていき、ホモ中年も背中をさすりながらどこかへ消えた。
 その日から、スズキの周りに女の子の群れができることはなくなった。
      ◆
 「すげえ性格悪い知り合いがいて、ソイツのイヤガラセだったんだってさ。でもなんか、ホラ、スズキさんて話し方とか、アレじゃん?ちっと信じたわオレ。」
 笑いながら、ヒサシがまたも他人のプライベートをたれ流していた。
 ここは、ブレイブ。
 ヒサシの前には、カウンターに寄りかかって話をきいているアキヤ。
 2時間ほどして戻ったスズキの弁によれば、そのホモは前のバイト先の店長で、言い寄られて困ったから逃げるためにバイトを変えたのだという。
 デマを流した知り合いは、とっつかまってさんざんののしられたらしい。
 「全く反省してくれてないけど、とりあえず言いたいことは言ってきた。」
 少し疲れた顔でそう言ったスズキに、ヒサシはついでにその、”好きな相手”が、本当はどこの誰なのかをきいてみた。
 「駅前のケーキ屋さんで、ウエイトレスしてる子」
 「あー、あの制服のカワイイ?」
 「うん、そう」
 そのとーり、と笑顔でうなずいたスズキ。
 ホモ疑惑は晴れたものの、今度は次の日からしばらくの間”制服フェチ”のレッテルを貼られることになる。
 ただ、ヒサシ達の誤解はとけたし、女の子で店が混み合うこともなくなり、よって堀の機嫌もよかった。
 とはいえ、居やすくなったブレイブには、ヒサシやスズキと仲のいいアキヤが、お買い上げもなく無意味に入りびたるようになり、堀はそんな彼に、今日もこんな言葉をかける。
 「八敷、たまにはなんか買っていけ。追い出すぞ。」
 アキヤも負けていない。
 「堀ぃ、そんな冷たいコトばっかいってっと俺もお前にホモけしかけっぞ?」
 堀のポーカーフェイスがくずれ、アキヤとヒサシも笑った。
 その瞬間、今日は休みのスズキがどこかでクシャミをしていた・・・かもしれない。 
 ウワサの当事者がいないブレイブで、今日も楽しげな時間がすぎていく・・・。

10月02日
21:18

さて、目標はまだ設定されていないがここは勢いに乗じよう。

っとその前に配置がえを。

宛にひっこんでいた袁譚をとったばかりの前線・江夏へ移動。

兵力を整えていると、

曹操軍が汝南と江夏へほぼ同時に攻撃を仕掛けてきた!

先に襲われた江夏の援軍へ。

ほとんどの部隊が徴兵中で出れず、

やむなく軍師である荀彧だけを伴って駆けつける。

と、江夏の兵力に手をつけてなかったようで、使える部隊がない。

軍師の腕も振るうことができない。

どうやら趙雲が頑張らねばならないようである。

敵は三万と少ない・・・いけるだろうか?!

荀彧の鼓舞をうけながら井欄で火矢をうちまくり、なんと23日もかかった。

が、何とか撃退!だが、その間に汝南が落ちていた。

援軍に呂布を初めとした協力な軍を送ったにも関わらず、

続いて陳留陥落。さらに江夏へ第二波!

援軍要請を最初はシカトしたが、陳留も落ちてるし市街戦で参戦。

アッタマきたんで適当な軍団デボッコボコにしにいく。

防御に回ってる場合じゃねーんだよ!後手後手じゃねーか。

作戦?ねーよ!!全員全力全速で突撃だああああああ!!

損害なんか知るか!ウチはそれで勝てる陣容なんだよ!

だいたい相手は4万しかいねーしな。

15日目にして撃退できたが、最後はぼろぼろの主軍・袁譚の守る庁舎に

曹操が単独で突撃というド根性を見せる。

それを止めたのは関羽の突騎兵。うーん、ドラマティック。

さて、盗られた陳留には太守がいない。

ということは誰が行っても落ちる。取り返してきてね、袁紹殿。

こちらは太守 国淵が守る汝南を取り返しに、

劉備三兄弟と荀彧つれて出掛ける。やはり強いわ仲良しだわで楽しい。

市街戦では、ふだんあんまりそんなことしないんだけど

関羽単騎で敵陣に突っ込み直接攻撃で敵大将部隊にはりつき、

大暴れさせて4日で決着。

軍師も蜀ッコがほしいとこだがなー・・・みつからん。

ところで荀彧ったら、劉備・関羽には“殿”つけるのに、

張飛は呼び捨てなのね・・・。まあ・・・なんか・・・わかるけどw

ちなみに、グダグダやってるあいだに我が軍団の目標は平原攻略に。

趙雲はついでに食い込まれた北方面奪還に向け晋陽へ移動した。

こっから、盗られた領土を返してもらいつつ平原を攻める。

なんかこっち方面、懐かしいなー。新野結構長かったもんな。

で、徴兵を行う都市も隣の上党へ。

ふと洛陽の人口を見ると、12000しか残っていなかった・・・。

で、ここでさらに兵力を整えてる間に江夏と許昌が落ちた。

たぶん、どっかで曹操軍のスイッチがはいって落とされやすくなる気がする。

今回に限れば、むこうには波状攻撃できる兵力も

それで勝てる武将も ろくすっぽないハズだから・・・。

防御がきかないので、落ちた都市はきにしないことにしよう。

とりあえず、近くの鄴を攻める。

大した事ないと思ってたら、曹操軍に周瑜がいた・・・。

マジかーーーーw今までヘボ武将しか出して来なかったくせに、

周瑜が暗躍してたなんて・・・。どこに隠れてたんだ。

まあいいや、敵は倍くらいいるけど、ウチは夏侯淵に張郃に郭嘉に李典だ。

兵器もあるしイケるだろ。・・・戦の最中に軍団が再編成された。

異動の結果によっては攻めにくくなる。つーか勝てなくなることも。

公孫瓚様・・・変なことしないでくださいよ?

24日目、80000ほどの我が軍がおよそ半数に減ったとき、

一時13万まで膨れ上がった敵軍は17000、最後の門を突破。

市街戦に勝利する余力があるか・・・?

だが、敵軍はそこで鄴を放棄、なんとか勝てた!

戦果として蛮族兵が手に入った。

さて、再編成された軍団はどうなったか。

公孫瓚様は前線の指揮を全て趙雲に託し、奥へ控えることにしたようだ。

丸投げとも思えるが、かえって部下も増えてやりやすくなった。

おまけに、この再編成で徐庶が手に入った。どこにいた・・・?

我が娘、成湯ちゃんも帰ってくる。程昱もいる!やった!

名君ですよ、あなたは。あとは俺次第、か。

で、呂布の兄ィに頼んで南皮を落とし、李典を太守に据える。

その後、張繍に許昌を落とさせるが、陳留・汝南に敵襲!

取られても取り返すのは容易。

絶え間ない徴兵・訓練、そして2面作戦の多用がカギか?

ともかくも、軍権のほとんどを趙雲に下さった公孫瓚様の期待に応えたい!

10月02日
00:22

 才女ってのは、ああいう人をいうんだろうな、と思う。
 成績優秀で、やること全てに一切のムダがないようにみえる、ちょっと無口な女子、庭月小楯(にわつき こだて)。
 勉強なんか留年しない程度、毎日遊ぶことしか考えてないような俺とは、あんま縁がないような彼女と、実は最近ちょっと仲がいい。
 キッカケは、校舎の屋上からとびおりかけていた庭月さんを、俺が止めたこと。
 別に、いい人ぶりたいワケじゃなくて、知ってるヤツが自殺なんて、後味悪いし、たまにしか話さなくても、これから友達になることもあるかも知れないしさ。
 それに、家族とか友達とか、絶対に悲しい思いをするヤツが出てくる。
 そんなんヤだしね。
 でまあ、ちょっと話してみたら、思ったより普通のコで、だんだん話す機会も増えていった。
 もともと、頭がいい人って以外になんもわかんなかった庭月さんには、興味があった。
 どんな話をするんだろうとか、何考えてるのかなって。
 んで、できれば仲良くなって、テスト前は勉強教えてもらえたりしたらうれしいなー、とか。
 勉強教えてもらえるかは別として、前より仲良くはなれた。
 俺と話すようになってから、気のせいか庭月さんは周りのヤツらとも少しうちとけてきたように見える。
 見た目も、変わった。
 ただひたすら地味だったのが、少し女の子らしい感じになった。
 髪を下ろしてみたり、前髪を作ってみたり。
 ハデになったわけじゃないけど、誰が見てもわかる変化。
 その、正直まえよりカワイくなっちゃった庭月さんが、一番よく話しかけるのは何をかくそうこの俺。
 ホレちゃったか?俺モテちゃってるのか?とか、ちょっと浮かれた悩みをかかえつつ、友達として付き合っている。
 ちっと自意識カジョーかも?
 まあ、モテちゃいないのかもしれんけど、新しく友達が増えたのは確か。
        ◆ 
 「あれ?庭月さん珍しくね?」
 陽が傾きかけた教室に、彼女がいるのは珍しい。
 授業が終われば、部活動をしているわけでもない彼女は、いつもすぐ帰ってしまうのに。
 それは、声をかけた八敷阿輝矢(やしき あきや)とて同じことだが、帰る理由はそれぞれ違った。
 ただ、今日のアキヤは友人とダラダラしゃべっているうち、いつのまにか時間が経ってしまっただけ。
 「八敷くん、私がなぜこんな時間まで残ってるか、本当にわからない?」
 「えっ?なんで?」
 「そうだよね、ホームルームの時間にあれっだけ大騒ぎしてたら、先生の話なんか聞こえてないよね。」
 庭月の冷ややかな視線は、声をかけてきたアキヤを明らかに責めている。
 もちろん本気ではないだろうが。
「あなた達がトイレにおちた上ばきを投げつけ合って大騒ぎしてる間に、あっまっりっにっもっ!話が進まないから!私が体育祭の実行委員にされちゃったの!ミーティングしてたの!!」
 腰に手をあててお説教する彼女。
 「うへ。」
 ふざけた声を出しながら首をすくめるアキヤの横で、一緒に話していた友人、鴨井が笑っている。
 「ははっ、ホラ八敷ー、庭月さんにメーワクかけたんだからちゃんとあやまれー」
 他人事のような物言いに、庭月がキッと鴨井をにらむ。
 「鴨井くんも、一緒にさわいでたでしょ。」
 ちょっぴり低い声でイカクされ、鴨井のほうが先に謝った。
 「スンマセン・・・庭月先生。」
 先生、とはもちろん冗談で、アキヤもそれに乗っかる。
 「せんせーごめんなさーい。」
 「もう!またふざける!・・・いいけど、ふふ。」
 あきれながらそれを許す庭月だが、それはアキヤと仲良くなる以前の彼女には見られなかった寛容さ。
 冗談を言っても眉をひそめるだけで取り合わないような、年に似合わないその性質は、今ではだいぶ変化した。
 おかげで、こんな言葉にも明るく応じることができる。
 「じゃさ、おわびに俺たちナイスガイ二人が途中まで帰り送ってやっから。」
 言いながらアキヤは、ピッと立てた親指で自分の顔をさして、”俺イケメン!”アピールをした。
 「ナイスガイって・・・」
 鴨井は引きぎみだ。
 しかし、庭月を送っていくことに異存はないらしい。
 そんな二人に、あくまでも上から、高飛車に、庭月は言った。
 「じゃ、そうしてくださるかしら?」
 その響きはお嬢様のように品よく、けれど女王様のように威圧的。
 なんとなく、男二人は軽い敗北感を味わった。
       ◆
 アキヤと鴨井の会話に、時々庭月がツッコむようなカタチで話しながら、三人でてれてれと歩く。
 中古のゲームなどを扱う店の前で、鴨井が立ち止まる。
 「あ。ちょっと見たい。」
 「えーまじで?庭月さんどーすんのよ。」
 「ちょっ、だけ、ちょっとだけだって。」
 そんな二人の会話を横でききつつ、庭月はなりゆきを見守っている。
 ちょっとだけ、楽しいから、ここで別れるのはイヤかも、などと思いながら。
 アキヤと鴨井の会話は続く。
 「何よ、エロゲ?」
 「ばっ!”ヴイイレ”だよ」
 「おー!!おー、お。」
 一気にテンション高めの声を出したあと、トーンダウンしながら、アキヤは様子をうかがうように庭月を見る。
 行ってもいい?と質問するように。
 いいよ、というかわりに、彼女は自分の意見を言ってみる。
 「ねぇ、私も行っちゃダメかな?」
 一瞬、意外そうな顔をした後、アキヤはノーテンキに笑った。
 「ははっおっけ、じゃ行くべ。」
 店内に入ると、目的のモノはすぐに見つかった。
 「うをーっ!まだちっと高いっ・・・けど、買う?買っとく?」
 コーフンしている鴨井が見ているのは、サッカーゲームの新作だ。
 「あ・・・これ私も知ってる。」
 その作品は、庭月もテレビのCMで名前を知っていた。
 「まじ?やったこと、はないよね?今度やってみる?」
 話しながら商品を持って鴨井はレジのほうへ歩き出す。
 どうやらお買い上げ決定だ。
 そのレジのあたりは、少し混み合っているが、よく見るとそれは全員女の子。
 店内の有線放送がきこえにくいくらい、きゃあきゃあとうるさい。
 「ゲーム屋さんて、みんなこんなに混んでるものなの?八敷君。」
 こういう店は初体験の庭月が、少々面食らいつつたずねる。
 鴨井がタメイキをつき、アキヤは肩をすくめる。
 「これは、異常。つか、ここじゃいつものコトなんだけどさ。」
 うんざりした口調でアキヤが説明し、鴨井が人だかりの中へ声をかける。
 「ははっ。聞こえるかな、スズキさぁーん?!」
 それにこたえて、レジのあるあたりから、男の声が返ってくる。
 「もーちょっと待ってぇ。」
 甘えた響きのお返事に、アキヤが軽くキレた。
 「スーズーキ!!てめサボッてるクセに何ギャラリー作っちゃってんだよ!さっさと出て来ぉい!」
 コレに対して、”ギャラリー”の女の子たちの数人が、アキヤをにらんだ。
 人垣のむこうの”スズキ”に無礼な口をきいたのが、気に入らないらしい。
 そんな状況に、当のスズキが少々の険悪さを感じ取って、あきらめて出てきた。
 「もう・・・はいはい、いらっしゃいませ?」
 明らかに、仕方ないという顔をして。
 女の子で出来た壁をかきわけるように出てきた彼は、日本人そのものだった話し方からは、まったく想像できないくらいに外人だった。
 ウソくさいくらいのキラッキラの金髪に、カラコンみたいな青い目をしたカッコいいお兄さん。
 ただ、その髪が肩の下まで長くのびているのは、少しヘンだったが。
 とにかく、スズキという名はどう考えても偽名にしか思えないような人物。
 初対面のハズのその顔を、庭月はどこかで見たことがある気がして、目がクギヅケになる。
 スズキ本人は、その視線に気づいているのかいないのか。
 「アキヤはさー、そうやって優しくないから彼女できないんだよー。」
 女の子に囲まれてサボっていたのを、ジャマされたのが気に入らないようで、適当なことを言ってアキヤをからかう。
 「あ、スズキさぁん、コレー。」
 なじまない名を呼びながら、横から鴨井が割り込んできて会計を頼む。
 「はーい5880円ねぇ。鴨井くんは、アキヤみたいにツンツンしちゃダメだよ?」
 「あっはは、了解了解。」
 他人事に、軽く鴨井が笑ったが、アキヤは黙っていない。
 「まてっまてまてスズキ!おメーの目玉はビー玉か?あァん?」
 「何それ。キレイってこと?」
 スズキは、他人から容姿をほめられることに慣れすぎていた。
 そんな彼の言葉に、その場にいた全員、彼にたかっていた女の子までもが引いた。
 一瞬絶句してから、我に帰ったアキヤが言葉を続ける。
 「ちゃんと見えてんのかってぇイミだっボゲェ!彼女様ならいるだろここに!」
 ぼんやりとスズキの顔を見ながら記憶をたどっていた、庭月の肩をアキヤが急に抱き寄せた。
 「え?ぇ?えぇ?」
 驚いて彼の顔を見る。
 いつもより近くで。
 「な?庭月さん、な?」
 「あ、ぅ、うんっ。」
 本気なのかスズキに対して意地になっているのか、判断がつかないけれど、この場は合わせてあげようかな、と思える。
 なんだか悪い気はしない。
 そんな、見るからに今出来たばかりの設定丸見えの芝居を、スズキは見透かした笑顔でただ見ている。
 スズキのギャラリーの女の子からもヒソヒソ話が聞こえる中、鴨井だけがだまされて、エ、うそまじで?などとうろたえていた。
  数秒間、黙ってアキヤたちをうすら笑いで見つめてから、ひときわにっこりと、人の良さそうな笑顔を輝かせ、スズキは言った。
 「ふぅん、ま、ガンバリなよ。」
 ナリユキとは言え、ちょっといいカンジにドキドキしている二人の気持ちが、見えてでもいるように。
 背中を押してくれているような、そのセリフを受けておきながら、次の瞬間、アキヤは自分から何もかもを台無しにしてしまう。
 「ごめん・・・ウソです。」
 彼としては、庭月まで巻き込んだのに、どう考えても鴨井以外だませていないこの状況で、これ以上言い張るのは情けなさ過ぎて耐えられなかったのだ。
 ついでに、芝居に付き合ってくれた彼女にも、少し悪い気がして。
 だが、それを聞いた彼女はといえば、ややどんよりとした目つきで床に視線を落としていた。
 「だよね・・・」
 と、元気なくつぶやいて。
 ついでに、まわりの女の子たちのヒソヒソ話はさっきよりも増え、眉をひそめてチラチラとアキヤを見ている。
 スズキは、というと、驚きと苛立ちの混じった、彼としては珍しい表情でアキヤを見ていた。
 何だよ、俺なんかしちゃったかよ。
 謝ったのになぜか、誰もが自分を責めている空気が納得いかないアキヤ。
 一方で、不釣り合いな二人がやはり付き合っていたわけではないことに、深く納得している鴨井。
 どんよりしたままの庭月。
 「・・・じゃ、会計すんだし僕いそがしいからさっさと帰って。」
 うっすら不機嫌そうなスズキは、三人に向かってそう言うと、また女の子たちの中へ戻っていく。
 どうせまた、サボってやっていたゲームの続きをするだけに違いない。
 が、ふだんうっとうしいくらい人なつっこい彼に、そんな風に無愛想な態度を取られては、居づらさも最高潮だ。
 三人は、それぞれ違った心境で店を出る。
 「スズキさん、何か怒ってなかった?あ、八敷、このままウチ来るだろ?コレ、やろ!」
 何一つ空気を読めず、ひとり明るい鴨井が買ったばかりのゲームを手に、アキヤを家に招いている。
 「お、おう、・・・庭月、さん、どーする?」
 まだどんより状態から抜け出せない庭月を、気づかうアキヤ。
 「私は、寄るところがあるから、ここで。また、明日ね。」
 気のせいかふだんより少し小さい声は、元気がなく聞こえる。
 ヤベー、確実にキゲン悪いだろコレ。
 何か言わなきゃ、言わなきゃ、と焦るアキヤ。
 「あーっと、待った!ケータイ、そういやケータイとかって教えてもらってないよね?庭月さん!後で電話、いやメールでも、していい??」
 後でメールでもすれば、少しはキゲン直してもらえるかもしれないし、と考えたアキヤだったが、彼女は普通の女子とは少し違っていた。
 「・・・持ってない。それじゃね。」
 「あ・・・」
 フォローしようとして、余計気まずくなったアキヤと、彼の気づかいをなんとなくわかってはいたものの、実際ケイタイを持っていなかった庭月。
 このとき二人は、同じコトを考えていた。
 
 ダメだ、終わった・・・と。
     ◆
 「はよーッス、庭月さん!」
 翌朝、アキヤは何もなかったかのように、ガンバって、庭月に声をかけてみる。
 少し驚いたような顔の庭月に、やはり無かった事にはならないのか、と、あわてた。
 「あ、あー、昨日、何か、ごめ」
 言い終わらないうちに、意外なことに彼女のほうから言葉をかぶせてきた。
 「八敷君、ちょっと聞いて欲しいんだけど。」
 八敷が気にしていないのなら、彼女としても責める気はなかったから。
 若干ガッカリさせられはしたが、それだけで、自分たちの関係が昨日以前と何も変わっていないなら、問題はないのだ。
 だとしたら、そんなことよりも気になることがある。
 自分よりもスズキを知っていそうな彼に、相談したいことが。
 信じてもらえないかもしれないけど、と彼女が切り出した話は、確かにちょっと信じがたかった。
 校舎の屋上からとびおりかけたとき、スズキに似た姿の幻を見たのだという。
 彼女は家に着いてから、思い出したのだ。
 なぜ、彼の顔に見覚えがあったのか、どこでそれを見たのか、を。
 ただ、庭月自身も、気のせいだと言われると思っていたし、あのときの自分は多分どうかしていたから、錯覚でそんなものを見たのかも知れない。
 それでも八敷阿輝矢には、彼にだけは話してみたかった。
 彼女が見たものを、彼が幻と笑い飛ばしてくれれば、それで忘れてしまえる気がしたから。
 見ているとなんとなく安心できる、彼のあの笑顔で、非現実的な記憶をぬぐいさってほしかった、なのに。
 「あぁ・・・それ、本当にアイツかも。」
 アキヤは、冗談を言っているふうでもなく、そう言った。
 「ぇ・・・」
 あっけにとられる庭月に、アキヤは説明するように一方的に話し続ける。
 「アイツさ、なんか、ユーレイとか見えるみたいでさ。実は、あん時庭月さんの様子がオカシイ、とかって言い出したのアイツで。庭月さんが俺の知り合いだ、ってことは知ってたみたいでさ。なんかよくないモノがまとわりついてるって。だから、なんとなく俺、庭月さんのことカンサツしてたワケなんだけど、とにかく、アイツも心配してて。だから、そんなときに見たんなら、無関係じゃないかもよ?ソレ。なんつの、チョージョー(超常)現象?」
 彼女の話と同じくらい信じがたいことを、彼は普通に話していた。
 「そんな、テレビの2時間スペシャルみたいな・・・」
 「でも、そうなんだよ。不思議なヤツなんだ、アイツ。」
 理解できない現象にであった、不可解な心境を何とかしたくて話したのに、よけいに頭が混乱するような話をきかされてしまった。
 ユーレイ?
 超常現象?
 そんな、ばかな。
 違う、やっぱり私が見たのは、きっとただの幻。
 そう考えて庭月が落ち着こうとした時、アキヤは、笑った。
 「だから、俺、庭月さんの言うこと、ぜんぜん信じられるし。」
 やっぱり、なんだか見ると安心できてしまうその笑顔。
 彼が信じるというのなら、それが真実なのかもしれない。
 信じられないようなコトは、本当にあるのかも。
 でも、だとしたら。
 「ねえ八敷くん、スズキさんって、何なんだろう?」
 超能力者とか、占い師、霊能者。
 そんな言葉がうかぶ。
 きょとんとした顔をした後、またアキヤは笑った。
 「何って、ニンゲンだろ、ははっ。ヒデェなあ庭月さん。」
 「そっ・・・ぉゆぅ意味じゃないー、もう!ぁはっ!」
 彼女も笑った。
 謎は謎のままだったが、今はそれで、いいような気がした。

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