しょーりにっき

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プロフィール

しょぉり、と読みます。
しょーりでもいいです。
わかる程度に適当に呼んでください。

好きなモノを好きなように描いて楽しむためにここに居ます。
好きなモノには実在人物が含まれます。(主に上司・2017現在)

前は古いゲームのリプレイをネタバレ多すぎ感傷ひたりすぎで書いてました。
言ってることが気持ち悪いですがイジメないでください。

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新着日記一覧

07月14日
22:58

※一部地域をディスるようなやり取りが含まれる日記です。
該当地域への愛着をもったものではありますが、不愉快に感じる可能性がありましたら閲覧をご遠慮ください。
参加者一同、悪意のないことをはじめにおことわりしておきます。

7/13~14で、もわしさん家オフ会に参加させて頂きました☆
初日は涼しい曇り空にかすかな雨、けっちょさんと十円さんと一緒に到着してすぐ、恒例の仮面・石鑑賞会開催。
(到着時インターホンをならしたけっちょさんが直後にゃんこのチャームを喰らってもわしさんを放置しかけたのは内緒である)
天国の仮面の写真は頂いておくべきでした!
神感がすごい。
レインボーおぶじりあんもといオブシディアンの不思議な美しさを堪能し、巧みな価格交渉の武勇伝を聞きつつ時間はすぎて行き、夕食はワインと珍しいパンに、スナック。
パンと言っても、具沢山でおおきいので侮れない。



ギョーザドッグみたいのがカボチャのパンだそうですが、カボチャだけじゃなくてざくざく野菜かたっぷりでおかずパンとして完成度はかなり高い!
ちなみに、カボチャを思わせるような甘さはさほどなく、野菜炒めとか、野菜の煮たものがつまってる感じ。
まるくてつるんとした方は、羊肉の入ったパンで、臭みは全くなく玉ねぎとお肉がギッシリ。



テーブルにあったジョロキア。
子供の手の届くところにこんなもの置いといちゃいけません。
しょぉりさんが色んな汁をたらしながらラリってしまったじゃないですか。



(二日目もわしさんよりスケブ)
いえ、美味しかったんです。

皆さん今回もなぜかしょぉりのスケブに呪いをかけると意気込んでおり、なにこれ。



お世話になるもわしさん宅へ、千○"のB級グルメらしい、タンタンメンラーメンをお持ちしたのですが、それがいけないんだってさ!
○葉の公認キャラクターのあの赤犬だそうです。
正確には、パッケージの表現に誤解を生む部分があってこんなことに・・・!



その流れをくんでいながら、
さすがけっちょさん。
キラキラさわやかな・・・
で、このカレーはどこから出たんだっけ?
考えたら負けだ!
例の赤犬がこんなイケメンなわけはない。
カレーおかわり!



さらに十円さん。
ああ、確かにしきりに確認していましたね。
あの赤犬は服を着ていたかと。
一糸まとわぬ姿で徘徊してはいなかったか。
つまり、全裸かどうかを。
事実であるから何を描いてもいいってもんじゃないと思う。
顔だけなら天使さんみたいなのに。

全員スケブを回し終わっても話はつきず、もわしさんのあのオールカラー4コマをキレイな生原稿で読ませてもらったりわいわい盛り上がり、近所に聞こえてたら明日から外を歩けない楽しい夜は更けていき・・・寝たの朝近いし。

起きて身仕度整えたら、
みんなでパン屋さんへ。
パン屋のおじちゃんが愛想よく、
みんな仲良く話して盛り上がるなか、
しょぉりは三色パンをGET。
クリームと、イチゴジャムとあんこ。
チョコクリームでなく
イチゴジャムなの初めてでした。
パンがもちもちで美味しかった。
お昼前に水城のこさん合流。
色白でキレイな目と肌の
かわいらしいお嬢さんです♪
お昼はもわしさん手作りの
チンジャオロース。
ここから食べっぱなし。



香辛料も自前の本格派。
山椒がカリカリ口のなかで弾けます♪
酸っぱい味付けのもずくスープは
スッキリ味でさっぱりしてます。



デザートのプリン。
甘すぎない固めのプリンに
はっきりした苦味のカラメルソースが
たっぷり入って大人っぽいあじわい。
~写真忘れた~
葛バーってアイスは
もちもちの葛で固めた黄桃アイス。
時間たっても葛だから溶けない!
水城のこさんの持ってきてくれた
チーズケーキは、とろふわで
濃厚なのにスッと口のなかで消えていく
見た目も味わいも上品なおやつでした!
しょぉりだけ二個食べた!

十円さんとけっちょさんは先に
帰っちゃうので駆け足でスケブ交換。
早いけどテキトーにはしないの
さすがです!
しょぉりのスケブは呪われてるから
他の絵は見ないように!って
のこさんに渡したけど、
赤犬のくだりはバレてた。
・・・チッ。



どきどきしてたけど、
のこさん天使。
中性的なかわいいのん出てきたコレ!
水彩で色付けするところを
見せて貰ったり、
色々話したら予定よりかなり遅く
なってしまいました。
楽しいからあっという間です!
よって、諸事情で時間のないしょぉりは帰りの社内で文章だけ先に綴っていたりします(笑)
座れて良かったー!

今回も楽しかったし、新しい出会いも新鮮で嬉しいことでした。
皆さん、ありがとうございました!

~おみやげ編~



けっちょさんより、
ユニコの可愛いケースにふせん、
むしよけカエルちゃんもリアルで可愛い!
インコさんはメラミンスポンジだけど、
ボロボロになったら可哀そうだから使えないよ!
入ってたバッグも使い勝手よさそう!



もわしさんより、
良い目のおかしたくさんと
珍しいトマトのジャムもいただきました。
トマトジャムすぐあけたいけど引越すまで我慢><

12月23日
23:28

 「ハクコ?」
 「そうだ。」
 「げろ?」
 「げ・・・何だと?」
 「いつもきもちわるいの?」
 私は会話の内容に大きな擦違いを感じた。
 少し考えて、思い当たる。
 吐く、子・・・?
 「タマ、今のは忘れてくれ。」
 「だいじょーぶぅ?だいじょーぶぅ?」
 心配している所を見ると、私が本当に吐くと思って居るのだろう。
 ややこしい。
 別の名を考えよう。
 「白夜、だ。白夜と呼ぶが良い。」
 陽の沈まぬ、白き夜が有るという。
 白からとっさに連想したものだが、神秘的な響きは私に相応しい。
 「ビャクヤ?」
 「そう、白夜だ。」
 ふぅん、とタマは言い、嬉しそうに笑った。
 「ビャクヤとタマ、きょうからおともだち。」
 「ああ、そうだ。」
 そこへ、不意にあの方の声が割り込んだ。
 「びゃくや?それってあなたの名前?」
 「稲荷神様、いらしていたのですか。」
 「いい名前ね、白夜くん、か。」
 稲荷神様は、優しく微笑んだ。
   ◆
 タマが居ない間、ヨシアキはせっせとおイナリさんを作っていた。
 山盛り作って他におかずとおツユを仕上げ、ダイニングテーブルに突っ伏してうたた寝こいてるところへ、やっとタマが帰ってきた。
 もう夕方になっていた。
 「タダイマー。」
 「あぁ、おかえりタマ、遅かったね。
 ごめんな、怒った?」
 外へ出ても、用心のため、と人間に話しかけたりしないように言われているタマは、友達がいない。
 ヨシアキを待ちきれなくて出て行ったものの、遊ぶ相手もいないはずなのに、タマはゴキゲンだった。
 「おかえりぃヨシアキー、あのねタマね」
 話そうとして、山盛りのおイナリさんに気付く。
 「わぁーおイナリさーん!ヨシアキ ダイスキー!」
 飛びついてきたタマを抱きしめ、ヨシアキは
 「おれもタマが大好きだよ。
 ちょっと早いけど、ゴハンにしちゃおうか。」
 と言った。
 
 その晩、ヨシアキは深く悩んで今日会っていたはずの親友に電話をかけた。
 「しょーちゃん、タマ、友達作ってきたよぉ。」
 「何だと?!いやまずいだろ、いや、いやでも少しの間くらいならバレないかも知れないし、許してやっても。」
 「いやー、それがあ、その、ね?あぁあ~。」
 「何だ何だ何だ、いつにも増して歯切れが悪いな。」
 ショウリに促され、ヨシアキは意を決する。
 特にショウリには物凄く言い辛いこの話、だが相談できるのもショウリくらいなものなのだ。
 「それが、その、お稲荷さんと、あと同じ狐でお稲荷さんの使いなんだって。」
 「お稲荷さん?!神様じゃねえか!
 本物なら・・・すげえな。」
 「それは、そうなんだけど。
 その狐の、白夜くんが、・・・おれと、しょーちゃんが、愛とか、何かもう、タマに変なこと吹き込んでて」
 「ぶっ・・・愛って、なんっ、ゲイってことか?!」
 動揺するショウリの声。
 「もぅおれ、どう訂正してどこまで教えればいいか・・・」
 ヨシアキは頭を押さえ、目を潤ませた。
 「しっかりしろって、ゲイの知識はタマにはいらんだろ。
 つーかお前はそんな事に詳しいのかよ。」
 この際どうでもいいツッコミが入るあたり、ショウリも少なからず動揺していた。
 「タマがぁ、おれのタマがこれ以上変なこと言い出したりしたら、おれ、おれどうしよう、しょーちゃぁーん!」
 「知るか・・・くそっ。」
 電話の向こうで、ショウリは頭をかきむしった。

12月18日
17:48

 しかし、この無垢な存在に人の性(さが)を教えねばならぬ。
 知ることで、淋しさを納得も出来よう。
 「だがな、タマよ。
 ヨシアキの身にもなってやるのだ。」
 「ヨシアキ?」
 タマが小首をかしげる。
 「そうだ、タマよ、タマがヨシアキを慕う・・・好いておるように、ヨシアキもまた、そのショウリという男が好きなのだ。」
 「えぇえー?!」
 タマが非難の声を上げる。
 「ヤダヤダ!キモいよー!」
 きもい。
 この言葉は聞いた事がある。
 若者言葉という、悪口の一種だ。
 肝い、つまり肝のようにぐちゃぐちゃとして苦く、嫌悪感があるという意味だろう。
 私はそう推察している。
 だが、愛の形は様々だ。
 タマには、まだ理解出来ぬのやも知れぬが、それを教えるのは私でありたい。
 まずは身近なヨシアキの愛を知ることで、タマには学んで貰おう。
 私は諭す。
 「タマ、きもいなどと言ってはいけない。
 ヨシアキがショウリを想う心も、タマがヨシアキを想う心も、違って見えるがそれは同じ愛なのだ。」
 タマは顔をしかめる。
 「ちがうもーん!
 あいってゆーのは、かれしとかのじょがらぶらぶちゅっちゅなやつだもぉーん!
 ヨシアキはちがうもんっ!」
 また泣きそうな顔に逆戻りしたタマの、小さな肩を掴む。
 「違わぬ。
 ショウリとヨシアキも、見方を変えれば彼氏彼女というものなのだ。」
 膝をついて、真っ直ぐにタマの目を見つめた。
 タマは、一瞬黙って私の言葉の意味を考える。
 次の瞬間。
 「うぅ~~~わぁ~あぁああ、ウソつき~~~!
 ちがうもーーーーん!キライぃ~~~~!!」
 大泣きしだした。
 「タマ、泣くことはなかろう。
 何を悲しむ事が有る?
 愛は愛なのだ、素晴らしい物なのだぞ?
 いやそれよりも、嫌いとは私か?
 私の事なのかっ?!」
 こんなに動揺したのは何年、何十年ぶりであろう。
 未熟な私は、泣き止まぬタマを目の前にして、ここに
あの方がいれば、と心の中で稲荷神様に助けを求めていた。
 「わぁーん、キライーキライー!
 ワタシのおニィちゃんキラーイこっちくんなー!」
 “ワタシのおニィちゃん”は私を指すらしい。
 すっかり嫌われてしまった。
 幼子の姿をしたタマは、知性もその程度なのだ。
 ヨシアキの性癖を理解するのは、荷が勝ちすぎ、残酷ですらあったかも知れぬ。
 私は消沈し、狐の像に戻ることにした。
 「悪かった、きっと私が間違っていたのだろう。
 もう戻る、そなたも帰るがいい。
 ヨシアキも、じき戻ろう。」
 「かえっちゃうの?」
 涙を拭う両手の間から、タマの大きな目がこちらを覗う。
 「嫌われてしまったからな。」
 「うっ、うっうわぁ~~~ん!」
 再び大声を張り上げて泣くタマは、私に帰って欲しくないように見えた。
 「私は、居た方が良いのか?」
 タマは、両手で涙を拭いながら何度も頷く。
 「・・・ぇっく、キライ、じゃ、うくっ、ないから・・・タマ、おともだち、なって?」
 そう言われて、私は理解した。
 嫌い、は嫌(いや)という事だったのだ。
 最初にタマは言ったではないか、お稲荷さんを見つけて友達だと思った、と。
 人間の友など持たなくて、他の狐の知り合いも居なくて、やっと見つけた私と友達になりたいだけなのだ。
 それなのに、私はタマの嫌がる事を言って悲しませてしまった。
 あの話が嫌だっただけで、私自身が嫌われた訳ではないのだ。
 目の前が少し明るくなった気がした。
 「ああ、そうだな、そうしよう。
 済まなかった、泣かせてしまって。」
 涙が落ち着き始め、タマが答える。
 「タマも、キライってゆって、ゴメンなさい。」
 「良いのだ、悪かったのは私なのだから。」
 私が苦笑すると、タマも少しだけ笑った。
 「なかなおり?おともだち?」
 そっと、遠慮がちに訊いてきた。
 「そうだな、宜しく頼むぞ。」
 私は微笑みかけた。
 今はそれで良いのだ。
 愛は、タマにはまだ難しい。
 「やったー、えへへ。」
 タマは、やっとまた元通り明るい笑顔を見せた。
 文句なしに愛らしかった。
 話していると神経が磨り減っていくが、それでも帰したくないと思えた。
 「ねぇねぇ。」
 「ん、何だ?」
 「ワタシのおニィちゃんは、おなまえ、なんてゆーの?
 タマはねー、タマだよ。」
 「名前、か。」
 我等は白狐と呼ばれるが、“まとめて”白狐でしかない。
 それは名前とは少し違うが、近くには私の他に白狐は居ない。
 「白狐だ。」
 私はそれを名前とする事にした。
(続)

12月13日
23:52

 「・・・タマよ、どこまでが神様で、
 どこからが食べ物の話だったのだ?」
 呆れた顔をしているであろう私に、タマは笑顔を見せた。
 「わかんない。」
 可愛らしくはあったが、それは私の混乱を取り除く役には立たなかった。
 「私はもっとわからぬ・・・」
 私は、己が思う程賢くないのかも知れぬ。
 情けなさに、眉間を押さえて耐えた。
 タマが気づかう声をかけてくる。
 「どしたの、アタマいたいの?」
 「あ、いや」
 そんな気がする事はするのだが、実際に痛みはない。
 タマにはそれが解らぬらしい。
 「タマ、いいこしてあげよーか?」
 「良い子・・・?」
 「しゃがんでー。」
 意味も解らぬまま、私はとりあえず従ってみる。
 何をするのか、少し気になった。
 するとタマは、私の頭を撫でてきた。
 成程。
 良い子、は撫でてやるものだ。
 「これで頭痛が治るのか?」
 一種の呪い(まじない)であろうか。
 「ズツー?」
 タマが訊き返した。
 「頭が痛いことを、そう言うのだ。」
 「ふーん。」
 「で、治るのか?」
 「ヨシアキは、よくなったよーってゆうよ。」
 「ヨシアキ?」
 急に出てきた男の名。
 「それは、人間か?」
 他の狐ということも、考えられなくはない。
 そしてそれは、タマの伴侶であるかも知れぬ。
 子供に見えて、妖怪の年は判らないものだ。
 私は興味を引かれた。
 「ヨシアキはねー、ニンゲーン。」
 それを聞いて安心した。
 そうであれば、種族の壁は障害となってくれる。
 と考えて、気付いた。
 知らず、淡い焦りを抱いていた事に。
 タマを我が物としたい、そう思い始めていた事に。
 同じ狐だからに過ぎぬであろうが、私を頼ってきた事が好ましく思えたか。
 それとも、容姿の美しさか。
 はたまた、目映いばかりの笑顔を惜しまぬことか。
 それに、私を心配もしてくれた。
 どれが理由なのか。
 何が私を捕らえた?
 不可解な気持ちを自問する。
 否。
 どれではない。
 全てが好ましいのだ。
 考え込むあまり黙っていた私を、タマが覗き込む。
 「どしたのー?おハナシしよー?」
 退屈させてしまったようだ。
 「あぁ、ああ、そうだな。
 では質問させてもらおう。
 タマ、そなたはヨシアキとやらに使役・・・
 使われておるのか?」
 タマにも解るよう、使役という難しい言葉を易しく言い換える。
 「ツカう?」
 それでも訊き返されてしまった。
 タマとの会話は骨が折れる。
 しかし、伝わる事に喜びを見出せる。
 それはささやかだが、それでも、当たり前の事が有難いのだ、と小さなタマに教えられている気がした。
 私は、伝わらなかった言葉を、もう一度噛み砕いてタマに差し出す。
 「命令されて働かされる、というような事はないか?」
 「えっとねー、ゴハンのあとおサラもってきてー、って、ゆうよ。」
 「お皿?」
 今度は私が訊き返す。
 「うん、おサラ。あとはねー、いいこにしてなってゆうよ。
 いいこにしてるとねぇ、おイナリさんつくってくれるー。」
 どうやら式などとして使役はされていないらしい。
 だが新たな疑問が生まれた。
 食事の後に皿を持っていく、というのはもしかしたら片付けの手伝いなのではないだろうか。
 そして、良い子にしていると好物を作ってくれる。
 それは・・・。
 「タマよ、母親・・・おかあさんではないのか、それは。」
 「タマ、おかあさんいなーい。
 ヨシアキのことでしょー?」
 話がずれている、と言いたげにタマが私を見る。
 ではタマは、母親のような男に、子供として育てられているのだろうか。
 母のような男。
 おそらくは、“おかま”という種類の人間であろう。
 最近急に増えだした。
 だが奴らとて、変わってはいるが決して人外ではない。
 同じ人間だ、心根の優しい者もいるだろう。
 女のように生きてはいても、子供は望めぬ体。
 タマを娘の代わりとしているのやも知れぬ。
 そうに違いない。
 合点がいった。
 「・・・そうか、タマよ、幸せか?」
 「うん、タマ、ヨシアキ ダイスキ。」
 タマは笑ったが、ならばなにゆえ此処にいるのか。
 「ではタマ、そのヨシアキはどうしたのだ。
 なにゆえ此処に来た?」
 「ヨシアキはね、タマのことおいてっちゃったの。
 ショウリんとこにおとまりなの。」
 「・・・ショウリ、とは男か?」
 「うん、カオこわいし、ヨシアキとろうとするからキライ!」
 タマを置いて男と逢引とは、やはりそのヨシアキとやらは“おかま”で間違いないのだ。
 「それは、淋しかったな。」
 「うん、あしたかえるよーってゆってたけど、おきたらひとりで、さみしかったの。」
 「そうか、そうか。」
 私は、一人で留守番をする健気なタマを思うと胸が絞め付けられた。
(続)

11月27日
18:30

 お稲荷さん、というのは我々のことを指さない。
 我等狐は稲荷神の使いであって、“お稲荷さん”そのものではないのだ。
 だが、この小さな狐はそれを知らぬらしく、私が休んでいる狐の像に向かってしきりに話しかけてくる。
 「ねーおイナリさん、タマもおイナリさんなんだよー。
 でてきていっしょにアソぼうよー。」
 大きくてくりくりした目の、可愛らしい女の子の姿をしてはいるが、まとっている気配というか、ニオイというか、力の性質は我等狐とほぼ同じ、つまり狐のはしくれであることを表していた。
 だが、格は違いすぎるほどに違う。
 この小狐は力弱く、我等 白狐(はくこ)には遠く及ばない。
 そして、我等のように清らかなものとは違っていた。
 かといって、邪悪とも言い切れない。
 併せ持ち、どちらにも傾く。
 見た通り、子供や動物そのままの性質をしているようだった。
 狐として分類するなら、野狐といったところか。
 それが、何も知らずに自らをお稲荷さんと名乗り、仲間である筈の私に話しかけてきているのだった。
 「ねーねー、ナカにいるんでしょ?
 でてきてアソぼー?」
 人型をしているものの、狐耳だの尻尾だのをうまく隠せないらしく、話しかけている間 耳の上にあたる位置に結ってある蝶結びが、部分的に束ねられた髪の房ごと小刻みに揺れたりする。
 赤い服の後ろの大きな蝶結びは尻尾を変化させているらしく、これまた時々動いている。
 うまく化けている気でいるのだろうが、隙だらけだ。
 「ねぇねぇ、ねぇねぇ。」
 しつこく話しかけてきているが、こんな低級妖怪につきあってやる気はない。
 私は、神の使いだ。
 正しき者の願いを神に届け、また神の力を選ばれし者に授け、人を、世を守るのが私の役目なのだから。
 とはいえ、見れば見るほど、この小狐は愛らしい容姿をしている。
 成長すれば、さぞや。
 眺めるうち、小狐の表情が曇り始めた。
 「なんでおへんじしてくれないのー?」
 眉を寄せ、大きな目を潤ませる。
 私は、どこか落ち着かない気持ちになった。
 小狐が勝手に仲間と思い込んだだけで、私のせいではないというのに。
 小狐はうつむいて肩を落とす。
 「タマ、さみしーのに。
 ひとりぼっち、なのに。」
 声が震えている。
 放っておけば、泣いてしまう。
 私は、迷った。
 人ならぬもの同士、姿を消しても逃げ切れぬ。
 関わればこれきりでは済まないだろう。
 小狐はなおも嘆く。
 「おイナリさんみつけて、うれしかったのに。
 おともだちって、おもったのに・・・。」
 私は狐の像から出ると、人の姿を取った。
 「泣かずともよい、小狐。
 少しだけなら相手をしてやる。」
 言ったものの、本音はこんな子供相手にどう接してよいものか全く判らなかった。
 それでも、淋しがって泣いているのをただ見ては居られなかった。
 私を見上げた小狐の目は、辛うじてまだ涙をこぼしてはいない。
 私は、安堵した。
 小狐が問うてくる。
 「・・・おニィちゃん?おジィさん?」
 訳の解らぬ問いに、私も問い返す。
 「私が老人に見えるのか?」
 己の能力に自信はあるが、それでも目指す高みを思えばまだまだ未熟だ。
 我等のような“人ならぬもの”の姿は、その持てる力を反映するのが普通であり、修行中の身である私の姿は十代後半あたりに見える筈だった。
 小狐は答える。
 「だってアタマしろいよー?」
 成程。
 白髪は確かに老人の特徴でもある。
 「これは私の毛並みだ。」
 私は白い狐の姿に変わって見せる。
 「わぁ。」
 小狐が嬉しそうな声を上げた。
 珍しい白狐の姿を人に見られても厄介なので、すぐに人型に戻る。
 小さい無人の社の守りは退屈だが、人気のない事はこういう時に便利なのだ。
 「おイナリさん?」
 「違う。私は、その使いだ。
 お稲荷さん、とは此処に祀られている神様であって、
 狐の事ではないのだ。
 だから小狐よ、そなたもお稲荷さんではないのだ。
 覚えておくがいい。」
 私が教えてやると、小狐は一人前に反論してくる。
 「コギツネじゃないもん。タマだもん。
 タマはイイコだから、
 おーきくなったらおイナリさんになるんだもん。」
 成程。
 善なる狐であるから、お稲荷さんである、という理屈らしい。
 だが、間違いは間違いだ。
 「ではタマよ、改めて教えてやる。
 狐とお稲荷さんは別物だ。
 もっとも、そなたが今後も“良い子”でおり、
 尚且つもっと力をつけるならば
 私のように稲荷神様に仕えることもできよう。」
 うっすら口を開けて私の話を聞いているタマの目は、もう潤んではいなかった。
 「そっかー、タマ、おイナリさんじゃないんだねー。
 ザンネン。おイナリさんだいすきなのになー。」
 「ほう?なにゆえだ。
 あの方に会った事でもあるのか?」
 「ううん、だって、オイシイでしょ?」
 やはり私は、子供が苦手だ。
 話について行き切れない。

(続)

10月11日
02:00

 「じゃー、おれもう帰るけど引っ越して一週間もたつんだから、いーかげんあのダンボールの荷物片付けなよ?」
 おれの言葉に、横分けな寝癖がついたしょーちゃんは露骨に嫌な顔をした。
 しょーちゃんの部屋で遅くまで飲んだおれは、昨日そのままここに泊まっていた。
 最初からそういう話ではあったものの、うちではタマがきっと寂しがっているだろう。
 お昼には間に合うように帰ってあげたい。
 おれが帰るための身支度をするあいだ、しょーちゃんは寝転がったままそれを眺めていた。
 ヒゲも剃らなきゃ顔も洗わない。
 今日も外に出る気はないのだろう。
 面倒くさがりなしょーちゃんは、だから引越しの荷物もほどかない。
 必要なものだけを、ダンボールから直接出して使っている。
 玄関のドアを押さえたまま、しょーちゃんがふてくされ気味の声を出す。
 「気が向いたらな。」
 おれはすかさずツッコむ。
 「すぐやりなよ。だから手伝うって言ったのに・・・。
 そういえば、隣近所に挨拶はすませた?」
 「ああ、隣の女とはおととい顔を合わせたな。」
 答えをきいたおれは、がくりと肩を落とした。
 「じゃ、ちゃんとした挨拶はしてないんじゃん・・・。
 今日このあとにでもいいから、粗品のひとつも持って
 最低限両隣だけでも行って来い!」
 「んなことしなくたって追い出されやしねーだろ。
 ほっとけ。」
 しょーちゃんの顔が不機嫌にゆがみ、おれはちょっと意見がいいづらくなる。
 「でも、失礼だし。」
 弱気になってしまったが、親友相手にビビってどうする、と思い直す。
 「この先、何かあったらお世話になるかもしれないだろ?」
 言いたいことはちゃんと言わなきゃ。
 スジが通ってればしょーちゃんは絶対わかってくれるんだから。
 「なんねーよ。
 ・・・いや、あのオッパイには世話になっても」
 しょーちゃんは無精ヒゲの生えたアゴを手でなぞり、考える顔をした。
 「隣の人を何だと思ってるんだよ・・・。」
 おれは呆れを隠さずつぶやいた。
 しょーちゃんはケロリと答える。
 「いいオッパイ、だな。」
 「おれは犯罪者の友達なんてゴメンだからな。
 じゃあね。」
 忠告して背を向ける。
 もちろんそんな心配はないと知っているけど。
 後ろで、無気力な
 「おー。」
 という声がして、ドアが閉まる。
 おれは、しょーちゃんらしさに呆れて笑った。
 大人のくせに、と。
 だいたい、今回の引越しの理由だって大人らしくない。
 いつまでもちゃんとした作家になれない弟に、業を煮やしたキリコさんとケンカして家を出たという。
 働いていないわけではないから収入はちゃんとあるのだが、姉からすると勤め人でもなく、いつまでたっても芽が出ない怪しい仕事をしているように見えて心配なのだろう。
 それでも、しょーちゃんはハードボイルド作家になるという夢を追い続け、書き続けている。
 頑ななその姿勢は、よく言えば少年のようで、悪く言えば子供っぽい。
 おれ個人としては、食べていけるならそれでいいと思う。
 自分の人生なのだから。
 けど、キリコさんは違う。
 「ヨシアキくんを見てみな!」
 大人になれ、と よりによっておれを引き合いに出したこともある。
 子供のころは、逆におれが大人っぽいしょーちゃんに憧れていたのに。
 とにかくそうして、しょーちゃんは家を出てこのHBH302にやってきた。
 家賃と立地で決めてしまってから、ハッピーベルハイツという、ちょっと可愛らしい名前に後悔を覚えたらしい。
 だからしょーちゃんはココを、HBHという略称でしか呼ばないし、おれにもそう釘をさしてきた。
 髪はボサボサ伸ばしっぱなし、服もテキトーなのを着てるくせに、変なところで格好をつけたがる。
 おれはしょーちゃんの部屋を振り返った。
 隣、303のドアも目に入る。
 優しい人だといいけど。
 少しだけ、心配になる。
 と同時に、おれは自分の隣人を思い出した。
 603号室の住人、織田信濃(しなの)さん。
 凛とした美人で、その上優しい。
 引越しの挨拶に行ったおれに、
 「何でもきいてくださいね。」
 と笑ってくれた顔が、二年たった今でも忘れられない。
 恥ずかしながら、あの時からおれは彼女に恋をしている。
 もう三十なんだから、いいかげん家を出て嫁探しでもしろ。
 そういっておれを追い出した父さんに感謝したいくらいだ。
 おかげで織田さん・・・信濃さんとお隣さんになれたのだから。
 とはいえ、おれと信濃さんには今のところそれ以上の接点はない。
 彼女は今24歳でぜんぜん年下だし、美人で、おれはといえば、何のとりえもないただの地味な・・・おじさんだ。
 ついでに、狐憑き。
 ため息がでる。
 タマは可愛いけれど、どうにも嫉妬深くておれが彼女を作るのをよく思ってくれない。
 多少言い方は悪いが、ちょっとした障害だ。
 もちろん、一番悪いのはお世辞にもカッコいいとは言えない上に、すっかりオヤジになっちゃったおれ自身なのだけれど。
 などと。
 楽しくない考えにおちいっているうちに、どうやら家についてしまった。
 隣は、留守。
 休日だし、信濃さんもどこかへ出かけているのだろう。
 偶然見かけて、時々少し会話するのをささやかな楽しみにしているおれは、ほんの少しだけがっかりした。
 隣に住んでるからって、そもそも会える日の方が少ないのに、今日だって信濃さんは彼氏と会ってるかもしれないのに、元々期待できる余地なんてないのに、落ち気味な気分のせいか、おれはフラれたような気になって、自宅のドアを開けた。
 「ただいま、タマ。」
 タマのことは、いまだにおれとしょーちゃん達以外には秘密だ。
 遊びに行くときも、この辺で人間の姿にはならないよう、よく言ってある。
 いつまでも大きくならない子供なんて、怪しすぎるからだ。
 なので、ここはおれ一人で暮らしていることになっているが、今は周りに人が居ない。
 普段ならドアをしめてからかける声を、今日は寂しくて早めに出してしまった。
 返事がなかった。
 「タマ?帰ってきたよー、タマー?」
 呼びながら中に入っていく。
 ダイニングテーブルに、メモをみつけた。
 いびつな、カタカナ。
 「オデカケ スル」
 遊びに出たようだ。
 おれは、タマにまでフラれた気がした。
 なんだか急に、ものすごく寂しくなってきた。
 じわり、と この程度のことで自分が涙目になったのがわかる。
 「こういうとこ、直さなきゃな。
 しょーちゃんの心配する立場じゃないや。」
 つぶやいた独り言で、寂しさは倍にふくれあがった。

09月26日
02:53

 「タッ、タマ!」
 しょーちゃんは怒ったりしないだろうが、おれは慌てた。
 「タマは、タマはヨシアキのこと、
 スキなぁのーにー!」
 言葉の途中から、真っ赤な顔をしてタマはポロポロ泣きだした。
 妹みたいに、それでいて一番仲のいい友達みたいに思っていた小さなタマ。
 タマの“スキ”は、最初からそういう意味だったのだと、おれはこの時初めて知った。
 細く、高く、悲鳴に似た声を上げてタマは本格的に泣き出した。
 そんなつもりじゃなかったのに、本気でタマを傷つけてしまった。
 泣かせてしまった。
 そのことに、おれ自身もまた傷ついていた。
 泣き声が、心に痛い。
 「ひぃーぃ、うっく、くーぅー・・・ふぇーーーー」
 もう二度と笑ってくれないんじゃないかと思えた。
 どうしたらいいかわからない。
 ホワイトアウトはさっきの比じゃなかった。
 「違うから、違うから、違うから・・・」
 おれは早口につぶやいた。
 今のこの状況全部を否定したかった。
 「違うんだ・・・。」
 立ち尽くす自分、泣いているタマ、破かれて垂れ下がったポスター。
 おれは、タマにちゃんと説明しなきゃいけない。
 凍りついた体が動き出す。
 ポスターに手をかけて、おれはもう一度口を開いた。
 「タマ、違うんだよ。あんなの嘘なんだ。」
 涙で濡れた目が、おれを見る。
 びりっ。
 俺はポスターを乱暴に引き剥がした。
 「こんな子、好きじゃないから。」
 びりびりっ。
 さらに細かく破き、丸めてゴミ箱に捨てる。
 「タマのこと、泣かせるなんてっ」
 言いながら、声が震えているのに気づいた。
 目の奥が熱い。
 「ごめんね、ごめんっ・・・」
 謝っても、許してくれないかもしれない。
 スキって言ってくれてた気持ちを、裏切ってしまった。
 わかってなくて、ずっと裏切っていた。
 嫌われるかもしれない不安に押しつぶされて、タマの気持ちを思うと苦しくて、涙がこぼれた。
 「ヨシアキ、なかないでぇ・・・」
 言いながら、タマはまた泣き始めた。
 「ごめ・・・」
 それでも止まらなくて、おれも泣き続けた。
 「いいの、タマ、ぇくっ、タマごめんなさいするから、ごめんなさいするからもうなかないで?ごめんなさい、ヨシアキ、ごめんなさい。」
 「もういいよ、ごめんっ!」
 それだけやっと言うと、おれはタマをぎゅっと抱きしめた。
 涙がひいても、俺はまだ少し不安でタマを放すことができなかった。
 「あんな子、好きじゃないからね。
 タマ、信じてね?」
 声が元に戻っている事を確認しながら、おれはつぶやいた。
 「ほんと?」
 「うん。あれはしょーちゃんがくれただけ。
 嘘ついてごめんね、急にあんなことされて
 ぼくもびっくりしちゃったんだ。」
 「うん・・・ゆるしてあげる。」
 おれの腕のなかで涙をぬぐいながらタマがそう言ってくれて、おれはやっと不安感から解放され、タマから手を放すことができた。
 「でもね、タマとは、えっと、・・・変な事はできないっていうのは本当なんだよ?」
 おそるおそる説明する。
 「ヘンなこと?」
 泣きやんだはいいが、タマは説明しづらいことを無邪気に訊き返してきた。
 「えー・・・と、だから、あの、さっきタマがしようとした事!」
 「えー?」
 不満げな声が返ってくる。
 見た目も中身も子供のくせに、する事はしたかったようだ。
 でもこれはきちんと諦めてもらわないと、また襲われてはたまらない。
 「だってタマはぼくの」
 言いかけて、止まる。
 いつまでも“ぼく”なんて言ってる子供じゃダメなんだ。
 おれは言い直した。
 「タマはおれの妹なんだぞ?
 お兄ちゃんは、妹にそんなことしたりしないんだ。
 わかるだろ?」
 おれはタマのお兄ちゃんなんだから。
 弱っちーお兄ちゃんじゃ、妹は守れない。
 「じゃあもうイモートやだ。おニィちゃんなんてやだ。」
 「じゃ、家族じゃないから一緒に住めないじゃないか。」
 ダダをこねだしたタマに困ったおれは、少しだけ脅かす。
 「やだー、どっちもやだー!」
 脅しても全く解決しない。
 おれは少し考えた。
 今までと同じようにいたいだけ、それをどう話そうか。
 「タマ、おれは妹としてタマが好きだよ。」
 「イモートやだぁ。」
 「でも、大好きだよ。ずっと可愛いって、言ってきたよね?」
 「うん。」
 タマはとりあえずうなずいてくれた。
 「今までおれと一緒にいて、タマは不満だった?」
 「ううん。」
 タマは首を横に振った。
 「おれは、楽しかったよ。一緒にいれてよかった。」
 「タマもー。」
 タマは、笑った。
 やっぱりその顔は可愛くて、だけど抱きたいとかそんな気持ちには絶対なれない種類の感情。
 「じゃ、今までどおりでいいんじゃないかな?
 変なことしたいっていうなら、
 おれはタマと他人でいなきゃならない。
 妹だって可愛がったりできないよ。そのほうがいい?」
 タマの表情が曇り、不安そうな顔に変わる。
 「やだ、やだやだっそんなのゼッタイやだ!」
 懇願するように抱きついてくる。
 小さな頭をなでてやる。
 「大丈夫、今までどおりにしてればいいんだから。」
 「うんっ。タマ、それでいい。がまん。」
 見上げてくる顔は笑っていたが、瞳にはひとかけら、切なさが見えた。
 ちくん、と。
 かすかに胸がいたんだ。
 おれにとっては今までどおり。
 だけど、タマには我慢。
 ワガママに見えて、これでもタマはたくさん我慢している。
 この家では、おれがいないときは姿を消して息をひそめていなければならない。
 おれ以外の家族とは接触しちゃいけない。
 したがって話し相手はおれか、時々遊びにくるしょーちゃんくらいしかいない。
 だからたぶん友達もいない。
 隠れてTVくらいは見ていても、退屈な時間はきっと多い。
 ご飯も抜きで、オヤツを少し分けてもらえるだけ。
 たくさん、たくさん我慢してやっとここに居られる。
 そのタマに、また我慢を増やすことになる。
 「ごめん・・・だけど、大好きだよ、タマ。」
 おれの言葉に、タマの表情はさらに曇った。
 「ヨシアキ、かなしいの?」
 「え?」
 顔に出ていたのだ。
 おれは、笑って見せた。
 「ううん、平気だよ。」
 それで、タマも笑ってくれた。
 「ちいちゃいタマが、大好きだよ。
 ずっと、そのままでいいんだからね。」
 「うん、タマもヨシアキ、ダイスキー。」
 抱きしめてやると、タマはいつのまにか出ていたふさふさのしっぽを嬉しそうにゆらした。

 次の日、ポスターのことを正直に話して謝ると、しょーちゃんは最初驚いていたが、やがて真顔に戻り、
 「泣かせたか・・・悪かった。ごめんな。」
 謝ってくれた。
  ◆
 「ヨシアキー。」
 パソコンをいじりながらショウリは少しうんざりした声を出した。
 「ん?」
 そのショウリをじっとみていたヨシアキはビールを口にふくみながら返事をした。
 ショウリは顔をパソコンにむけたまま、言う。
 「うすら笑いうかべて人の事見てんじゃねえよ、気持ちわりぃ。なに考えてんだお前。」
 ヨシアキはむっとして言い返す。
 「そーいう言い方するから誤解されるんだよしょーちゃんは。」
 「誤解?」
 ショウリはヨシアキを振り返る。
 ヨシアキの顔は、笑っていた。
 「本当は優しいくせに。」
 「ホントに気持ちわりぃ事言うんじゃねえよ。」
 ショウリはヨシアキの頭をはたいた。
 動いた拍子に髪の隙間からのぞいたショウリの目は、少し照れた表情をのぞかせていた。

09月19日
23:59

 「ヨシアキー、これだれ?」
 約束なのでしぶしぶ貼ったポスターを、下からタマがまん丸な目で見つめていた。
 「あ・・・アイドル。」
 あまり触れてほしくなくて、おれは言葉を濁す。
 「アイドルって?」
 タマは無邪気に質問してくるが、その普段とかわらない様子がまた気まずい。
 「え・・・と、かわいい子のことだよ。」
 簡単に説明する。
 タマは、ふーん、と一度ポスターから目をそらし考える。
 自分なりに意味をかみくだいているのだろう。
 すぐに顔を上げたタマが、おれを見た。
 「じゃ、タマもアイドル?」
 期待感いっぱいに訊かれ、否定できない。
 小さな頭に手をのせ、つやつやした黒髪をなでてやる。
 「・・・かもね。かわいいもんね。」
 タマは満足そうに微笑んだ。
 それから、あの後ろめたいポスターの方を向くと、
 「じゃ、タマもあれする。」
 と言った。
 瞬間、タマの姿は残像のように不確かになり、手の感触も消える。
 それもほんの刹那で、すぐにタマをなでていた手は何かに当たって押し返された。
 おれの目の前に、もうあの小さな女の子はいない。
 かわりに立っていたのは、17・8歳くらいの女の子。
 つり上がっているのにくりっと丸い目といい、ふだんから笑みをふくんで見える口元といい、やや丸みをおびた輪郭といい、タマが大きくなった姿に違いなかった。
 それが、ポスターとまるっきり同じ水着で目の前に立っている。
 胸は大きく、腰はくびれ、白い肌は真珠のように奥深い艶をたたえまぶしい。
 中学生には目の毒な光景だった。
 おれは、目をそらした。
 だって、相手はタマなんだ。
 「タマ、・・・化けたの?」
 「ちがーうもーん。
 オトナに、へーんしーん、だもん。」
 タマは女の子向けの変身美少女アニメが大好きで、着替えでもお化粧でも、見た目が変われば彼女にとっては“変身”だった。
 「そう、でも とにかくやめて?」
 なんとか優しい言葉でなだめてみる。
 「なんで?こーゆーのスキなんでしょっ?」
 無邪気に笑いながら飛びついてきた。
 「うわ」
 勢いが強くてよろけた拍子に、タマの体に手がかかる。
 「ぉ・・・っとぉ。」
 片手は背中に回ったが、もう片方の手はお尻を押さえてしまった。
 両手に、素肌の感触。
 どうやらポスターでは見えない水着の後ろ側を想像した結果、ヒモパンの紐部分そのままだと思ったらしく、Tバック状態になっていた。
 「あぁっ、うあ、ごめん!」
 すぐに手を離すが、最早おれは大パニックで何も考えられない。
 ほとんど裸みたいな女の子に抱きつかれて、中学生男子が冷静でいられるだろうか?
 タマはおれの頭の中などわかっていない顔で、
 「なにが?」
 と、首をかしげる。
 「あっ・・・え、とっにかくっ、離れぇっ。・・・元に戻れよ!」
 どう言ったらいいかわからなくて、自分自身にも苛立って、口調が荒くなった。
 タマは眉をひそめる。
 「なーんでー?」
 「・・・ぼくはっ」
 おれは、言葉につまった。
 なんでいけないんだろう。
 どういえばいいんだろう。
 もちろん、妹みたいに思ってるタマにこんなことされても、困ってしまうだけだから。
 だけどこの時のおれは本当に焦っていて、すぐにそれが出てこなかった。
 絶句したままオロオロするだけのおれに、タマはさらに迫ってくる。
 「えっちなこと、しよ。」
 「はァ?!」
 おれは大きな声をあげた。
 バカ言ってんじゃない、という意味合いをこめたつもりだったが、その声は裏返ってしまっていた。
 「だってヨシアキ、えっちなおんなのこがスキなんでしょ?」
 ポスターのことを言っているらしかった。
 「違うっ、違うよタマ、ぼくはそんなの好きじゃないっ。」
 真実とはいいがたい言い訳をして、おれは否定した。
 「ヨシアキは、タマのことスキじゃないの?」
 さらに答えに困る事を口にしながら、不満そうに見つめてくる。
 「す、スキだよ?でもそういう意味じゃ」
 「タマもヨシアキダイスキ!ヨシアキがうれしいことしてあげるー!」
 ぎゅうぎゅう抱きついてくるタマの胸の柔らかさは、おれをダメにしそうだった。
 「・・・。ぼく・・・おれはっ!
 そういうのはあの子みたいなコとしたいんだ!」
 すんでの所で踏みとどまり、おれはポスターを指差した。
 しょーちゃんみたいに男らしくなったつもりで、自分を“おれ”といってみる。
 そうすれば説得できる気がした。
 何を言っているのかわからない。
 タマはそんな表情をして一瞬呆けていた。
 すぐに泣きそうな顔になると、元の小さな女の子に戻り(服も当然ふだん着に戻った)、ポスターに駆け寄った。
 次の瞬間。
 「ヨシアキなんか、ばかー!」
 びりびりびりびりっ。
 ポスターは音を立てて引き裂かれた。
 これが、おれがタマの激しい嫉妬を初めて目にした瞬間となった。
(続)

09月11日
16:12

 中学に入るまでおれは、自分のことを“ぼく”と言っていた。
 「でね、しょーちゃん その時ぼくさぁ・・・」
 他愛ない会話の途中、相手は急におれの話を遮った。
 「なぁヨシアキ、お前いつまで“ぼく”とか言ってんだよ。」
 呆れ顔をしている彼は、おれの幼馴染であり、親友でもある斯波祥利。
 ここは、その しょーちゃんの部屋だ。
 「お前のまわりでほかに“ぼく”とか言ってる奴いるか?」
 言われてみれば、おれ一人だった。
 おれは首を横にふった。
 しょーちゃんは唇の片端を吊り上げてニッと笑うと、
 「だろ?」
 と言った。
 この笑い方は、しょーちゃんの好きなマンガの真似だと、おれは知っていた。
 だから最初はぎこちなかったけど、だんだん慣れてくるとそれはしょーちゃんにとても似合っていた。
 なぜならしょーちゃんは顔が怖い。
 ぶっきらぼうな所もあって、そういうしょーちゃんには、少し悪く見える表情がしっくりきた。
 その、おれには到底マネできない所がカッコよくて、昔からうらやましかった。
 今でもそう思う。
 それを見透かしているのか、しょーちゃんは大人ぶった口調で続ける。
 「お前も もっと男らしくなれよ。
 ただでさえ女みたいに弱っちーんだからよ。」
 自分でも気になってはいた。
 その辺を他人からつつかれるのは、親友でも少しムカッとくる。
 「弱っちくなんかないよ。
 それに女だってキリコちゃんは強いよ?」
 中1の時点では、しょーちゃんよりもお姉さんのキリコさんの方がケンカは強かった。
 6歳年上というのもあるが、女の人なのに容赦なく弟をグーで殴るからだ。
 手も足も出すそのスタイルは、実は今でも変わらない。
 やり返すと怪我をさせかねないというので、男の身であるしょーちゃんは ある程度大人になってからはやられっぱなしだ。
 とにかく、その時は文句なしにキリコさんの方が強かった。
 しょーちゃんはすかさず言い返す。
 「あいつは女じゃねえ。」
 「そんなことないよっ。」
 おれも負けずに言う。
 反撃がくるかと思ったのだが、しょーちゃんはフと何かを思い出した顔で
 「あ、そーじゃねーよ。どーでもいいんだ、そんな事ぁ。」
 と、机の横に積んであるガラクタをあさった。
 当時ひそかにキリコさんに憧れていたおれとしてはどうでもよくなかったが、しょーちゃんが何を思い出したのかも気になったので黙ることにした。
 ガラクタの陰から出てきたのは、丸められたポスターだった。
 しょーちゃんはそれをおれに渡しながら、ニヤニヤとこう言った。
 「これでお前も、本物の男に一歩近づける。」
 「なにこれ。」
 「まあ、見てみろって。」
 愉快そうに笑うしょーちゃんをいぶかしく思いながら、おれはポスターを広げてみた。
 水着のアイドルだった。
 「しょぉちゃんっ、なんこれっ。」
 かなり純情だったおれは、アイドルが水着姿でポーズをとりながらセクシーな表情をしているだけで充分動揺した。
 子供のおれにとってそれは、立派に“えっち”だった。
 しょーちゃんは解っててからかったに違いなかった。
 「見りゃわかんだろ?」
 意地悪そうな顔でニヤついている。
 おれはポスターをつき返す。
 「いらないっ、こんなっのっ。」
 「何だよ、お前 女に興味ないのか?」
 おれは返事に困った。
 興味ないわけないが、それはそれで“ドスケベです”と宣言するのとかわりなく思えたからだ。
 思春期の少年は、デリケートなのだ。
 「それは・・・どうでも、いでしょ?」
 子供のころのおれは本当に女の子みたいなところがあって、時々バカにされていたりもした。
 しょーちゃんは、からかいながらも少しは心配してくれていたのかもしれない。
 根は優しい奴だ。
 ただ意地悪なだけなら、いくら幼馴染でも親友なんかやってられない。
 だけど、やっぱり意地の悪い所はしっかりあるわけで。
 「何だよ、じゃ男がいいのか?」
 中途半端な真顔でこんなことを言う。
 かと言って本気で疑われている可能性もないではなかった。
 おれは、これ以上ないくらいあわてた。
 自分の名誉と親友を、いっぺんに無くすかもしれない。
 まぎれもないピンチだった。
 「そんなわけないじゃん、よ、よこせよっ!」
 おれは、同性愛といわれるより、ちょっとくらいスケベな奴と思われる方がマシに思え、それを選択した。
 さらに念のため、背伸びして荒っぽい言葉を使ってみる。
 ポスターをひったくると、しょーちゃんはまたニヤニヤ笑いに戻った。
 「貼れよ?男なら。」
 「やっ、だって、おかあさんに見られたら」
 いやらしい子だと思われる。
 親からの目は、また別の話だ。
 大人になってから考えれば、水着のポスターくらい可愛いもんだと思うが、その時のおれにとってはすごく恥ずかしかった。
 言い訳を、しょーちゃんが遮る。
 「そーやって母親をいちいち気にすんのもガキなんだよな、お前。」
 冷めた視線が痛い。
 「・・・わかったよ。貼ればいいんでしょ?」
 不服ながらも、しょーちゃんにバカにされたくなくて、おれは従うことにした。
 「確かめにいくから、絶対貼っとけよな。」
 そう言って、しょーちゃんはひときわ楽しそうに笑った。
 「わかったって、もー別の話しよ。
 あ、そうださっきの・・・」
 だけど、ちょっとえっちなポスターを見られていけないのは、母親だけではなかった。

(続)

07月17日
15:40

 半分コ、とはいったものの、いつもタマはヨシアキのオヤツを半分以上平らげてしまう。
 さっさと自分のを食べ終えて、こっちが食べている所をじっと見ているタマに、どうしてもヨシアキが勝てないからだ。
 「もうちょっと、食べる?」
 半分コしたハズのロールケーキ。
 ヨシアキは自分のぶんから一口フォークでとりわけて、差し出す。
 「うん。」
 嬉しそうに答え、あーん、と口をあけるタマ。
 食べさせてやって、頭をよしよしする。
 そうすると、タマはとても幸せそうな顔をした。
 それが、ヨシアキにも嬉しかった。
 ただし、学校から帰ればタイクツだったとまとわりつき、
 遊びに行くといえば自分も行くと言って聞かず、
 うるさいタマがいるので勉強はとても自分の部屋ではできず、
 ついでに夜の方が元気らしく、なかなか寝かせてもらえない。
 可愛い時ばかりではなかったが、それでもヨシアキはよく相手をしたし、結局タマが嬉しそうにしていればそれで満足なのだった。
 
 ヨシアキとショウリは、コンビニエンスストアにいた。
 「ヨシアキ、お前ツナ缶なんか買って食うのかよ?」
 遊んでいるうちに少し空腹を感じ、何か買おうということになったのだった。
 「あ、これはオミヤゲ。ぼくは“うますぎる棒”にする。」
 ヨシアキは笑って言った。
 ショウリはますます疑問を感じる。
 「オミヤゲ?ツナがか?」
 「うん、タマがスキなんだよ。」
 決して多くないおこづかいからタマの好物を買ってやると、ヨシアキは1個20円のスナック菓子しか買えなかった。
 それでもタマの好きなツナを買って帰ってやりたかった。
 ショウリは少し不機嫌そうに
 「お前、タマになんか術でもかけられてんじゃないか?」
 と言って、じっとヨシアキの目をのぞいた。
 ショウリの目はつり上がっていて、笑っていないときは怒っているとしか思えなかったし、どうも酷薄に見えた。
 しかし、実際のショウリは多少乱暴で意地悪な所もあるが、基本ヨシアキには優しかった。
 キツいその目は斯波家独特の遺伝らしいが、それでも少しだけ、ヨシアキは緊張した。
 「そんなこと・・・ないでしょ?」
 「ん・・・たぶんな。平気そうだ。」
 何を見ていたのかはわからないが、一応なんともないと言われてヨシアキは胸をなでおろす。
 「じゃ行こうよ。」
 「おー。」
 二人はそれぞれ目的のものを買うと、コンビニを後にした。

 次の日、教室でヨシアキが友達と話していると、ショウリが割り込んできた。
 「ヨシアキヨシアキー、いいこと教えてやるよ、ちょっとこーい。」
 「え、ぼくタカヤくんたちと、あっ、あー・・・」
 まだ話していたのに、ヨシアキは強引に友達の輪から引っ張り出される。
 廊下に出ると、ショウリは声をひそめた。
 「タマの話だよ、あすこじゃできないだろ?」
 「え、タマ・・・?」
 ヨシアキが興味をしめすと、いたずらっ子の顔でショウリは笑う。
 「そーだよ、タマの一番好きなもん。
 ばぁちゃんが教えてくれたんだ。」
 「え、なになにー?教えてっ。」
 「今日帰ったら教えてやるよ、一緒に買いに行こうぜっ。」
 ヨシアキは喜んでうなずいた。

 翌朝、ショウリはさっそくタマの様子を聞きに来た。
 ヨシアキはあまり元気がない。
 「おい、タマ喜んだか?」
 ショウリが話しかけるとヨシアキは肩を落とした。
 「それがさあ」
 「ん?」
 「“ヨシアキ、これゾウキンだよー。”だって。」
 ショウリは目をむいた。
 「えぇーっ?!・・・だって、キツネだろ?
 キツネはアブラゲ、ってばぁちゃんが・・・」
 慌てて、言い訳のように昨日もした説明を繰り返す。
 キツネといえば昔から油揚げときまっていて、ばあちゃんの言うことに間違いはないのだ、と。
 ヨシアキも彼を責めているわけではないので、口ごもりながら昨晩のやりとりを話して聞かせた。
 「ぼくも、そう思ったからとにかく食べてって言ったんだ。
 そしたら、一口かじって、“あじ、ないー”って。」
 ショウリは少し難しい顔になって
 「そうか、そりゃ・・・そうだよな。
 オレらだってあれそのまま食わねーもんな。」
 といい、考え込んだ。
 「アブラゲ、でしょ?おミソ汁、とか入ってるよね?」
 ヨシアキもおいしい油揚げの食べ方を考える。
 「んー、でも、みそ汁が好物ってどうなんだ?
 あとは、うどんとか入ってるけど・・・なんか地味だよな。」
 「そうだよねえ・・・。」
 子供二人でうんうん考えても、他に思いつかない。
 「やっぱ、もっかいばぁちゃんにきくか。他にないか。」
 「そうだねー、ぼくも行っていい?」
 「おー。」
(続)

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